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ときには口を閉じてあくびをしてみる

 大変な労力が必要な割りに実入りの少ない、いやな仕事をしていたらあくびが出そうになった。ふと、口を閉じたまましてみようという気になった。やってみたらけっこうむずかしかった。
 皆さんもぜひ一度お試しいただきたい。

 まず、上下の唇を閉じたままで、口の中だけをふくらます方法。
 下顎が下がるから顔が長くなり、無理やり閉じている口はおちょぼ口になる。
 空気の取り入れは鼻孔が一手に引き受けることになるから、いやが応でも鼻の穴が広がる。しかし、全体に広がるのではなくて、下に引っ張られるために縦長に広がる。
 目は、下まぶたが微妙に上がってほんのわずかに細くなる。
 全体的にはけっこうお間抜けで平和そうな顔になる。

 もうひとつは、歯を食いしばって口をまったく開けないのはもちろん、口の中を膨らませることもしない方法。はたから見てもほとんどわからない。
 この場合には鼻の穴がめいっぱい開く。もちろん、開かないように頑張ることも可能だ。
 どうせ口で息を吸い込まないのだからこの方法でもいいと思うが、最初の方法のほうがやりやすいようだ。

 どちらの方法も、最大の難関は息を吸い込むときの頂点で、たいていの場合、そこへ到達するまでに笑ってしまったり、うまく到達してもなんとなく不満が残ったりする。
 会議が長引いて飽きたりしたときにやってみれば、眠気の解消などに多少は役立つだろう。
 デートをしていて会話がとぎれたりしたときなどには、お互いに顔を見ながらやってみるといい。きっと和やかな雰囲気に包まれることだろう。

 究極のあくびとしては、口も鼻の穴もぴくりとも動かさないというやつだろう。人前でこれがすんなりできるようになれば〝あくびの道〟を極めたといってもいい。あなたはあくびマスターだ。

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