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ボーンブロスを作る材料の選び方①骨


■ボーンブロスに使う骨の選び方

 ボーンブロスを作る上で最も大切なことは、健康な動物の骨を使うことです。
 不自然な飼料や、抗生剤・肥育ホルモン剤などの薬剤を使用した家畜の骨は、健康で安全でしょうか?
 薬剤を使った食材を食べることは、その薬剤を私たちの体に取り込むことと同じです。そう考えれば、少なからず腸内細菌や健康に影響を与えることも容易に想像できます。健康のために飲むのですから、やはり健康な骨から作りたいものです。
では、具体的にどんな骨を選べば良いのでしょうか?
 ボーンブロスと言えば、グラスフェッド牛の骨・自然養鶏の鶏ガラを使ったレシピがポピュラーですが、山が豊かな日本では、保健所の許可を得て、きちんと衛生管理された施設で処理されたジビエ(鹿・猪)の骨も活用できます。また、循環型農法である合鴨農法の役目を終えた合鴨のガラも、オーガニック農家の田んぼで育ち、薬剤不使用はもちろん安全な飼料で育っているケースがほとんどですから、季節限定の貴重な骨として使いたいものです。
 豚や猪の骨を使うと、濃厚な「豚骨スープ」になります。豚骨ラーメンのスープも、添加物を使わず、本来のじっくり豚骨を煮出す製法で作られたものは、ボーンブロスと言えます。
 魚のあら汁は、日本が昔から活用して来たフィッシュボーンブロスです。ヨウ素が含まれており、甲状腺ホルモンの分泌を安定させたり、腎臓の解毒を促進するはたらきを期待できます。煮出し時間が短いので、作りやすいのですが、海洋汚染の問題や水銀の蓄積を考えると、毎日そればかりを飲むのは考えものです。
 それぞれの骨ごとに特徴がありますが、同じ骨ばかり使うと、どうしても飽きが来ます。ですから、色々な骨を使ってローテーションできるのが理想です。
 いずれの骨を使うにしても、その動物がどのように育ったものか、どんな飼料を食べていたかがわかるものであることが大切です。その上で、健康で安全な骨であるかを判断しましょう。
 そして、牛・鹿・豚・猪・羊など、骨の径が太いものは、切って骨髄が見えた状態で煮込む必要があります。ホームセンターで売られている塩ビパイプ用ノコギリで切ることは可能ですが、大変な重労働なので、スープ用に予め切ってあるもや、スペアリブ用の骨付き肉を買うのが良いでしょう。
 田舎に住んでいたら、鹿や猪の骨付き肉を、猟師さんからもらえることがあるかもしれません。そういった骨を使う場合に、知っておいていただきたいことがあります。食肉として販売できるジビエ肉は、保健所の許可を得た施設で、衛生的に解体処理される必要があります。そして、いわゆる鹿肉や猪肉の臭さというのは、主に血抜きが不十分であった場合と内臓を出すのに時間がかかった場合に発生します。ジビエ肉の解体業者は、搬入した獲物の体温を測ったり、内臓の状態をチェックして、病気がないことを確認してお肉にしています。そういった知識のない人が処理を行っている場合、匂いや美味しさの問題だけでなく、安全面での問題もあるので、もらう側もそれなりの自己責任が出てきます。
 ですから、自分でも正しい知識を持って、もらうお肉や骨の良し悪しを判断する必要があります。その部分さえクリアできれば、地元の山の恵みを生かせることは、大変素晴らしいことです。
 ジビエ肉の衛生的な捌き方について、更に詳しく知りたい場合は、垣内忠正・林利栄子著「美味しく食べるために狩をする!ジビエハンターガイドブック」(応用芸術研究所.2017年)が、一つの指標として役立ちます。