見出し画像

アジャイルプラクティスガイドブックを読んだ/守破離の「守」って難しい

今更だけど「アジャイルプラクティスガイド」を読みました

おはようございます。小学生の子供たちの夏休み図書を、近所の大きめの本屋さん買いに行ったついでに自分も目にとまったものを購入しました。
ちょうど一年前に発売された「アジャイルプラクティスガイドブック」

難しいことは一切書いておらず、コラムやイラストが随所にはさんであるのですらすら読めました。アジャイル開発を始めてみたけれど、なんだかしっくりこない。これまでのやり方をどう変えればいいかわからないというチームに寄り添える一冊だと思いました。
自分が遭遇した「あるある」な経験を振り返りながら、以下感想です。

同時に取り掛かるタスクを絞る

スプリント計画でタスク分解したはいいものの、各自がばらばらのPBIのタスクを進めてどれも終わりませんでした・・・という場面はスクラムを始めたばかりのころはよくありますよね。
そうなってしまう背景としては以下が考えられます。

  • サーバーサイドなど、個人が担当する領域が固定されている

  • 1案件を1人で進める文化(1人プロジェクト)

  • レビューや仕様確認に時間がかかり待ち時間が長い

本書では、WIP制限やリソース効率とフロー効率、効果的なタスクの切り方について説明されています。
タスクにWIP制限をかけて、1つずつ終わらせていく仕組みを作ってしまい、その中で背景に書いたような課題が浮き彫りになってきたときにチームで改善を進めていくやり方はよさそうだなと思いました。

コードレビューの取り組み方

タスクがレビュー待ちの状態からなかなか進まないというのもありがちだと思います。
過去リーダーをしたプロジェクトでは、自身もタスクをこなしながらすべてのレビューをこなしていたのでペンディングレーンに私のレビュー待ちタスクがずらりと並んでいた苦い経験もあります。
本章では、「レビュアーを個人ではなくグループにアサインする」「レビューアの認知負荷を下げる」「レビューイが受け止めやすいフィードバックをする」という視点でプラクティスが紹介されていました。
実装の着手と同時にプルリクエストを作る」は、実装途中でこまめに完成イメージを共有することで認識のずれを極小化し、レビューの手戻りを減らす効果が期待できます。

進捗遅れや技術スキルの偏りを解消するための手法として「スウォーミング」や「ペアプログラミング」を問い入れる方法も紹介されています。ペアプロはレビューもしながらコードを進められるので、手戻り防止の効果も期待できます。
章末コラムでは、ペアプログラミングによって得られる効果として「お互いを深く知ることができる」「一緒に取り組むことで集中とエンゲージメントが高まる」ことが期待でき、ペアプロの楽しさを定量的に評価した論文が紹介されていました。
特にOJTにおけるペアプロやスウォーミングでは「先輩が後輩に教える」という意識に傾きがちですが相手の思考の癖がわかったり自分が見落としがちなポイントを見つけてもらえたりと先輩側も得るものが多いと思います。

開発と運用、分けて考えていませんか?

これまで開発と運用が明示的に分かれていたり、特定のメンバーに運用作業が偏っていてなんとなく開発と運用は別物だと考えがちなチームにはどきっとする問いだと思います。
作って終わりではなく、安全にリリースし障害が発生した際に迅速に原因が特定できるようにするためのプラクティスが紹介されています。
特に障害はいつ起こるかわからず、発生するとカレントの開発が止まってしまうので台風や地震のように「災害対策マニュアル」を作って迅速に対策本部を立てれるような準備が必要だと感じました。
本書では頻繁に起きる障害の対応手順をまとめた「Playbook、Runbook」の作成やポストモーテムを使った振り返りが紹介されていました。

スクラムでは「守破離」というけれど

アジャイルコミュニティが日本の武道から取り入れたものの1つに「守破離」があります。守の段階では型を繰り返し、自らを律して、先人たちが作った肩を体に染み込ませていくことに集中します。
ちょうど会社のスクラムマスターのみんなと読書会をしているときに、「守がうまくいかないまま次に行ってしまうよね」という話題になりました。

スクラムは「こうやれば正解」がなく、スクラムガイドもあえて手段に触れない書き方をしているので、やり方は自由だととらえられがちです。
アジャイル・スクラムの原則をしっかり理解して学習しながら実践することができるチームであれば良いと思いますが、これまでのやり方からの変革を求められる場面では「守」にこだわることは大事だと思いました。
そんなとき、この本は守る型になるのでは。

以前、Women in Agileの基調講演で、日本体育大学体育学部の教授であり女性エリートコーチ育成プログラムにも携わる伊藤 雅充さんが「学びほぐし」についてお話をされていたのを思い出しました。
自身の経験、やり方、価値観を一度脱いだ状態で新しい学びを得て、色眼鏡で得たものを見ないことが大事だそうです。
スクラムの「守」でも、これまでの価値観であれこれ考えるのではなく、まずは一つ一つのプラクティスを丁寧に実践して体に染み込ませてから目的の深堀(破)へステップを進めることが成功への近道かもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?