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中島みゆきコンサート「歌会vol.1」

5年ぶりのコンサート

中島みゆきのコンサートに行くのは、2019年の夜会「リトルトーキョー」以来、夜会以外のコンサートとなると、2016年の「縁会」以来で久々だ。
実は、2020年の「ラストツアー」に行く予定だったのだが、コロナでコンサートが途中で中止になってしまった。
全国を回るツアー形式のコンサートは最後だったって言うのによ。
そして、ようやく「ラストツアー」開催時に予告されていたツアー形式ではないコンサート(東京と大阪のみ)に行くことができた。
今回は会場の都合上なのか、土日の公演日が設定されていない。
みゆき様も古希を過ぎたし、「ラストツアー」のようなこともあるので、もう土日にこだわらず、平日でもチケットを取ることにした。
東京の会場である東京国際フォーラムなら、地元からでも日帰り可能だが、帰りの時間は遅くなるので、次の日が土曜日となる金曜日に絞って申し込んだところ、見事当選!
しかも、席が13列目というこれまでにないステージに近い席。
 
改めて中島みゆきのコンサートに行った回数を数えてみたが、中学3年生の時に初めて行って以来、コンサートツアー、夜会があるたびに申し込んで、通算20回になっていた。
この「歌会vol.1」で21回目になるのかと感慨にふけりながら、新幹線に乗り込んだ。
 

コンサートの前に「中島みゆき展」

コンサートの開演時間は、18時30分、それまでどう過ごそうか考えていたら、たまたま東所沢にある角川武蔵野ミュージアムで「中島みゆき展」が開催されていることを知り、行くことにした。
 
角川武蔵野ミュージアムは、公園に隣接したとてもきれいな美術館。
展覧会自体は、さすがに年齢高めだったが、平日なのにかなり客で賑わっていた。
展覧会の入館者のみが購入できる月刊カドカワ号外「中島みゆき特集」。
この号は、今まで月刊カドカワで特集された中島みゆきの記事の再編集版だが、冒頭に新しい記事がある。
その内容が、アート的に展示されているというちょっと変わった展覧会だった。
入場してすぐにある中島みゆきの年譜には、年ごとにその年に発売されたディスクが他の歌手に提供された曲と並べて飾ってあり、こうしてレコードのジャケットで並べると時系列が分かりやすい。
中島みゆきのレコード、アナログ盤は全ての作品で発売されているものではないが、個人的に一番好きなのは「中島みゆき」。
モノクロでご本人首元から耳のあたりまでを捉えたクローズアップ。
一番アート的で好みなのだが、これがアナログ盤のジャケットサイズになると一際よい。
この大きさでないとよさが今ひとつ伝わらない。
一番人気だったのは、DJコーナー。
来場者からリクエストを受け付け(もちろん中島みゆき縛り)、基本レコードで(レコードで発売されていない作品はCDで)その曲をその場でDJのお兄さんがかけてくれる。
オーディオセットは、当然ヤマハ。
スピーカーは、NS-800A、アンプはR-N1000A、レコードプレーヤーはTT-S303?、CDプレーヤーはCD-S303?だと思う。
スピーカーとプレーヤーのバランスが悪いが、現在ヤマハにはこれ以上のものがないのでしょうがない。
出てきている音は、ヤマハらしい整った上品な音。
DJがかけてくれた曲が同時に会場内のBGMにもなるというちょっと気の利いた仕掛けだ。
観客の年齢層が高めのためか、初期の作品が多かったが、さすがにこの展覧会に来るようなファンだけあって、「クレンジングクリーム」のような渋い曲もかかっていた。
イントロの3秒でほとんどの曲が分かって、その曲の歌詞をほとんど覚えている自分自身にちょっと驚きながらも、夕方からのコンサートへの期待を高めるにはちょうどよいイベントだった。
 
東所沢から西に向かい、中央線経由で東京に到着。
時間調整に難儀したが、東京駅に隣接するKITTE内にSaza Coffeeがあることを発見し(その斜め向かいのバーで2回も飲んだことがあるのに気づかなかった)、初パナマゲイシャを味わってきた。
 

「一会」以来の東京国際フォーラムへ

そして、ようやく開演時間。
東京国際フォーラムは、2017年の「一会」以来2回目。
会場に入ると、ああこんな感じだったよねと思い出してきたが、入場列は会場の外だと案内されて、行ってみると、そういえば前回もここに並ばせられたのだった。
前回は1月の公演だったので、外はすっかり暗かったが、今回は5月なのでまだ明るい。
しかし、その列に並んでいる御同士の姿を見て、時の流れを改めて感じてしまった。
中年はすっかりと通り越して、壮年の集団の姿がそこにあったからだ。(自分のことはすっかり棚上げ)
以前より女性の割合が多いような気がするが、夫婦らしき男女のペアが多いせいだろうか。
その中で若い人の姿を見つけると、よくこの高額チケットのコンサートへ行く気になってくれたと思う。
3月のBABYMETALのライブでは、物販のみならず、入場でもかなり待たされたことを考えると、入場での本人確認はあるものの、手荷物チェックがなかったので、入場はかなりスムーズだった。
観客の年齢層を考えるとこのぐらいスムーズでないと、別の問題が発生しそうなので、運営側の配慮はあるのだろう。
 
