わーい

今日はバレンタインデー。好きな人にチョコレートを渡す日です。もちろん、お世話になった人に渡す人もいますし、友だちに渡す人もいます。チョコレートでなくてもいいらしいです。人それぞれです。
さて、紅県おかし町では毎年、チョコレート屋さんの隣にある公園で、多くの愛の告白が繰り広げられます。
愛の告白をするのは、学校でも家でも観覧車のてっぺんでもいいのですが、おかし町に住む人のほとんどは、チョコレート屋さんの隣にある公園を選びます。
こうしている間にふたり組がやって来ました。今日は2月にしては暖かいのですが、1人はコートにマフラーをしています。
ふたりは公園の真ん中に描かれたハートの輪っかに、同時に足を踏み入れました。醸し出すオーラがそっくりです。
「あの」
マフラーさんが口を開きました。
「これからは一緒に洗濯する関係になってくれませんか」
ふたりの瞳を柔らかに太陽の光がてらしました。
「もちろんです」
マフラーさんは、そのまま宇宙に行ってしまいそうなほど両手を空に向けて「わーい」と喜びを全身で表しました。
その時です。チョコレート屋さんの窓が開き、そこからチョコレートをくわえた鳩がふたりの元に翔びました。
「これが噂のバレンタインデーのチョコレートですね」
「ですね」
鳩からプレゼントされたチョコレートを見てふたりは笑いました。
「なんだか暑いですね」
そう言いながらマフラーさんはマフラーを取りました。
「チョコレートが溶ける前に、行きましょうか」
「ですね」
ふたりは和やかに公園を後にしました。
紅県おかし町では毎年、チョコレート屋さんの隣にある公園で、多くの愛の告白が繰り広げられます。告白をした人が「わーい」と喜ぶと、チョコレート屋さんからチョコレートがプレゼントされるのです。
あ、また新たなふたり組がやって来ましたよ。
続きはまた機会があれば。
それでは、ごきげんよう。

(了)


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