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最も事故を起こしやすいのは赤い色をした車

赤は興奮する色。
若い人(運転に慣れていない)、興奮を好む人が選びやすい色ということで、赤い車の事故率は高い、そんなデータがあったような気がする。スポーツカーに限った話だったかもしれない。

私が乗せられたのは赤いタクシーだった。
タクシー運転手はアジア系の気さくなおじさんだ。
「どこから来た?」と聞くので「どこだと思う?」と聞き返すと、「韓国から来たのか?」と。「日本だよ」と答える。
「マレーシアは日本みたいに安全ではないから気をつけて。悪い奴は優しい顔してるから騙されちゃだめだ。」と教えてくれた。(わかってるって。どうみても安全じゃない!まずはあなたが安全な運転手であることだけが、今の私の願いの全て!)
友達が待っているアパートに行くんだ、というでっち上げのストーリーを伝えながら目的地へ向かう。スマホのSIMカードを空港では買わなかったので、もし何かあっても孤立無縁。スリル満点。
不思議なことだが、仮に通信可能なスマホを持っていれば「自分は一人じゃない」と勘違いを起こす。いざという時に、本当に頼れる人間はいるのだろうか。自分自身が人に「助けて」と言えない性格である以上、頼れる人間は誰もいないということだ。そういうこともあり、必要以上に用心深く生きてきたけれど、最近は脳が少し疲労していてSIMカードを買うことさえせず、知らない土地でタクシーに乗った。
マレーシアではHONDAの車がイケてるらしく、「これもホンダだよ」と運転手は誇らしげだった。

無事に私を下ろし、赤いタクシーは去っていった。
コンドミニアムの受付に居たのはインド系モジャモジャのおじさん。
(うわぁ、これセキュリティーの意味あるのかな…いる方が逆に怖いよ。偏見。)
何年使っているのか、ボロボロのノートに名前とパスポートナンバーを書くように言われた。
「皆が見るノートにパスポートナンバーは書けないから名前と電話番号だけ書いた」というと、あっさりそれでOKだった。

部屋のオーナーから聞いていた暗証番号でダイヤルロックのポストを開けてそこから鍵を取り出すシステムだ。
モジャモジャのオヤジは、「暗証番号教えてくれたら開けてやるよ」という。
ダイヤルくらい自分で回せるよ、と思い「自分でやる」と言い鍵を取り出し部屋へ向かった。(暗証番号を聞いてくるなんて怪しい。それとも親切?)

部屋の階に到着し、エレベーターの扉が開くとそこは鉄の扉が並ぶ冷たい空間。
こんなに暑いのに、私の心は冷えている。
(うわぁ…やばいところに来ちゃった。こんな感じなのか…やれやれ)

熱帯の謎の匂いの中佇む金属の扉


扉にはマレー語が書いてあるだけで、部屋番号が見当たらない。
鍵を差してガチャガチャ。開かない。次は隣。開かない。
私の部屋はどこ?まさか罠に嵌っちゃった?
仕方がないので、あのモジャモジャのオヤジのところに戻り聞いてみることにした。
私「部屋がどこかわからない」
オヤジ「カードキーをかざしたらエレベーターのボタンが押せるよ」
私「階まで行ったけど部屋がなかった」
オヤジ「案内するよ」
私「ありがとう」
オヤジ「部屋に入っていいか?」
私「(なんで入る必要があるんだよ!)NO.部屋の場所だけ教えて」

二人でエレベーターへ乗り込みすぐ上の階で一度降りると、「そこのドアを開いた先が部屋だよ」と教えてくれた。
私の階も同じ構造になっている。非常口だと思っていた扉が、なんと居住エリアへの通路になっていた。

部屋への扉

色々な注意書きがしてある物騒なこの扉が…。BOMBA BOMBAって書いてあるし…触ったらやばそう。
こういう国に来ちゃったんだ。と再び思う。
扉を開けるとそこに見えたのは、鉄格子の扉を1枚挟んで家のドアを開ける構造の部屋が並ぶ光景。
私の部屋の前に着くと、そこに鉄格子は無かった。
あっても怖いけど、なくても怖い!とにかく怖い!
私はここで、この先どれくらいの間生きていられるのだろう…
(それから数週間が経ち、この記事を書いている今では笑っちゃうけれど当時は本当にそんなことを思っていた。)

鍵穴に鍵を差すとガリガリガリ…硬い。
ガチャン、クルっ、…..開かない。(はぁ、またアイツを呼ばないといけないパターンか?それは勘弁。)
何度かやり直しているとガチャン…ガチャン、クルっ、重い扉がやっと開いた。
鍵は一度回すと1段階目、二度回すと2段階目とデッドボルトが完全に凹むまでに2回、鍵を回す必要があった。(デッドボルトは今初めて覚えた単語です。)
これなら怪しい人が外から鍵を開けようとしているとき、気づくまでの時間稼ぎになってありがたい。

扉を開けると、バグたちが一斉に光を逃れるため床を這い回った。
うわぁ〜〜〜〜、こんな感じかぁ〜〜〜。

ドアチェーンもガードも付いていない構造のドアであることに気づく。
鍵開けのプロたちは私が中で寝ている間も出入り自由か〜。がっかり!!

ウールのカーディガンを着てここまで来たことに気づき「この人大丈夫かよ」と思いながら、ファミマで買ったおにぎりを食べた。
言い訳:成田も機内も寒かったからね。飛行機を降りてからは、ここまで来るのに必死だったし(笑)

その後、スーツケースを広げてドアの前に置きマレーシアで初めての眠りについた。




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