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21 晩夏光すべて忘れている河口

 句集「むずかしい平凡」自解その21。

 「晩夏」が続きます。

 河口という場所は、河の終点でもあり、また河が海に注ごうとする新たなに生まれ変わる場所、そんな雰囲気があって、なんとなくそういう場所に惹かれる自分がいますね。

 河が河であることをすっかり忘れ切って、すべてを海に任せきっているような状態。夏の夕暮れどき、そんな河口をふっと見た時があって(たしか日本海側の道路を車で走っている時だったと思うのだけれど)、すっと生まれてきた句です。

 あとから「ばんかこう」すべて忘れている「かこう」と韻を踏んでいますね、と言われて、へ?と思った記憶があります。できたとき、そんなことは全く意識していなかった。だから、そういういわれて、ちょっとこの句、あざとく見えるかもしれない、句集にも入れるべきかどうかと迷いましたが、かりに周りにそう見えたとしても、できたときの自分の感触を大事にしようと思い、捨てずに句集に収めました。「晩夏」が続いて読む側には少々くどかったかもしれません。どうかご海容のほど。

 「晩夏」という言葉の響きって、必ず甘く切ないものを引き寄せてくる不思議な力を持っているように感じます。

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