多井隆晴と魅せる麻雀
Mリーグ最強雀士 多井隆晴
「最速最強」の二つ名を持つ多井隆晴。
最速かどうかはさておき、Mリーグで最強の雀士が誰かと言われれば答えは間違いなく多井隆晴だ。
2018のシーズンからずっとMリーグの試合を見てきているが、多井程の打牌の精度を安定して繰り出す選手は他に居ない。
キレッキレの時の朝倉康心なら勝てるか、くらいか。
Mリーグで、と付けたのは所謂プロ団体のリーグ戦等をほぼ全く見ていないから。
後、もしかしたら在野に多井を圧倒するくらいのめちゃ強雀士が居るかもしれない。
ただ、そんな人らは表に出てこない以上雀力の評価をしようがない。
であるなら、多井隆晴が最強ということでほぼ間違いない、というのが僕の中での結論です。
実際2018、2019開催のMリーグにおいて個人スコアは余裕のプラス(476.3と211.4)。2020も現在ギリギリではあるがプラス圏内にいる。
控えめに言っても化け物クラスに強いことは間違いないですね。
多井隆晴、役満崩しを本気で悩む事件
突然ですが何切る問題を一つ。
南1局一本場の西家で何を切るか?
※ただし、対子の牌は全て初牌とする
冷静に考えて、こんな何切る問題が有料の麻雀戦術本に載ってたとしたら作者に「アホか」って言いたくなりますね。
お前トイトイや四暗刻知ってるか?役満は麻雀の華ぞ?と。
ただね、実戦でこの牌姿に遭遇してめちゃくちゃ長考した麻雀プロが居たんですよ。
それこそが正に最速最強、多井隆晴だったんですね。
Mリーグ2019 1月6日の第二試合
対戦相手は雷電の萩原、格闘倶楽部の前原、ドリブンズの鈴木。
問題のシーンがこちら。多井が東をツモったところですね。
なんと多井、ここで30秒以上の大長考に入ったんですよ。37秒くらいかな?
自分も見ててリアルタイムで東を持ってきた瞬間「うわぁ…」と言ったのは覚えている。
いや、形だけ考えたらそりゃ4m切るしかないんですよこんなもの。四暗刻行けるじゃん、と。
でもこれ萬子の下が結構良さそうじゃないですか?7sもかなり良さそう。筒子の上は怪しい。
そして点棒状況を見ても現状ライバルの親番で、無理に役満上がれなくても、例えばリーヅモ三暗刻ドラドラの跳満ツモでもほぼほぼトップが取れそう。
多井もそこまでは間違いなく考えていて、実際上がりの感触としては萬子の両面に魅力を感じていた。その場合どこを落とすか?という思考になり、必然的に7pの対子落としと萬子の両面落としで悩んでいたに違いない。
30秒以上の大長考をするくらい、萬子の両面が良く見えていた。それこそ役満一向聴を崩そうか、と考える程に。にもかかわらず、最終的には萬子の両面を落として四暗刻へと向かったのだった。
多井隆晴最強の敵『魅せる麻雀』
さっきの局は結局下家の鈴木が400-700をツモって静かに終わった。
しかしこの判断の決め手になった要素はなんだったんだろう?と色々考えたときに思いつくのが見栄えじゃないか、となったわけなんですね。
麻雀の役さえ知っていれば、この牌姿が四暗刻の一向聴であることは誰にでもわかる。しかもその待ち候補は全て初牌だ。
もし仮に、どれだけ25mが良かろうが、2p7p7sがどれほど悪かろうが、四暗刻の可能性が残ってるって事じゃないですか。
もし仮にここから四暗刻一向聴崩して、四暗刻逃しをしてしまったらどうなるでしょう?
