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3.「ビッチョビチョ」

「ビッチョビチョだった。」

毎日がビッチョビチョだった。
スクワットを1日10回ずつ増やしていくと、気づけば足下が水溜まり。
市民体育館のトレーニングルーム内で黙々とスクワットをしている絵はあまりにシュール過ぎる、且つ絵的にも変わらない。
テレビ的には一番困る。
絶対情熱大陸は来てくれない。

なので、体育館内の人目につかない一角でひたすらやっていた。
漫画ならそろそろ「私スクワットする男性大好き♥️」というヒロインが現れて急展開に発展だが、「今何回やってんだ!」とおじさんに話し掛けられる。
「600回です!」
「そうか!」
と言い残し去っていく。

・・・

いや、ないんかい!その先のプランは!
言葉のキャッチボールになっていない。
野球部に入った初日に、「俺実はサッカー部に入りたかったんだ」と言って去っていった過去があるに違いない。

だが、男には地味な事をやり続ける精神力が必要だ。
スクワットはやり始めがしんどいが、100回を超えた辺りからあまりしんどくなくなってきて、当たり前のように淡々と続けていられる。

つまり、これが

ビッチョビチョだ。
あわよくば貯まった水溜まりで発電が出来るんじゃないかとも思う。
そう、これが念の為もう一度言うが、

「ビッチョビチョだ。」

帰ったら飯を食って、プロテイン、プロレス中継を見る毎日。
中継を毎日楽しみにし、何気無く見ていたがふと思った。

漠然とプロレスラーを志していたが、自分は実はプロレスラーという物を根本的には知らない。
プロレスラーを試合で見て、どんな選手で、身長、体重、簡単な経歴も大体熟知していた。

どんな練習してて、どうやってなったの?

つまり、ゴールまでの道程は見えてるのか?
実は見切り発車で逆走してるんじゃないか?

そもそも誰の教えも受けた訳ではなく、独学でやって来た。
仮にもし、いつものジムにたまたまレスラーが巡業で来て出くわして、なんていう妄想も膨らましたりしたが、そこで一つ閃いた事があった。


・・・


「なら会いに行こう!」

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