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高齢になっても推し活は出来るか、という個人的な考察。

初めに

  ごく一部での用語であった「推し」「推し活」が広まった感のある昨今、私は仕事柄コロナ感染を極力避けなくてはいけないので、3年間追いかけていた舞台俳優さんやら、特撮のエキストラ参加からは遠ざかる生活をしていた。
   令和5年5月7日の新型コロナウイルス感染症の5類引き下げをきっかけに、推し活をぼちぼち再開しているのだが、改めて何が驚いたって、推し活の年齢層の幅広さである。
  昭和に遡ったら、た〇きんトリオの追っかけをしていたいとこのお姉さん、ピンクレディーのミーちゃん推しのお兄さんは社会人になる頃にはそんなものを卒業してしまっていた。
   私が好きな特撮やアニメが成人しても好き、なんていうのは、世間を震撼させた某殺人事件の容疑者の自宅の、ビデオテープと漫画雑誌の積み上がったニュース映像もあって、「いい歳してあんなもん見てるヤツらは、犯罪者予備軍だ」みたいな扱いされた時代もあった。
   そういう点では、我が家も厳しかった。ライブに行くなんて言おうもんなら、母親がチケット買わずに会場まで同行かつ、終わり時間まで待ち構えてるってのが高校まで続いたし、何回ポスターやグッズを理由なく没収されたかわからない。
   時は流れて、令和。
   特撮・アニメ・ゲーム・舞台で推し活を続けるも、自粛生活を強いられ、自宅と職場の往復で活気がなくなっていた私をよそに、母(後期高齢者)が推し活を始めた。

「アンタ、純烈って知ってる?あの人たちいいわよ!」

   待て待て待て。
   あなた、私の成人前の推し活めちゃくちゃ抑圧しましたよね?没収されたポスターやグッズ、未だに戻ってないんですけど。家庭訪問や三者面談で、こんなじゃまともな大人になれないとか言ってませんでしたっけねえ?!
    それはさておき。趣味は郷土史と短歌とかお固く見えた我が母、おばやおじに探りを入れたところ、学生時代はテスト勉強ほっぽって舟木一夫に夢中だったらしい。なんだよ、私の見ーはーは、あんたからかよ!
   古稀を過ぎてパソコンを覚えた母は、動画サイトを観ることを覚え、純烈にたどり着いたらしい。当時の私の認識としては、「ガオブラックがリーダーで、ゴウライジャーの人とギルスとゾルダと、あと知らない人がいるグループ」なので、特撮出演者のセカンドキャリアとして、歌は面白いな、程度。ただ、コロナが落ち着いたあかつきに、私の推し活にあれこれ干渉されないように予防線張っておくか、ということでCDとライブDVDを買い与えた。
   これが現在にいたる沼の源である。

              ライブに行こう。

  話はそれるが、私には弟がいる。
  本業は某居酒屋チェーン店勤務、趣味で総合格闘技をする彼は、やはり母ににてミーハーかつオタクである。彼の長所は、各チケット会社アプリやモバイルFC加入を上手く使い、様々な公演のチケットを入手することである。
  母が純烈好きと聞いてから、モバイルFCに加入。地元で行われる純烈ライブのチケットを送って来た。しかも3枚。
   我が家は両親含め4人家族。父は3年前からアルツハイマー型認知症で、5分前の記憶もあやふやだし、身の回りのことはギリギリ自力で出来るが、人の集まる場所できちんと行動出来るかと行ったらかなり不安要素多めだ。そもそもライブ終了まで座っていられるかもわからぬ。
    では、弟が同行するのかと思いきや、「日曜日なんだから、姉が一緒にいけば問題なかろう」と。
    
