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大阪の富裕層はなぜ、札幌のタワマンを買うのか?【第2回】

 前回、大阪の富裕層はなぜ、札幌のタワマンを買うのか?について特集したが、その答えは、都市部のタワマン高騰を背景に、割安な地方都市に目が向いていることだった。中でも札幌は、北海道新幹線の開業を控え、資産価値のさらなる上昇が見込めるメリットがある。加えて、北海道に拠点を持ち観光や食を楽しみたいという声も多かった。今回は住の観点からの魅力に迫りたい。

カナダ、中国、そして札幌 世界三大雪まつり

 札幌の有名なイベントといえば、ご存じ〝雪まつり〟だろう。今や国内外から約250万人を集める世界的な催しで、カナダ「ケベック・ウィンター・カーニバル」、中国「ハルビン氷祭り」と並び世界三大雪まつりに数えられている。
 祭り自体はコロナ禍の影響で、ここ2年はオンライン開催だったが、今年は3年ぶりに会場を設け、テレビ塔で有名な大通公園から、繁華街「すすきの」にかけて、迫力ある雪や氷の像を鑑賞できる。
 主な雪像では、約7200万年前の北海道に生存したとされる「ティラノサウルス」や、国内の98%を北海道で生産している競馬でおなじみの「サラブレッド」など。極めつけは、陸上自衛隊が制作した二つの巨大雪像で、一つはナイチンゲールの偉業をしのぶ英国のエンブリー荘だ。コロナ禍に立ち向かう医療従事者に感謝を込めた。もう一つは開拓使が1880年建てた洋造ホテル「豊平館」。雪で作った細かいパーツを貼り付けるアイスブロック工法で、精細な箇所まで忠実に再現されている。
 10年ほど前からは、大雪像に映像を投影する「プロジェクションマッピング」も行われており、この時期の札幌市街地は幻想的な雰囲気に染まる。

過去のさっぽろ雪まつりの巨大雪像

新鮮な魚介、味の濃い野菜 おいしい食の宝庫

 現在、札幌駅近くで建設が進むタワーマンション「ONE札幌ステーションタワー」は、約4割が道外の購入者だ。移住やセカンドハウス利用が目的というが、遠い北の大地にどんな魅力を感じたのだろうか。
 まず、北海道と言えば、〝おいしい食べ物〟を連想する読者も多いだろう。
 プリップリのエビに、器からあふれんばかりにたっぷりのったイクラとウニ。同じ食材でそろえれば、大阪は2倍近くの値段がつきそうな海鮮丼が思いつく。
 魚介グルメで言えば、回転寿司もおもしろい。札幌を含む北海道はとにかくネタが大きい。カウンターの寿司屋で出てくるような寿司を味わえるのに、比較的手ごろなのにも驚く。
 後は〝道産子〟の郷土料理「ジンギスカン」も有名だ。丸い専用鍋の山の部分で羊肉を焼き、周りの溝に野菜を敷きつめ、蒸し焼きにする。肉汁やタレが山から流れ落ちて溝にたまり、そのエキスが野菜に浸みこみ一層おいしくなる。市内の大通りやすすきのには専門店がたくさんあるので、日常的に楽しめる。
 羊肉には、体脂肪を燃焼させるカルニチンが豚肉の約8倍、牛肉の約2倍含まれ、しかも低カロリー。ダイエットや生活習慣予防に道外でも人気だ。
 大阪から単身赴任で札幌に来た会社員男性(42)も北海道グルメのとりこになった一人。「驚いたのは、どの飲食店もハズレがないこと。特に野菜がおいしい。アスパラは見たことがないほど大きく、ドレッシングをかけなくても甘みがしっかりしていて味が濃い。都会でも北海道産の食材は味わえるが、現地の物は味が全然違う印象」と絶賛する。

小樽の海鮮丼。有名な小樽運河など歴史のある港町は、寿司の町でも有名

日ハム新球場「エスコンフィールド」
レジャー、温泉そろう巨大施設

 札幌は現在、至る所で再開発の槌音が響いている。1972年の冬季五輪の前後に整備されたビルが多く、建て替え時期を迎えているためだ。
 加えて、2030年度末に北海道新幹線が札幌まで延びれば、人の動きや物流が大きく変化する。それを見越してマリオットやハイアットといった外資系五つ星ホテルが相次いで進出を決めた。
 大阪駅北のうめきた再開発と同じように、札幌の駅北「さつきた8・1」でも再開発が行われ、道内最高層となる高さ175㍍のタワーマンションの建設が進む。
 周辺都市にも波及が見られ、最近の注目は3月に開業する北海道ボールパークFビレッジだろう。大阪府民にもなじみのある新庄剛志監督率いるプロ野球、北海道日本ハムファイターズの新たな本拠地がここだ。
 現地は札幌市から22km南東の北広島市。広大な敷地に、最新テクノロジーを駆使した日ハムの新球場となる「エスコンフィールド北海道」を中心に、ホテルやグランピングなどの宿泊機能やレストラン、温泉、レジャーなどをそろえた巨大な複合施設が誕生する。
 球場の形は国内では珍しい左右非対称で、開閉式の屋根がついた天然芝球場としては日本初。フィールドに光を届けるガラス壁や世界最大級の大型ビジョン(縦16㍍、横86㍍)が搭載された。客室からフィールドを一望できる球場内ホテルや、温泉のサウナから野球観戦を楽しめるなど国内初、世界初のユニークな仕掛けが施されている。

開閉式の屋根やガラス壁が特徴のエスコンフィールド北海道  ⒸH.N.F.

北海道新幹線が開業すれば
有名観光地が日帰り圏内に

 北海道は全国有数の温泉地でもある。登別湯の川十勝川層雲峡阿寒湖ウトロなど読者もいくつかは聞き覚えがあるだろう。
 札幌付近にも年間240万人が訪れる温泉郷がある。にぎやかな市街地から南へ約26km。支笏洞爺国立公園にある定山渓温泉だ。開湯は1866(慶応2)年と古く、切り立った渓谷に座した景勝地でもある。
 北海道を代表する伝統的な港町・小樽も札幌から近い。かつてニシン漁で栄えた商都は現在、運河や石造倉庫などのレトロな街並みや、明治期の石油ランプ製造から続く繊細で華麗なガラス工芸などの観光地として名高い。100以上の店が軒を連ねる寿司の街でもある。
 北海道新幹線が開通すれば小樽に留まらず、札幌からの行動範囲は飛躍的に広がる。JR北海道グループの長期経営ビジョンによると、新幹線は札幌─新函館北斗を1時間で結ぶ計画で、現在の3時間20分(特急)から大幅に縮まる。戦乱の幕末を見つめた「五稜郭」や、函館山の山頂から見下ろす「100万ドルの夜景」なども日帰りで観光できるようになる。

函館山から望む100万ドルの夜景

新聞に掲載したオリジナル記事
https://weekly-osakanichi2.net/?p=465

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