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わざわい【1分で読める】#シロクマ文芸部

 月の耳神社の祟りを恐れた村人達は、山のような農作物と村一番の美しい娘を貢物とした。

 村のはずれにある湖が干上がると、湖底に人間の耳に似た形状の岩が現れた。その様子はまるで月に耳が生え、何かをじっと聞いてるかのように不気味であった。「月の耳」が現れると決まって災いがあると信じられていた。
 
 神武天皇の時代だったかその前だったかに、その岩を模したものを本尊として祀ると、湖が干上がっても災いは起こらなかった。それが「月の耳神社」のはじまりである。それ以来、湖が干上がると人々は月の耳様を鎮めるために貢物をしてきた。

 昨日、十数年ぶりに月の耳が現れた。村長と村人達は役人を囲んで談合し、すぐに貢物をした。娘もなんとか説得した。

 翌日。すべての貢物が消えていた。村人達は安心した。

 実は「月の耳」に関する全てが先祖代々受け継がれてきた村人達の自作自演である。

 何年かに一度、権力を笠に着た役人が現れる。それらから農作物や娘達を守る手段が「月の耳」神社であった。

 娘は恋仲になった村の男と遠くの村で幸せに暮らしている。

今回も参加させて頂きました。
ありがとごじゃいます。

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