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骨を煮出すことによって、消化吸収を効率良くできる

 実は古代の人間に限らず、現代でも骨髄を食べる食文化があります。オッソブーコというイタリアの郷土料理は、仔牛の骨つきスネ肉を弱火でじっくり煮込んだもので、肉はもちろんのこと、骨の髄をスプーンですくって食べます。更にシンプルに、ヨーロッパ各地やアメリカでは、牛の骨を割ってオーブンで焼き、骨髄を食べる料理が存在します。
 「なーんだ、それならわざわざ時間をかけてスープにしなくても、粉末にした骨髄を食べたら良いじゃないか」と思ってしまいますが、骨髄や肉をそのまま食べた場合は、コラーゲンやたんぱく質を私たちの体の消化機能によってアミノ酸レベルに分解しなければならず、食べた分をどれくらい有効活用できるかは、その人の持つ消化能力や消化酵素の量によって影響されます。
 しかしボーンブロスでは、長時間骨を煮出すことによって、コラーゲンが加熱・加水分解されて吸収しやすいゼラチンの形に変わり、スープ中に溶け出します。ゼラチンは加熱すると更に低分子化されてコラーゲンペプチドの手前まで分解されます。(コーラーゲンペプチドの状態が最も吸収されやすいと言われていますが、ペプチドまで分解するためには、酵素が必要です。)
 ちょっとわかりにくいですが、コラーゲンが分解されて細かくなったものがゼラチン、更に細かい分子になったものがコラーゲンポリペプチドで、これらは栄養素としては全て同じものです。同様にタンパク質の構成要素は各アミノ酸に分解されてスープ中に溶け出すので、ボーンブロスはその消化の段階を省くことができ、体調や腸のコンディションに影響されることなく、効率良く吸収できるのです。

 因みに、煮出した後の髄も食べられます。牛や鹿など、径の太い骨でボーンブロスを手作りされる方は、是非煮出し後に骨の中に残っている髄を食べてみてください。髄の何とも言えないまろやかさを味わうためには、煮込み時間が短い方が良いのですが、長時間煮込んだ後でも食べることはできます。