会場内に入ると、やはり今回の席はステージにかなり近い。
肉眼で十分みゆき様の表情まで確認できるだろう。
スピーカーは、ステージ横に吊されたラインアレイスピーカーが大小1つずつ。これが左右にある構成だ。
ラインアレイスピーカーの方は持ち込みだと思うが、その脇に備え付けの大型スピーカーも見える。
固定席のホールとしてはかなり広い会場だし、2階席も奥が深いので、ラインアレイスピーカーの縦がかなり長くなっている。
開場してすぐに入場してしまったので、手持ち無沙汰だったが、客入れのSEがあるわけでもないので、買ったばかりのコンサートパンフを見ながら、開演を待つ。
開演のアナウンスは30分前と15分前の2回、5分前の1ベルが鳴って、定刻の18時30分ちょうどに開演した。
 
実は、最新アルバムの「世界が変わって見える日」は、買って数回しか聞いていない。
このコンサートに合わせて聴き直すこともしなかった。
アニメ映画のタイアップ「心音」に至っては、CDを購入すらしていない。
要するに、あまり気に入っていないのだ。
そんな状態だったから、中島みゆきのコンサートで久しぶりに曲名が分からないものが数曲あった。
 
久しぶりのコンサートなので「はじめまして」で幕を開け、コロナのため途中で中止となった「ラストツアー」のMCがあったあとに「歌うことが許さなければ」を歌うあたりは、聴いている方をにやっとさせる選曲だ。
その後、医療関係をまとめて3曲と宣ってから、
「倶に」
「病院童」
「銀の竜の背に乗って」
を歌ってくれた。
前回のコンサート以降に出した曲を中心に、古い曲を織り交ぜる選曲構成は以前から変わらない。
「病院童」の入っているアルバム「問題集」はあまり聴き込んでいなかったので、曲を思い出すのにしばらくかかった。
 
いつも耳栓の準備が必要な爆音ライブに行っているので、今回は音響も適切で、ボーカルはもちろん、楽器隊の音もよく聞こえる。
ドラムは、やっぱり島ちゃん(島村英二)だよなあと思いながらも、今回はギターが古川望さんひとりなので、結構大変そうだったが、さすがの安定感、そしていい音を聴かせてくれた。
コーラスは、ここ最近は固定の文さん(宮下文一)、匠さん(石田匠)、そして和ちゃん(杉本和世)の3人。
ストリングス隊は今回8人。おなじみの牛山玲名さん、友野馬男、じゃなかった友納真緒さん中心のメンバー。
そして、コロナで中止になった「ラストツアー」にも参加していたが、その年の秋に急逝してしまったバンマス小林伸吾さんも「LADY JANE」のバックトラックで参加。
最初グランドピアノを坂本昌之さんが弾いていたが、途中で小林伸吾さんのピアノのバックトラックの切り替わった。そのときグランドピアノにスポットライトが当たり、坂本さんは席を外すという演出があった。
それでパンフレットに小林伸吾さんのプロフィールも載っていたのかと納得した。
「LADY JANE」のあとに「愛だけを残せ」を歌うあたりは、持ち歌をたくさん持っているキャリアの長いシンガーソングライターならではの選曲だ。

 みんな儚くて
 みんな愛しくて
 振り返ってしまうから
 
 愛だけを残せ 壊れない愛を 
 激流のような時の中で
 愛だけを残せ 名さえも残さず
 命の証に愛だけを残せ
 
中島みゆきのコンサートで途中に休憩を挟むようになって久しいが、今回は長めの20分。
後半の冒頭に夜会曲のコーナーがあった。
これまたコンサートパンフにヒントがあり、通常のコンサートなのになんで夜会の写真が載っているのか不思議だったのだが、こういうことだった。
やはり、開演前のパンフレットチェックは欠かせない。
 
曲ごとに、舞台奥(もちろん客席からは見えない)で着替えながら5曲ほど披露。
夜会は前回の「リトルトーキョー」で20回目を迎え、本人の年齢とその公演形態を考えると、21回目はないかもしれないと考えているが、ここで好きな夜会曲「ミラージュ・ホテル」、「紅い河」、「命のリレー」をライブで聴けるとは思わなかった。
 
会場は固定とはいえ、3日間会場借り上げ(2日目休演)の公演を、数週間空けて繰り返すという、プレーヤーの年齢を考えての公演日程を組んでいるので、今回は大がかりな舞台セットを持ち込んでいないと思いきや、夜会コーナーに入ったところで、夜会でのシーンを思い起こさせるような背景セットが曲ごとに披露されていた。
そういえば、夜会では舞台上に雨を降らすのなんて序の口で、川を作って船は浮かべるわ、滝を作るわ、終いには舞台上に海を作って、公演中に排水して地上にするなんてこともやってたな。
昔からのファンへのサービスか。
 
