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ぷるんぷるんと

 拙作「凡筆堂版故事ことわざ辞典 敵は本能にあり」で、食欲と睡眠欲については解説したのだが、性欲については「股の機会に」などと、素手でつかんだウナギがぬらりと逃げるがごとく、解説を自主規制して回避した。
 ところが、いただいたコメントを拝読してしてみると、予想外に〝性欲の解説がなかったのは残念〟〝ぜひやってもらいたい〟といった趣旨のものが多かった。

 さらに、それと併行するかのごとく、数日後には相互フォローの関係にあるあやのんさんが「狸善人と、チクワ談義」という記事を投稿なさった。これに背を押されたというか刺激されたというか、とにかくそんな背景もあって性欲の解説を書く気になった。
 書くにあたっては、かつて女性向け雑誌でしばしば特集されていた「セックス特集」(発売するたびにたちまち完売が定説だった)を下敷きにした。そこに私の独自調査と分析を加え、かなり掘り下げてやっと書きあげた。

 ところが、すっかり悦に入って読み返しているうちに、深入りしすぎていて生々しいと気がついた。性欲がテーマだから的は射ているが、あまりにもド直球すぎる。
 しかし、言いたいことをやっとのことで書きあげたのだから、簡略化はしたくない。かといって、強硬に投稿して〝凡筆堂はやっぱりドすけべだったんだな〟などと、軽蔑されたり非難されたりするのはいやだ(ほんとうにまじめに書いた)。

 そこで、折衷案とはいかないが、百歩どころか三千歩くらい譲り、泣く泣く方向を変えた。結局、一般的な下ネタ程度にし、お茶をにごすことにした(お蔵入りとなった記事のデータは捨てずに保存してある)。
 そんなわけで、当初の予定よりかなりマイルドになり、性欲というよりも〝コミカルエロ〟のような感じになってしまった。そして、他人に支障のないよう、記事のタネは私自身のエピソードにした。

※下ネタに対して拒否反応があるかたは下の☆☆☆から先を読まないでください(こんなことを書けばよけい読みたくなるかもしれないが)。それでも読むという場合は批判的なコメントを入れないようお願いします。


    ☆    ☆    ☆


 私はひと頃、健康増進のためにラジオ体操をしていた。まじめな性格だから第一と第二をセットでやっていた。場所は自分の部屋だ。
 私の部屋にはエアコンがないから、真夏となると大変だ。じっとしていても汗が出るのに、第一と第二の両方を、全身全霊を込めて目一杯やるから下着まで汗びっしょりになる。
 だから、着衣で体操すれば、終わった後には着替えをしなければならないし洗濯物も増えてしまう。

 そこで私は、まさかの〝素っ裸でやる〟という画期的なアイデアを思いついたのだった。これなら衣類を汗まみれにしなくてすむ。つまり、着替えもしなくていいのだ。なんというシンプルかつ効果的な方法なのだ。
 さっそく私は意気揚々とすべてを脱ぎ捨てた。おおっ、すごい解放感(開放感かな)だ。そして、いそいそとDVDをかけてラジオ体操を始めた。
 しかし、やっているうちに、なんだかちょっと間抜けな感じがすると思いはじめた。それに、誰も見てはいないが、なんとなく恥ずかしいような気もする。

 いくつかある体操の動作には飛び跳ねるものもある。男が素っ裸で、音楽とナレーションに合わせ、腕や脚を開いたり閉じたりしながら飛び跳ねる。この様子こそ珍妙だ。なんという滑稽さと卑猥さ。そして不気味で奇怪な光景であろうか。
 一応私にも、ささやかではあるが男のブツが付属している。それが、私がぴょんぴょん飛び跳ねるたびに、ぷるんぷるんと、上を向いたり下を向いたり、せわしげに、そしてリズミカルに振れる。
 自分のものではあるが、いつになく存在感が気になる。ぷるんぷるん。


    ☆    ☆    ☆


 と、こんなぐあいだ(これは創作ではなくて事実)。蛇足だが、私は決してヘンタイではない。純粋に、衣類を汗まみれにしたくないという一心でやったことなのでご理解くださいますよう。

 また、紳士の皆さんはともかく、淑女の皆さんはご自身で体験いただけないので残念だが、全力で想像していただければ、ある程度の感覚なども推測いただけるのではないだろうか。
 運転中や会議中に眠くなったら、これを思い出してもらえればいくらか眠気覚ましのお役に立てるかとも思う。嫌いな友だちのつまらない話を聞いているときや、一人で退屈なときなどにもぜひどうぞ。

 ところで、熱しやすく冷めやすい私は、最初の日はおもしろがってやっていたが、二日目には疑問を抱き、三日目にはあきれてやめてしまった。





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