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自分への年賀状

2023年が終わろうとしている。

2021年から家族帯同で海外駐在をしているので、我が家では年賀状という行事は、一旦終了した。(正直、とても気が楽だ)

なので、友人知人への年賀状に費やしたはずの時間と労力を「自分への年賀状」に振りかえてみることにした。

2023年の振り返りと、2024年に対する所信表明である。

2022年12月初旬、中国は新型コロナ対策を実質的に放棄した。
「政府はこれまでよく頑張った、あとはお前ら自分で頑張れよ」
見事としかいいようのない掌返しで、感染市民を一気に野に放った。

政府に問い合わせをするな、という釘指しを忘れないのは流石である。

「PCR検査はやった方がいい?」「隔離は必要?」とうちの社員が役所に問い合わせたところ「なんのためにやるんだ」と返されたと聞いて爆笑した。やはり上意下達が徹底している。

それから1月中旬までの約1か月で、中国全土でまさに感染が「爆発」した。
うちの会社では、2週間たらずで100人のうち90人に陽性判定が出たが、周辺企業や多数の取引先でもほぼ同じ状況だったので、都市部の感染率が80~90%に達したというのは決して大げさではない。

市民の挨拶が「陽性になった?(ニーヤンラマ?)」となったのは歴史的珍事だろう。

春節前に感染爆発が収まったので、1月下旬からは、何億人もの中国人が旅行に出かけ、(感染をさらに拡大させながら)、アフターコロナ世界への参入を喜び、今後の未来に夢を馳せた。

「コロナさえ終われば、すべてが良い方向に向かう」

その期待は見事に裏切られることになる。

3月頃までは、コロナ禍の爪痕というか敗戦処理のようなものが残っていたので多少景気が悪くても、さほど不安の声は聞こえなかった。

「あれ、アフターコロナの方がやばくね?」

4月以降になって、日系企業の多くが違和感を覚え始める。特に自動車メーカーや部品メーカーの顔色はみるみる悪くなり、現地で流す汗は「冷や汗」に変わっていった。

「中国内でモノが売れない」

パンデミックは、中国人の精神を静かに蝕んでいた。

さらには不動産バブルの崩壊、デカップリングといった追撃を経て、中国人は自分たちの未来に不安を覚えるようになってしまった。

「後先のことは深く考えずに今を生きる」「気持ちよく金を使う」「宵越しの金は持たない」といった江戸っ子のようや印象は、私が赴任した当初に中国人へ抱いたイメージだった。

そういった気質はわずか2年で一変し、2023年には過半数の中国人が「貯蓄」を意識するようになった。

さらには別の意識改革も静かに進行していた。

「メイドインチャイナに誇りを持つ」

これが2022~2023年にかけて生じた、本質的な変化だと感じている。

自分たちだけの力で良い製品が作れる。中国人の自信は確信に変わる。
将来への不安は募る一方で、自国製品への誇りと愛着は増していった。

「モノが売れない」+「メイドインチャイナに誇りを持つ」の解は、「外資系はいらない」となる。

これが2023年の中国の総括であり、2024年の出発点だ。ここから目を逸らしてはいけない。

2021年の中国赴任以降、数え切れないほどの朝令暮改を体験したが2024年も間違いなく、右に左に振り回されることだろう。

根拠のない希望は持たず、これまで以上に現実的に考えること。ただし、悲観的にはなりすぎないこと。

たくさんの旅行と、食べ歩きで中国文化を味わい尽くすこと。

これが2024年の自分に向けたメッセージだ。
厳しさの中にも楽しみを見つけ、当たり前の日常を噛み締めたい。

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