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住宅ローン金利は上がる? 変動で借りている人が焦らず、知っておくべきこと

「住宅ローンの金利が上がると、毎月の返済が大変になる!」

「すぐに借り換えた方がいいのかな?」

 金利が上昇するかもしれないニュースを見て、不安に思った家庭も多いはず。果たして金利は上がるのか? 上がったらどう対処するべきなのか? 新聞記者のネットワークを使い、取材してまとめました。

今のうちに借り換えをするべき?

 日本で今、金利上昇が話題になっている理由は、欧米ではすでに金利が上がっていて、日本も同じ道をたどるかもしれないからです。
 欧米ではインフレを抑えるために、中央銀行が「利上げ」に踏み切った結果、住宅ローン金利が急上昇しています。

 対する日本は「利上げ」こそしていませんが、欧米と同じくインフレの状況下にあるので、「いずれ日本銀行は利上げをするだろう」といった観測が広まり、住宅ローン金利への影響が話題になっているのです。

 実は日本も足元で固定金利が上昇しています。その一方で、変動金利にはまだ動きがありません。ちなみに住宅ローンの固定と変動の割合を見ると、74%の世帯が変動金利を選択しています。

 このため、「今のうちに変動から固定に切り替えた方がいいのでは?」と焦りを感じている世帯も。ですが、まずは落ち着いて。本当に今、借り換えをするべきなのかどうなのかを正しく理解して、見極めてみましょう。

 まずは金融リテラシーを高めることです。そうすれば、必要以上の焦りや心配もやわらぎます。正しいタイミングで正しい選択ができるようになるには、最初にインフレと金利の関係を知っておきましょう。

なぜ、住宅ローン金利が上がるの?

 突然ですが質問です。インフレとは何でしょうか?

 「そんなの、モノの値段が上がることでしょ?」

 実はその答えでは不十分。正しくは「モノの価値よりお金の価値が下がっている状態のこと」です。逆に「お金の価値よりモノの価値が上がっている状態のこと」とも言い換えられます。

 政策一つで金利に影響を与えることのできる中央銀行(日本では日本銀行)は、まさにこの視点からインフレ退治を行います。インフレを抑える方法は具体的には「金融引き締め」と呼ばれ、やることは大きく分けて2つあります。

 先ほどインフレは「モノの価値よりお金の価値が下がっている現象」と言いました。それなら「お金の価値を上げる」とインフレは抑えられます。

 つまり、インフレ退治の1つ目のやり方は、増え過ぎたお金を減らすことです。

 アベノミクスでは、政府が発行する国債を中央銀行に買ってもらい、中央銀行は国債を買う代金としてお金を刷ってきました。これにより、世の中に出回るお金の量を増やしてきたのです。
 一方、お金の量を減らすには、その逆をすればよいのです。
 中央銀行が国債を売ったり、買わなかったりすればいいのです。国債を売れば、中央銀行にお金が戻って来て、結果的に世の中のお金を減らすことができます。
 また、中央銀行が国債を買うスピードをゆるめれば、どんどん生産されるモノの量より、お金の増え方が遅くなるので当然、お金の価値が上がり、モノの値段が下がります。
 2つ目は「利上げ」です。利上げとは金利を上げることで、金利が上がれば借金の返済額が増えるので、みんながお金を借りなくなります。つまり、借金してまでお金を使わなくなるので、消費が抑えられたり、企業の設備投資も抑えられるということです。さらに消費が落ち着くと、モノが売れにくくなるので価格が下がります。

 欧米の中央銀行は今、インフレを退治するためにこの2つに取り組んでいますが、当然副作用もあります。金利を上げるわけですから当然、住宅ローンの金利も上昇します。

 実際に、米国では2021年初に3%台だった30年物の固定金利が、現在は7%近くにまで上昇しており、庶民の住宅購入が難しくなっています。

日本は逆の金融政策

 欧米の中央銀行が金融引き締めで歩調を合わせている一方、世界の動きと逆行しているのが日本です。お金の量を減らす「金融引き締め」ではなく、お金の量を増やす「金融緩和」を続けています。

 日本は長くモノの値段が上がらないデフレ状態が続きました。デフレを脱却するために日銀の黒田東彦総裁は国債を買いまくってお金を増やしているのです。

 ドル円相場もドルと円の量のバランスで決まるから、量の多い日本円の価値は下がり、少ない米ドルの価値が上がっています。今の円安の主因がここです。

 ただ、アベノミクスの金融緩和を継承してきた黒田東彦総裁は今春で退任します。新しく就任する植田和夫総裁は現在のところ、金融緩和を続ける素振りを見せています。

 しかし、植田総裁がどう考えようとも日銀は実質的に日本政府の子会社なので、金融引き締めの気配にある親会社の岸田政権の方針に従うしかありません。
 そうなれば日本も米国のように利上げをして、住宅ローン金利は上がっていきます。

 どちらに転ぶかわからない状況に、国民の多くは今は静観して住宅を買い待ちしているようです。

今のうちに借り換え?

 先のことはわかりませんが、仮に金利上昇に向かうなら、住宅ローンを返済している家庭にとっては頭の痛い話です。

 固定金利なら金利の動きを心配しなくて済みますが、74%の家庭は金利の動き次第で月々の返済額が変わる変動金利で借りています。今のうちに借り換えをするべきなのでしょうか?

 大阪のタワマン市況に詳しいE&S Companyの芝崎健一COO(最高執行責任者)は「借り換えのメリットを出すには金利1%くらいの動きが目安」とアドバイスしています。
 理由はもし借り換えをする場合、手数料が残りのローン支払額の2%ほどかかるからです。「ただ、2005年あたりにローンを組んだ人にとっては借り換えの効果があります」とも説明しています。

 現在、店頭に表示された変動金利は2.475%で20年以上ほとんど変わっていません。しかし、05年から優遇金利の幅が少しずつ大きくなり、今は2%程度割り引いてくれる金融機関がほとんどです。

 変動金利から割引をした実際の適用金利で、一番お得な利率を見るとは2022年9月現在で0.289%と極めて低いです。

 下表は、今がどれだけ得かを05年などと比べたものですが、金利が1%異なるだけで、支払額に大きく差が出ることがわかります。

 こう考えると、仮に金利が上がっても、過去と比べれば今はかなり安いし、全期間固定金利でも最安は0.9%で1%を切る銀行もあります。

 大阪都心部のタワーマンションに限れば、12年のアベノミクス以降に年平均7〜8%も上昇しており、資産価値が大きくアップしています。つまり、金利上昇よりも高い上昇率で資産価格が膨らんでいる現実もあるのです。

 欧米もインフレ退治が終われば、成長企業の株価を上げるため、利下げに舵を切るのが自然な流れですから、固定金利で借り換えてしまい、逆に損をしかねない可能性もあります。

 以上を踏まえて、さまざまな視点から冷静に対処してはいかがでしょうか。

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