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ゴミと環境ホルモンとホルモン焼き

 パソコンのプリンタが壊れて買い替えた。ばかでかい段ボールの箱に、発泡スチロールなどの保護材といっしょに梱包されていた。
 こういうものは処分に困る。貧乏性の私などは、箱はたたんでとっておき、何かのときに使おうか、などと思うが、実際はなかなか使う機会がない。保護材にいたってはほとんど使いみちがなく、結果的にゴミになる。

 必要になるかもしれないと思って保管しておいたものも、結局いらなくなるということが多い。つまり、ゴミに変わるというか、ゴミの誕生となるのだ。部屋や仕事場を整理すると、そういうゴミがけっこう出る。

 環境省の報道発表資料によれば、令和2年度の全国一般廃棄物の量は4,167万トンだという。国民1人あたりに換算すると1日あたり901グラムのゴミを出している計算だ。1か月を30日として計算すれば毎月2.7キロ。1年では約32.4キロだ。
 この数字を「うわあ凄い」と驚くか、「なんだ、たいしたことないじゃないか」と思うかは人それぞれだが、とにかく、これだけのゴミが発生していることは事実なのだ。

 このほかに、工場や工事現場、家屋など建造物解体、田畑、牧場などから産業廃棄物というゴミが出る。こちらは3億8,596万トン(同じく環境省の報道発表資料、令和元年度分)で、一般廃棄物の9倍以上だ。

 そんな状況だから、ゴミの埋め立て処分場は近い将来足りなくなるのが目に見えているが、新しい処分場をつくるのは簡単ではない。
 かといって、家庭などで不用意に燃やそうものなら、ダイオキシンやPCBほか諸々の有害物質が発生する。そういった物質の多くは環境ホルモンをつくりだす。

 環境ホルモンという言葉をあまり見聞きしなくなったが、一時期は精子の量を減らしてしまうなどと言われて騒がれたこともある。ただでさえ少子化が進んで社会問題にまでなっているのに、このうえ精子を減らされてはたまらない。弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂だ。
 昔と較べて結婚する気がない若者が増えていることや、草食系男子と称される人たちが存在感を増していることなどにも、環境ホルモンが影響しているのだろうか。
 それに、生殖機能に異常をもたらすというなら、卵子にも影響をおよぼすおそれだってある。学者のなかには、環境ホルモンが人類を滅ぼすとまで言っている人もいるという。

 ここでそんなこと心配してもしかたがないから、環境ホルモンの話はいったんおくとして、食品のホルモン焼きの話をちょっと。
 私は以前からホルモン焼きの名称について疑問を持っていた。ホルモン焼きの原料は豚などの臓物だ。少なくとも外見では分泌物としてのホルモンには見えない。だから、なぜホルモン焼きという名がついたのか不思議に思っていた。
 ところが、捨てるゴミあれば、いや、捨てる神あれば拾う神ありというが、運よくその疑問が解決した。

 「無敵の雑学」(角川文庫)はおおよそ次のように説明している。大阪のレストラン「北極星」のオーナーが、本来なら捨ててしまう内臓を利用し、グラタンや煮込み料理を作った。これが爆発的な人気を博したため、「ホルモン」料理と名付け、昭和15年に商標登録した。
 この店の説明によれば、内臓料理を食べると力が湧くことから、体内生成物質であるホルモンの名をとり、ホルモン料理としたのだという。
 なんと、ホルモン焼きは、捨てられてしまうはずのものを生かした食品だったのだ。

 ということで、話が横道にそれたかのように思えるがそんなことはない。ホルモン焼きには、本来ならゴミとされていた内臓を製品に変えたという、大いなる教訓が含まれている、という話なのだ。

 パッケージや保護材もそうだが、たいていのゴミは何らかのかたちで人間のための役を果たし、結果的に廃棄物となったものだ。
 それを、掌を返したように邪魔者扱いや悪者扱いにしては気の毒というものだが、それはさておき、ゴミ問題解決の最善の策は、以前から言われているように、とにかく「ゴミを出さない」「可能な限り再利用する」ことに尽きるだろう。
 ホルモン焼き、えらいっ!

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