かに

書いては消して書いては消して。
葬り去られた言葉は何処へ。

随分と暑くなりましたわね。
道を歩いてると、こう
蝶々なんかがひらひらと舞いますでしょう。
その影が数歩先のアスファルトにね、
揺れてるんですの、
陽炎のせいもあるのかしら。

それでね、あたくしは日傘からちょいと
覗き込むようにしてね
影の持ち主を探そうとするんだけども
実際にはしないの。
だって日傘無しの太陽は
あまりに眩しくてね
肌が全部焼け焦げちゃうんじゃないかって
あたくし心配ですの。

結局道に落ちてたあの影は蝶々のだったのかな。
わからずじまい。

でもその方がいいこともあるんだと思う。でも知りたいと思ってしまうんだよな。なんでなんだろね。

前住んでたとこの近くに一粒のイチゴが落ちてた。そこは僕の鉄板のお散歩コースだったから、そこを通るたびになんとなくあのイチゴあるかなって探して、いつもあるから安心してた。
初めてイチゴを見つけてから3、4ヶ月たった。イチゴは依然として新鮮な面持ちをたたえていた。どんなマジカルイチゴやんと思わないではなかったけど、またしてもなんとなく、まじまじと観察したり、直接触れたりするってのはしないことにした。
それから更に4ヶ月ほどたった。春先に初めましてしたあのイチゴは、その日も変わらず水々しい表情で僕を迎えた。
あれほどの頑なな意思に反して、僕の手指は自然とイチゴに触れ、掴んだ。そして次の瞬間には、イチゴを掴んだ手指が目の前に運ばれていた。

まあ、そりゃあね。
って思った瞬間、強烈な賢者モードが僕を襲った。
そりゃあ、数々の季節を路上で、無垢な状態を保ったままでいられるイチゴなんてあるわきゃない。レプリカだろう、という憶測は当の初めからついてたんだ。ついてたんだけど、なんか知りたくなかった。思い知らされたくなかった、、

その日から僕はその道を極力通らないようにしたのだった。

あるある〜


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