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『かいスペマガジン EDGE』爆誕???(かいスペイベントレポート:「カイゴのシャベルをもっと掘る会」 )

「かいスペ」メンバーの運営するWebマガジンには名前がない.
——いや『かいスペマガジン』というのが一応の正式名称だ.

もちろん,もっと名前っぽい名前をマガジンに付けようという話はあって(と言っても,これはわたしが勝手に提案しただけなのだけど),KAIGO LEADERSのオンライン・コミュニティの名前が "SPACE" で,英単語1字だから,例えば "VISION".広い意味での介護にたずさわるひとびとの,①働く上での,②働きはじめた頃の,③働く内に忘れてしまった「想い」を届けるエモマガジンという意味だ.

そのほかにも, "STUDY" というシンプルなものもあったし,日本語でいうところの「ラボ」,laboratory と同じ語源(" laborare")から派生した語が collaboration だと知って,"COLABO" というのも考えた.でもこの名前は検索してみるとヒクほど使われていたのですぐに撤回した.

そんな数あるボツ名のなかでも,わたしがもっとも気に入っているのが "EDGE"(エッジ) で.今回は,このマガジン名(仮)が生まれるきっかけになった,のざわさん主催のイベント「カイゴのシャベルをもっと掘る会」のレポートに代えて,『かいスペマガジン EDGE』爆誕!——だったかもしれない世界線のあらましについて書いていこう.

この「カイゴのシャベルをもっと掘る会」が行われたのは,とはいえもうずいぶん前で,今年の4月15日のことである.会の主旨としては,KAIGO LEADERSが作成したコミュニケーションカード「カイゴのシャベル」にかんする意見交換会のようなもので,まさに「カイゴ」にかんして「喋る」,「深掘りする」絶好の機会となった(※「カイゴのシャベル」の実際の使用場面については,文京区の介護職員が発行するフリーペーパー『介護坂』をご覧ください).

そこでわたしたちはこのカードをもとにして,のざわさんから次のようなことを聞かれた.

あなたにとって介護ってどんな仕事ですか?(注:意訳です)

まあ,あるあると言えばあるあるの,よくある質問だ.しかしそれに対するひとりの参加者,ぶんちゃんの答えがあるあるではなかった.

彼曰く,

介護は最先端の仕事——だというのだ.

もっともこの男,ぶんちゃんの語感はすこし変わっていて.ここで言うところの「最先端」とはあくまでも彼にとっての個人的なそれ,つまり,いまの彼があるのは介護という仕事に出会ったことのおかげ,という意味での「最先端」というニュアンスだ(ったように思う).とはいえ彼のこのすこし変わった言語感覚(いい意味でね!)がわたしのなかの介護観を深掘るまたとないきっかけとなったのである.

ちなみにわたしが介護業界を選んだのは,この業界がフロンティアだから.介護はいずれ世界中の国々が,とりわけ先進諸国が抱えることになる喫緊の課題で,幸いにも(と個人的には言いたいところだけど)日本がたまたまその先頭にいて,いわゆる「課題先進国」の立場に置かれているから,という意識高い系の介護関心者にはありがちな理由のためである(ほかにもあるけどね!).介護はまさに「最先端」なのだ.

とはいえ,この場合の「介護は最先端」という言説は,あくまでも業界単位での話であって,介護という仕事自体を指すわけではおそらくない.介護の仕事と言うとむしろ,バブル時代の「三高」(高学歴・高収入・高身長)を文字った「3K」(きつい・汚い・危険)の風評が揶揄するように,「末端」のイメージのほうが一般的なのではなかろうか.介護職員が対象とするのはしかも,生まれたばかりの子供たち,ではなく,どちらかというと,終末期のお年寄りたちなのである.介護の仕事とは社会の末端にいるひとびとが人生の末端にあるひとびとをお世話する仕事.こう捉えてもおかしくはないはず.

ところが「介護は最先端の仕事」——そう,ぶんちゃんはモニターの向こうで胸をはって宣言していた.これがわたしのなかの介護の仕事一般理解解釈に化学変化をもたらした.そうか.末端であることは先端でもあるのかと.介護の仕事は,人生の末端,つまり終わりに向かっていくひとのお世話であると一般に解釈する必要はかならずしもなくて,そのひとの人生の先端,いや最先端を,未来を作っていく,フロンティアに関わる仕事ですでに十分にあり得たのだと.そしてこの最先端は,そのためのケアが自立支援の性格を帯びていればいるほど,ひとの数だけフロンティアの広がりを社会にもたらし得る.まさに福祉とは,高齢者であっても,障害者であっても,はたまたさまざまな当事者であってもちがいなく,複数(  "ふく" すう)の仕合( "し" あ)わせの先端をかたちづくれる領野なのである.

『かいスペマガジン EDGE』という名前がわたしのなかに爆誕した瞬間であった.

もっともこの名前は後日——,
「EDGE(エッジ)ってなんか "鋭い" って意味だから合わないよね」という何の変哲もない理由でボツになった.

だがそれもまたかいスペらしい.



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