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アリとセミ

昔々、ある国に、アリさんとセミさんが住んでいました。
性格も考え方も全く違うけれど、諍い合うこともなく、干渉し合うこともなく、お互いに自分の信条のもと自由に生きていました。

アリさんは毎日、朝日とともに起きて日没まで一生懸命働いていました。
好きな仕事ではなく、アリさんにとっては辛い仕事でしたが、生きていくために頑張りました。
今日食べるものをも節約し、せっせと倉庫に貯蔵しました。
朝はもっとゆっくり寝ていたいし、身体が疲れて仕事を休みたいこともありましたが、他のアリさんに迷惑かけてはいけないと思っていました。
時には、旅行に行ったり、みんなと歌を歌ったり、スポーツをしたり、いろんなことをやって見たいな〜と思ったりもしました。
でも、今、頑張って働いて、たくさん将来のために蓄えておかないと、万が一のために備えておかないといけないーと思い、心と身体に鞭打って励みました。
他の人が辛そうにしていると、自分を後回しにして、助けました。

セミさんは、毎朝ゆっくり起きます。
好きな時に起きて、食べたいときに食べ、寝たい時に寝ます。
昼間はずっと大好きな歌を歌っていました。
今、あるものだけでなんとかやりくりして、その日暮らしをしていました。
明日は明日の風が吹くのさ。
やりたいことなんかやりたくない。
セミさんはいつも、今を楽しんでいました。

ある日、アリさんは病気になりました。
日々の無理がたたって、身体も心も傷つき過ぎてしまったのです。
まだそんなに年老いてはいませんでしたが、仕事も辞めざるを得ませんでした。
アリさんは病室で、青空を眺めて思いました。
ああ、あとどのくらい生きられるんだろう。
本を読みたいけど、もう目が悪くなってしまった。
旅行に行きたいけど、もう歩けなくなってしまった。
せっかく蓄えたのに、何も食べることができない。
もっと、たくさん、身体が自由なうちに人生を楽しんでおけばよかったかな
でも、自分の道をしっかり歩いたから、十分だ
よくやったよ、自分。

ある日、セミさんは、年老いてもう動けなくなっていました。
大好きだった歌ももう歌えませんでした。
何の蓄えもありませんでしたが、もう食べたいものはありませんでした。
セミさんは、大好きな場所に体を横たえて、青空を眺めて思いました。
ああ、あとどのくらい生きられるんだろう。
もう読みたい本も読んだし、行きたいところへも行った。
何も食べられないけど、もう何もいらないからいい。
楽しいことたくさんやってきたな〜
何にも残せなかったけど、心の中には素敵な思い出いっぱいさ
だから十分だ
よくやったよ。じぶん。

昔々 ある国にアリさんとセミさんが住んでいました。
アリさんもセミさんも
性格も考え方も全く違うけれど、
諍い合うこともなく
干渉し合うこともなく
自分の信条のもと自由に生きていました。

ひとりにひとつずつ
命と宇宙
みんな違って みんないい






素晴らしい世界をたくさん見たい。たくさん感動したい。知らない世界を知りたい。幸せは循環させたい。ありがとうございます。