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自分の理由を忘れないように

TBSラジオを聞いていた。好きな番組の一つの「生活は踊る」では、相談コーナーがある。今日の相談は、子どもを持つ女性からの相談だった。
上司から昇進の打診があったが、育児をしながら時短で働いていることもあり、昇進してマネジメント職をこなせる自信がない。でも本当は仕事も頑張りたい。そんな相談者さんの言葉に、答えるジェーン・スーさんと、小倉弘子さん。
「今の状況を夫に伝えてみてはどうか」「自分の気持ちや状況を知ってもらうことが大事」「行政のサービスなどを活用するものあり」「子どもと離れる時間が増えることは不安かもしれないけど、取り返すことはできる」
相談者さんへ伝えられる、たくさんの優しい言葉に、私も涙が出そうになった。
私は結婚もしていないし、子どももいない。なのにこんなに涙が出そうになったのは、なぜだろうか。

今日の相談コーナーを聞いて思い出したのは、前職で一緒に働いていた、時短勤務の女性だった。前職は、時短勤務で職場に復帰をする方が複数人いた。部署によって忙しさはそれぞれで、ほぼ毎日定時で帰る人もいれば、毎日のように延長保育をお願いしている人もいた。遠目にそんな様子を見ていて、育児と仕事の両立って大変なんだなあ、と思っていた。それと同時に、なんで時短勤務の人が、あんなに苦労しなきゃいけないんだ、会社はどうにかしてくれないのか、とも思っていた。
人事異動の季節になり、私の所属していた部署に、時短勤務の方が一人配属されることになった。その人が以前いた部署は、比較的仕事の波も少なく、ほぼ毎日定時で上がれる部署だった。私の部署は、研修を行う部署で、年間スケジュールが決まっていて、穴は空けられない、仕事に波はあるし、どちらかと言えば突発休みがとりにくい部署だった。業務内容の説明を受けた後に、子どもの予定と研修がかぶらないかが不安だ、と言っていた。

同じ部署で働き始めて、その人は定時で帰ったり、残業したりとまちまちだった。上司は定時になると、「早く帰っていいよ!」とその人に声をかけていた。私も「代わりにできることはやります!」と言っていた。多分簡単なことはやっていたような気もする。
お昼休みにご飯を食べながら作業をしているのも、定時までほぼ休まずにずっと仕事をしているのも、お子さんの行事と研修の日程がかぶって、お休み取るのが申し訳ないと言っていたことも。そんな様子をずっと見ていて、私はその人の心の負担が少しでも減ればいいなと思っていた。だから仕事も「代わりにできることはやります」と言っていたし、お子さんの行事だって「早めに上司に伝えれば調整してくれるはずだから、周りに気を遣わないで上司に言ってください」と言っていた。
でも、それが本当に、その人のためになっていたのだろうか。いまだに正解がわからない。

お子さんの母親は、間違いなくその人しかいない。でも、仕事は代わりにできることだってある。だからご家族のことを優先してほしい。そう思っていたけど、その人自身は、どう思っていたんだろうか。もっと仕事をしたいと思っていら?キャリアを積んで昇進したいと思っていたら?私が仕事を代わりにやる事で、逆にその人に気を遣わせてしまっていたら?
その人の「母親」の面だけを見て、私は言葉をかけていたのではないだろうか。「その人自身」が、どうしたいのか、聞いたこともなかったし、当時の私は、そこまで考えが至らなかったのだ。
それに気づいた今、すごく悔しくて、涙が出そうになった。

生活は踊るの相談コーナーの後に、「あの時こうしていればよかった、と後悔しないようにしてほしい。」と言っていた。
もう、私はもうあの人と、一緒に仕事することはない。今どうしているのかも知らない。今更気づいたって、遅いことだったのかもしれない。でも、今知れてよかった、とも思った。同じような状況が目の前に訪れた時に、私は「その人自身」の言葉を聞くようにできるはず。

私も、私自身がどうしたいかを大事にしたい。
一生続けていく仕事として、ライターを選んだのは、私が書きたいからだ。誰かに言われたわけでもなく、自分で選んだことだ。働く時間と場所の自由度を上げたかったのは、自分の人生を充実させるためだ。なのに、少しでも、「家族になにかあった時に、身動きがとりやすい仕事だから」、と世間体を気にする自分が出てきて、また悔しい。そうかもしれないけど、私が決めたことだ。世間に決められたことではないんだ。誰かのために生きているじゃない、自分の為に生きるんだ。
「自分の為に働いて生きる」そう決めた時の私を、後悔させないように、今を生きていく。私の理由を忘れないように、私は生きていく。

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