覚悟の中で見られた希望 -THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE YOKOHAMA SPECIAL-

2020年に大きな会場で大人数で生の音を聴くことができるとは思わなかった。

THE YELLOW MONKEY 横浜アリーナ公演。

これまでにライブに行って感動することは何度もあったが、
ライブに行くまでに、ライブが開催されることに感動したのは今回が初めてだった。

公演に参加するにあたって、様々な注意事項があった。
・COCOAを2週間前から入れること
・濃厚接触通知が1つでもついていたら入場できないこと
・電子チケットで住所などの情報を登録すること
・入場時の消毒・検温・マスク着用
・分散入場と分散退場
・座席は前後左右を1席ずつ開けること
そして会場内では大声を出さないこと。

どう考えても普通のライブではない。
超厳戒態勢のライブ。
それでも、最大限の対策をしてでも、観客を入れて開催することに意義があった。

横浜アリーナはバンドにとって”聖地”と言える会場の一つである。
バンドが大きくなると共に横アリでの公演も増えた。
バンドの歴史に大きく刻まれているパンチドランカーツアー113本を締めくくったのも横アリの4日間だった。

そんな強いつながりのある会場に入り、オープニングSEが流れている。
開演間近になり、ローディーさんたちが楽器の最終チェックをしている。
今まで当たり前のように感じていたさまざまな光景に懐かしさを覚えつつ、感覚を取り戻している自分がいた。そして、日常が少しずつ戻ってきていることに涙が出た。

定刻。ロッキーのテーマと共に4人がステージに上がり、奏でた1曲目はパンチドランカーだった。

4人が目の前にいて爆音を奏でている。
久しぶりの生音に体がびっくりしている。でも自然に体は動いている。
先日の東京ドームとは異なり、4人がリラックスしているように見える。
妖艶さと渋さ、そして若さを増していて、パワーが溢れている。
バンドが横アリと共に成長していったあのころを思い出させるようなセットリスト。
まさに”神セトリ”だった。

最新アルバムの曲を1曲しかやらなかったことからも今回のライブへの意気込みや意味が伝わった。

今までメンバーを呼ぶ声が聞こえていた時間、拍手が鳴り響く。
腕をとにかく大きく振る。
どんなMCにも拍手で応える。そして「なんの拍手?」とツッコまれる。
”声が出せない”という制約を全員でなかったことにするような空間。
事前に集めた声を曲に合わせて再生して会場にファンの歌声が響く。

ライブの最後を飾ったのは、これもまたパンチドランカーツアーの最終日と同じ、SO YOUNGだった。

「終わりのない青春 それを選んで 絶望の波にのまれても ひたすら泳いでたどりつけば また何か覚えるだろう」

この歌詞がひどく心に刺さった。

ライブができないという絶望の波にのまれても、メンバー、スタッフ、そのほか多くの人と共に再開に向けてひたすら泳いだ先で「新たなライブの形」を覚えた。
"いつもと違うからこそできる いつもみたいな公演"
そんな新しい世界を見ることができた。

個人的にコロナに翻弄されながら、生活や環境が大きく変わり、つらいこともあった。
そんなとき、共感したり、背中を押されたり、あらゆる面で支えられたたくさんの曲が自分の目の前で演奏された。
見て見たかった演出が目の前で繰り広げられた。

この公演が開催されるまでにメンバー、スタッフ、関係者、多くの方々がたくさんの苦労と工夫を重ねてきただろう。
会場のいたるところに間隔を空けるためにテープが張られ、アナウンスを繰り返していた。
「本コンサートで感染者を出さぬよう、最大限の対策を心掛けております。」

サイトに書かれたこの言葉の重さを実感した。

「人が集まって生のロックンロールをやるっていうのは、自分たちにとっては絶やしてはいけないことで。批判もあるとは思うんですけど、エンターテイメントの火を消してはいけないということで、やらせてもらっています」

吉井さんがMCで放った言葉。
批判もあるだろうし、苦難もあっただろう。それでも彼らがリリースだけでなくライブを通じて歴史を築いてきたからこそ、今、覚悟を背負ってでも大きな会場で一歩を踏み出したのだろう。

それがひしひしと伝わったからこそ、ファンもその想いに応える行動をしていた。
だれも声を出さない。規制入退場に従う。そして手を真会場の無音を埋める。

バンドとファンがこんなにも一体となって成功に導くライブを私は見たことがなかった。

正直、ライブに行ったことが正しかったのかどうかはもう少し日が経たないとわからない。
でも現時点では後悔はないし、行ってよかったと心の底から思っている。

スタッフの皆さん、そしてTHE YELLOW MONKEYの4人、キーボードの鶴ちゃん、そのほか多くの皆さん、一緒に会場にいたファンの皆さん、配信を見ていた皆さん、素敵な時間を空間をありがとうございました。

残り2公演、何事もなく成功しますように。

そして改めて、30周年おめでとう。ありがとう。

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