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蓼食う虫も好き嫌い

〔解説〕

 古くから親しまれてきた「蓼食う虫も好き好き」ということわざも、時代の流れに押されて見直しがおこなわれ、「蓼食う虫も好き嫌い」が追加された。画策したのは、ほかでもない日本格言審査委員会である。

 念のため「蓼食う虫も好き好き」の意味を確認しておくと、「辛いと言われている蓼という植物を食う虫がいるように、人の好みはさまざまである」ということを言ったものである。(※「蓼食う虫も好き好き」の意味はパロディーではなく事実)

 ちなみに、蓼はタデ科の植物で、茎や葉に辛味があることから、香辛料の原料として利用される。
 苺葉虫(いちごはむし)や蓼蚜虫(たであぶらむし)、蓼小夜蛾(たでこやが)などが食う(※事実)のだそうだが、こんなマイナーな虫は知らない人のほうが圧倒的に多いであろう。

〔さらに解説〕

 「好き好き」とはどういう意味か説明しなさいと問われれば、あまりにも馴染みすぎているために数秒間はハタと考え込みそうだが、「好みは人それぞれ異なっている」という意味だ。
 雰囲気が似ている「好き嫌い」は、「好きであることと嫌いであること」を言う。「好き好き」とは微妙に異なる。そしてさらに、「好き嫌い」は一般的には食べ物に対しての好みを言い、人間に対しては使わない。

「凡子さんは男に対して好き嫌いがなくていいわね」などとは言わない。
「おい助兵衛。きみは女であれば見境なく声をかけるけど、いくら好き嫌いがないといっても女性は食べ物じゃないんだ。女性に対して失礼だからやめなさい」などとなる。

 助兵衛くんのような男は「悪い虫」とも呼ばれる。蓼食う虫に似ていなくもないが、こういうときに「蓼食う虫も好き嫌い」をつかうといい。
「蓼を食うような変わった虫でさえ好き嫌いがあるんだ。おまえも少しは見習いなさい」というぐあい。

 類語に「蓼食う虫の物好き」や「下手物(げてもの)食いの蓼好き」がある。(※この二つは嘘)

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