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騙し、騙され -その3 部活の友人編-

前回までのあらすじ
ずっと思いを寄せていたバスケ部の先輩タカシに告白したサトミ。両想いだったことが分かり付き合い始めることに。初デートの前日、見に行く映画の事で大ゲンカ。あぁ、私の初恋どうなっちゃうの?


-21歳編-

「〇〇高校の、陸上部の□□君から電話よ」
母の声が家をこだまする。
いや、見栄を張った。
こだまするほど広い家ではない。

高校では陸上部に所属していた。
しかし、部そのものに主だった活動はなく帰宅部と化していた。
主に短距離が専門だったが、トレーニングとして皇居一周などもしたことがある。
ただ、全体を通して本当に数度しか活動がなかった。
自由な校風の学校であったため、それもまた一つのスタイルとして容認されていたのであろう。

話を戻そう。
母は、その陸上部に所属していた同期の名前からの電話を告げていた。
クラスこそ違うものの、陸上部のと言われれば、顔も思い出せるくらいには知っている彼だ。
でも、卒業してから一度も連絡を取ったことも遊んだこともない。
いや、むしろ在学中も部活以外で一緒に遊んだためしがないのでは。
むむっ?と感じながらも電話に出る。

「よう、久しぶり!元気?」

「おぉ、久しぶり!元気だよ。今、何してるの?」

そんな感じで、お互い知らなかった卒業後の進路などについて軽く雑談する。
そう、お互いの進路さえ知らない程度の仲だ。
特に変わった感じもなく近況報告などをして普通に会話が進んでいく。

「今度、一緒に飯でもどう?休みはいつ?」

私は面倒くさがりだ。
あまり仲良くない相手とご飯を共にして数時間一緒にいるのは苦痛だ。
むしろ、この電話もよくここまで話をつないだものだ。
多分、相手が話し上手、聞き上手だったのもあるのだろうが。

「いま、バイトもしてるからあんまり休みはないかな」

適当なごまかし。

「そっか、バイトはどこでしてるの?」

「〇〇駅の辺り」

「バイト何時まで?」

「日によるけど〇時位までかなぁ(実際より結構遅い時間を言う)」

「じゃぁさ、〇時に〇〇の駅で会おうよ」

「あぁ(めんどくさいなぁ)」
心の声は出さずに返事した。
そのことによって相手には肯定の意味に伝わったのだろう。

「いや、陸上部で世話になっていた友だちだけ教えているんだけどさぁ、実はすごくいい話があって、お前にも絶対損のない話だから」
ほぅキタキタ。
やっぱりそっちね。
しかも、一番わかりやすいパターンでね。

「そうなんだ。どんな感じのやつなの?」
食いついてみますよ。

「詳しい話は、会った時に説明するよ。じゃあさ、明日の〇時に、○○駅で会える?」

「分かった」

最短で会える日付を取り付けてくるあたりが。
迷ったり、ほかの人に相談させないようにするんだよね。

ちなみに、この時点で行く気はほぼなし。
だけど、もし元気があれば興味本位でどんな話か聞くだけ聞いてもいいかなというレベル。
でも行かないと、また電話かかってきて別の日のアポを取られるとかだと面倒だなぁなんて考えていた。

翌日、バイトの先輩にこの話をすると

「いや、絶対行くな。行かない方がいい。元気があっても行くな。多分相手は複数で来る。丸め込まれるぞ」

と何やら率直、具体的かつ適格なアドバイスをいただいたので、そのままバックレました。

その後、彼からの連絡は一切ない。


結論
「遠くの部活仲間より近くのバイトの先輩」っていうことわざの通りだね
もちろん相手によるけど
何より面倒くさいは正義←違う

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