別の裏通りを夢見て

今日も終電に滑り込み、深夜の裏通りを家族の待つアパートに向かって歩いている。体は8時間噛み続けたガムのようによれよれである。もう何年こんな毎日を繰り返しているだろう。
家までの最後の坂を登りながら、ふと思う。あの時別の道を選んでいたら、今は違う道を歩んでいたのだろうかと。
疑問は一瞬で消えた。別の道を選んでいても、今とは「別の」日本のどこかで、「別の」終電に乗って、「別の」裏通りを歩いて「別の」家族の待つ深夜のアパートに帰っているだけのことだ。環境のせいで今がこうなんじゃない。どんな環境にいても、自分は変わらない以上、歩む道はそれほど変わりはしないだろうさ。
そんなことを思いながら、アパートの鍵を開けた。

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