コメント欄なんか凄いことになりますよ
「こいつ役知ってんのか?wwww」
「最速最強wwww雑っ魚wwwwwww」
「もしかしてこの人負けたいの?」
「これが…professionalの一打…ゴクリ」
「あんこ餅食べたくなってきたから買ってくるわ」
こんなんばっかですよ。取り返しがつかないことになります。もっと酷いコメントも多数沸くかもしれません。
フォローしてくれるのなんてせいぜい一部の麻雀オタクが「まー最善の選択が最良の結果に繋がるとは限らないのが麻雀だからね(ニチャァ)」って言って終わるだけですよ。
あ、僕はニチャァの方です。
だとしたら、仮に多井自身の思いとして、両面残しが正解だと感じていたとしても四暗刻に向かった方がエンタメとしては正解だ。
四暗刻が出れば皆んな盛り上がるし喜びもする。
だからこそ多井は上の手牌から、30秒以上の大長考するくらい残したいと思った萬子の両面を落として行ったのだろう。
純粋に競技として勝ちたいのならば役満を崩して両面残しの方が有利と考えていたにも関わらず、だ。
視点を変えれば、主人公の座は譲らない、といったところか。
でもそれ、言葉を返せば見栄えの良い打牌のために、自身が不利だと思った打牌選択をする、ということだ。普段の打牌でミスらしいミスが本当に現れない選手だけに、ある意味こういった卓外の要素が多井の成績の足かせになっているのではないか、と思わずにはいられないのだ。
多井隆晴、ラス前でライバルリーチが入っているのにチーテン取らない事件
そしてこの事件ですよ
Mリーグ2020 11月3日開催の第二試合
対戦相手は風林火山の滝沢、サクラナイツの堀、パイレーツの朝倉。
これでもか!というくらいの好カードだ。
事件が起きたのは南3局。
多井は上家から出てきた3pをスルーし、1sをツモった。
と、言っといてなんなんですが、鳴かない理由もあるっちゃあるんですよ。
そもそもこれ9pってかなり強そうなんですよね。対面が何故か残り3枚中2枚も持っていますが、そんなんわかるわけない。普通に考えたら対面は1枚も持ってない。大体山に2枚はある。
鳴かなかったとしても面前聴牌する可能性は十分にあるわけですね。
そして朝倉のリーチの考察。朝倉の点棒的に、なんでもリーチの局面なので、愚形リーチかもしれない。それくらいこのリーチのレンジは広い。愚形だったらそもそも押し返した方が有利かも?と思うこともできる。
でも。でもですよ。
目下最大のライバルである朝倉のリーチ。もし仮にツモられようものなら、ほぼほぼ自分がラスの第一候補になってしまう。
そしていくら自分が両面-三面の完全一向聴だったとしても、面前限定の聴牌なんておよそ4巡はかかりますよ。そこからさらに坊主捲りをして捲り勝つことが勝利条件って結構厳しくないですか?
そもそも多井の手牌、これチーしても打点3900あるじゃないですか。仮に脇からの出上がりでも、オーラス朝倉の1300-2600までは耐えられるようになるんですよ。そして自分は400-700以上で2位浮上となる。
鳴いて得られるメリットとしては十分なはずで、鳴きとスルーどちらが有利かと聞かれればほとんどの人は鳴きを選択しそうである。
でも多井はチーを選択しなかった。多井程の選手が感情の昂りで判断ミスをする、とは考えにくい。
おそらく足を引っ張ったのは、どこかで主人公を諦めきれなかったことにあるんじゃないか?
これ、もし面前での聴牌を遂げたら跳満ツモになっても全くおかしくないんですよ。そしたらオーラス満貫でトップが捲れるようになるんですね。
そんなことになったら多井はヒーローじゃないですか。
心のどこかで、こういった思考が頭をもたげて、チーテンスルーという判断を生み出してしまったように思えるのだ。
多井隆晴よ、最強であれ
繰り返しになりますが、僕の中でMリーグの最強選手は多井なんですよ。誰が何と言おうと。
だからこそ多井には最強選手としてのロードを突き進んで欲しい。それこそ2020までのスコア合計1000超えるくらいの成績を出すくらいにぶちかまして欲しいのだ。
なんなら毎年MVPに選ばれるくらいに。目指すはMリーグの永久殿堂入りじゃ。
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