見出し画像

おじさんが嫌われる理由

主語を大きくしてはいけない。
ネットでそう教わった。
「私はおじさんだけど好かれています」とか「あなたがおじさんを嫌いなだけ」とか「周囲にレベルの低いおじさんしかいないんですね、かわいそう」とか、たくさんクソリプが飛んでくる。

主語を大きくしても話が通じるのは、狭いサークルのなかだけである。
あなたが同僚とランチに出かけて、「おじさんってなんで◯◯なんだろう」とぼそっとこぼせば、同僚はすぐさま上司のAさんとBさんの顔を思い浮かべて「わかるー」と言ってくれる。
間違ってもネットで言ってはいけない。

本当に、おじさんは嫌われているのだろうか。
ここで必要なのは大規模調査と統計学だ。
おじさんとおばさん、おじさんと若年男性の比較対照試験をおこない、そのデータを統計学的手法であーだこーだすれば結論は出る。
面倒だからここではやらない。
ばかばかしいから誰もやらないことを真面目にやればウケるかもしれないが、やらない。
代わりにやるのは、良くいえば安楽椅子探偵、悪く言えばコタツ記事だ。

まず、半径5メートルの5人に「おじさんは嫌いですか」と聞いてみた。
5人とも回答は「別に」だった。
よかった。おじさんが嫌われてるなんて都市伝説だったんだ。
終了。


いやいや。
質問が悪かった。
誰だって悪者にはなりたくないのだ。
聞き方を変えてみよう。
「おじさんは嫌われていると思いますか?」
「おじさんの中に自分がルールだって感じで人の話を聞かない人が多くて、全体のイメージを悪くしていると思う」
一般的な答えが来た。

なぜ、一部のおじさんは威張るのか。
たぶん、会社とか家庭とかで権力を持っているからだ。
形式上みんなに立てられているから、いつのまにか偉そうな態度が身についてしまう。
たぶん本人は気がついていない。みんなに気を遣っているつもりでいる。
それなら、嫌われているのは「おじさん」ではなく「権力者」である。
「おばさん」だって、政治家とか社長になると相当アレなのではないか。
どうだろう。

いま、さりげなく「おじさん」を擁護した。
すまない。
自分が「おじさん」なので擁護したいのだ。
実際「おじさん」はたいへんなのだ。
若い頃より頭も体も疲れやすいし。

そんなこんなで、なんとなく「おじさん」は嫌われていると思い込んでいるので、普段は「おじさんですみませんねえ」という感覚で生きている。
こないだも仕事で「おじさんの意見を言わせてもらえれば」と控えめに発言したところ「ええとさんは、おじさんじゃないですよ」と真顔で言われた。
ちょっと待て。
「おじさん」の定義を聞かせろ。
もしかして「おじさん」とはただの「中高年男性」ではなく、「(発話者にとって)ネガティブな要素を持つ中高年男性」のことではないのか。
最初から「嫌い」の要素を含んでいるのなら、「おじさん」が嫌われるのは当然ではないか。

そういえば以前から気になっていたことがある。
中年男性が「おじさんはしょうがないなあ」的な言い方でおじさん批判をする場面をしばしば見るのだ。
彼らはたぶんまだ自分は「おじさん」ではないと思っている。
いったい「おじさん」とは?

暫定的な結論。
「おじさん」が嫌われているのではなく、嫌われている男性が「おじさん」だった。
年齢は関係なかった。
キムタクのファンは50代のキムタクを「おじさん」と思ってないし、高見沢俊彦のファンは、70歳の彼を「おじさん」と思ってなさそう。

人は年をとるだけでは「おじさん」にならない。
自分とは無関係な人と突き放されたときに「おじさん」になるのだ。


もしこの記事が面白いと思っていただけて余裕があればサポートをお願いします!いただいたサポートは活動費として使い、何に使ったかの報告をします。