そしてこの時代に、こんな時代だからこそ歌った、歌わなくてはいけなかった「ひまわり"SUNWARD”」。
この曲は、1994年にリリースされた「LOVE OR NOTHING」に収録されている。
リリースされた年次から考えて、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争がモチーフになっていることはほぼ間違いないと思うが、リリースされてから30年。
また、この歌を歌わなくてはならない新たな状況にある現在、歌う歌の選曲に意味を持たせる中島みゆきは健在だった。
 
そして、その後披露した最新曲「心音」では、曲中でタイアップしたアニメーション映画の映像を流すという中島みゆきとしては初めての演出も行われた。
やっぱりか、映画見とけばよかったとちょっと思った。
 
そして、アンコールは2曲。
もはやこのコンサートの舞台上で指揮までするようになった「師匠」瀬尾一三と組んだ初めてのアルバム「グッバイガール」の1曲目の「野ウサギのように」を選曲したのも、これまでの活動の振り返りがこのコンサートのテーマだからなのかもしれない。
とにかくライブでこの曲を演るのは本当に久しぶり。
この曲をライブではじめてやった「野ウサギのように」ツアーのシーンを鮮明に思い出す。
 
オーラスは、やっぱりこの曲だった。「地上の星」。
いや、「新・地上の星」だったのか。みゆきさんのボーカルのキーが若干高いだけだから、聴いただけでは判別が付かない。
当日撮影が入っていたから、当然映像化されるのでそれまでの楽しみに取っておこう。
 
まあ、21回目のコンサートなので、新鮮な驚きを期待する方が間違っているが、それなり(失礼)の趣向を凝らした楽しいコンサートだった。
みゆきさんの声に一抹の不安を感じてコンサートに臨んだのだが、これまでで最高!というわけではなかったが、事前の心配は杞憂だった。
ただ、1曲終わるたびに水を口にする姿は初めてだったので、コンディションを維持するのが年々難しくなっているのかなとは感じた。

ああ、そうこのコンサートで一番驚いたのは、みゆきさんが眼鏡をかけて舞台に登場したことだ。
一瞬見間違いかと思った。
歌を歌う時以外は眼鏡をかけているのはずっと前からだが、舞台上での眼鏡姿は初めて。
このコンサートの全ての公演で眼鏡姿なのかは定かではないが、撮影が入ったこの日も眼鏡だったことを考えると、裸眼では無理でコンタクトレンズも入れられない状態なのだろう。
(以前は裸眼でコンサートを行っていたはず。夜会の時はコンタクトレンズ着用だった。)
どうせ眼鏡なんだから、それなら客席を5秒間明るくして観客の顔を見る時間を作ったのかな。
 
自分としては、ほぼ想定内だったコンサート。
今まで舞台上では決して見られなかった眼鏡姿で歌うみゆき様を見て、年月の経過を思い知らされた皐月の夜だった。
 

「中島みゆき ライブ リクエスト ‐歌旅・縁会・一会‐」を改めて聴く

自宅に戻って、過去の記録を確認していたら、そういえばライブアルバムを最近出していたことを思いだした。
記録用音源を使った「ラストツアー」の方ではなく、その前のツアーのダイジェストである「中島みゆき ライブ リクエスト ー歌旅・縁会・一会ー」。
選曲が秀逸で、大好きな曲たちを貴重なアレンジ、演出での演奏が収められている。
もちろん映像化もされているが、しっかり整えた現在のリスニング環境で聴いてみた。
ああ、やっぱりいいな。音楽に浸れる。
「ララバイSinger」からシームレスで「アザミ嬢のララバイ」になったときの驚きと感動が改め思い出された。
そして、大好きな「夜行」からギャップレスで演奏された「ジョークにしないか」も本当によかった。
青春映画を見たばかりなので、「ジョークにしないか」で歌われる青春時代なんかとっくに終わった年代の心の機微が染みる。
 
 愛なんて軽いものだ 会えることに比べたなら
 明日また会えるように ジョークにしないか
 きりのない願いは ジョークにしてしまおう
 
 海へ行こう 眺めに行こう
 無理に語らず 無理に笑わず
 伝える言葉から伝えない言葉へ
 きりのない願いは ジョークにしてしまおう
 
恋愛という言葉では括れない「情」の世界。
こんな歌を歌えるのは、今の中島みゆきしかいないのだろう。
 
「歌会vol.2」はこんな感じだといいな。
新しいアルバムは出るのだろうか。
「夜会」はもうやらないのかな。
 
初めてみゆきさんをライブで見てから40年近い年月が経ってしまった。
40年経っても自分がファンでいられて、こうしてみゆきさんのライブを見ることができる。
そのことに感謝しつつ、これからも、またみゆきさんに会えるように「きりのない願い」はジョークにしてしまおう。


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