夏のはじまり

宇宙船に乗って誰にも言えないまま100億光年が過ぎたとして、君は一体どうなっているのだろう。
砂となっていたら、花びらとともに風に吹かれて飛び立つのだろう。
水となっていたら、光とともに海に流れて溶けゆくのだろう。
なんだかわからないことだらけの世の中だから不思議でも全くおかしいことじゃない。
いつか君の瞳を思い出したら宇宙は再び始まるかもしれないね。
その時、この場にいる生命体すべてがいるとは思えない。甲殻類の何かは、いるかもしれないけれど、憶えてないだろうな。
いなくなった存在は悲しいくらいにちっぽけだから。
飛び立って、もしくは溶けて、君は幸せかな。
「幸せとは何かを定義しなくちゃ意味がわからない」なんてひねくれたことを言いはしないよね。ごめん、そうじゃなくても、信じさせて。
青空こそ地球なんだろうね。青空が好きっていうのは地球が好きってことさ、多分。
夜空は宇宙だ。だから夜空が好きになった君は、宇宙を目指したんだよね。
宇宙を目指したんだ。
ところでさ、今になってかよって思うかもしれないけどさ、光年って一体なんなんだい。
どれだけなんだい。
100億光年が過ぎればいいのにって君の口ぐせだったけど、その時、僕は確かに「そうだね」ってうなずいてしまったけど、正直、わからないんだ。何度も調べたよ。色んな図鑑や教育本を読んだよ。それでもね、わからないんだ。
そもそも100ってなんなんだい。
億ってなんなんだい。
光年って。
まぁ、いい。
そうだね、うん、僕はわからないフリをしてるだけかもしれないね。
賢ぶっているんだ。なぜだかね。
こんなプライドはどうだっていいんだけどね。
なんの役にもたたないんだから。
遥か彼方へ向かう途中で重くて真っ先に振り払うべきものだよね。
次は、そうだな……思いつかないや。
なんだろうね。
話を戻すけど、いや、話は変わるけど。
つまりね、つまりだ。
未来を生きてるんだよ。
あのときから考えたらね。
まだまだツラいことってたくさんあるだろうけど、乗り越えられる。
これから果てしない旅がはじまるんだ。
宇宙船だって作ろうじゃないか。
ちゃちなものになったっていいんだ。
そのときは、まぁ、笑ってくれよ。
何も気にせず笑ってくれよ。
自由なんだからさ。


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