    いきなり要介護老人とそこそこ元気だがしばらくライブなんて行ってない老人を連れていく、とな。
   あのね。コマーシャルに出てくるような老人って、案外いないんですよ、弟よ。認知症がなくても判断力が低下していて、めったに行かない環境下で行動がおかしくなる人もいるんですよ。引率および運転手としていくのはめちゃくちゃしんどいし、ライブになんか集中出来ねえよ!
   なので。まずは下見及び会場の構造、席順表の確認、最寄り駐車場の確認を行った。
   規模は1200人規模のホール。駐車場が離れた場所にあり、どうしても5分程度の徒歩を想定しなくてはいけない。しかもホール専用の駐車場がせまいので、近隣のコインパーキングもチェックする。
   座席表は、中で探し回らないようにするために確認。認知症老人はそれなくとも5分おきになんの目的で、何しに自分がここへ来たのかを聞いてきて集中力が削がれるからでもある。
   トイレの場所も確認する。認知症老人は、トイレを済ませたあと、自席にひとりでもどるのは出来ない。私か母が付き添うとなれば、場所も把握しておかないと詰む。なんなら、ライブの最中にトイレに行くなんてあったら、もうその場で離脱まで打ち合わせした。
   ここで賢い読者の皆様は、気づかれたと思う。
  なぜ要介護老人を、デイサービスなりショートステイに預けないのか、と。介護保険サービス利用がもちろんベストな選択である。
   だが、うちの両親は若干共依存気味だ。
   父は勤務していた頃は自分の娯楽優先で、家族サービスはしない。しかし定年後、それまでやっていたゴルフやらテニスの仲間が疎遠になると、見事な濡れ落ち葉になって、母に干渉し出した。
   母もそこで、一緒には行動しないと言えばいいところを、色々干渉されたくないから、と自分の娯楽に連れ出したりした。認知症になってからは、もともと短気なところに抑制が効かない父が他人に迷惑をかけるから、とショートステイもデイサービスも行かせなかったような人。
    このこじらせた夫婦を引率する、というだけで胃が痛い。その上、ライブではしていけないこと(撮影は公式から許可が出てから。他人の邪魔をしないように、ライブ中は喋らない。飽きて外へ出る時は私に知らせる)を叩き込まなくてはいけない。
   正直、往路だけで疲れた。

           結局、ライブはどうなった?
   

   さて、迎えた当日である。
   家を出発してから5分おきに繰り返される父の質問と、徐々にテンションのあがる母からの会話で、会場到着時にはもう私のライフはゼロであった。
   会場では友人同士や家族連れも多かったので、まあ我が家のメンツでも浮いている、ということは無さそうだった。
   ちなみにこの時のライブは、令和4年11月。
   小田井さん参加の最後のツアーである。一方で感染対策もあって、客席を回っての握手や、終演後の特典会もない頃であった。結果、これがいい方向に働いて、父は開演後おとなしく見ていたし、テンションが上がりすぎて母が立ち上がったり、ということも無かった。
   私?両親に全集中していたから、記憶があんまりないです!!辛うじて覚えてるのが、「愛が裁かれる時」がこの日解禁だったこと、「有吉を騙したら20万」のロケ話をリーダーがしていたことの2つ。
    そんな気を張る必要も無いだろうと思われた方は、手のかからない両親で、素直に羨ましいです。うちは、何が困るっていうと、「早くに家を出て、両親の印象が家を出た頃で止まっている弟」と、「父が要介護になったのでやむなく実家へ帰ったけど、母がケアマネージャーや周囲からの助言に全く耳を貸さないタイプであることを毎日見せられる私」では、演劇やライブに両親を連れ出す、という見解が異なるので有難い一方で、たまにはこの役割変わったくれよ、という本音が出てしまう。
   とはいえ。年齢考えたら、あと何回推しのライブに行けるかわからん、父ももともと音楽は好きだし、反応が悪くなかったことを考えると、もう少し付き合ってもよいのか、とも思う。 
    純烈のファン層はかなり幅広いし、年齢が高くなったから参加しない、ということはなさそうに見えた。
    
    かくして。
   歳を重ねても推し活をするには、ということを純烈のライブを元に考えてみることにした。
   年齢だけでなく家庭事情や環境等でチケットを購入することも難しいなんてことも考えながら書く。
    お時間ございましたら、おつき合いください。

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