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岐路と思えばいつでも分岐点

家の近くにカフェができたよ。
すぐ近くなのにびっくりするほど山の中。
コーヒーを飲みながらお店の外のベンチに座っていると
鳥の鳴き声しかしない。
目の前のため池で魚が跳ねて波紋を作る。
少し暑い毎日だけど涼しい風が吹く。
いいロケーション。
羨ましいな!

昨日、オープン当初からbonbonを支えてくれていたスタッフが仕事を辞めました。今朝、静かな店内で1人しんみり。
4月だったかな、スタッフとの面接(時折みんなとしている)で彼女と外に座って向かい合って、最近どう?みたいな事を話していたら突然「今月で辞めさせてもらおうと思ってるんよ」と言われて、持っていたコーヒーを左膝にこぼしてしまった。それからもずっと震えてコーヒーがこぼれ続けてたな。

体力的な事と、家庭の事情。職場の働き辛さもあったのかもしれない。
「すぐには困るからもう少し頑張ってもらえないだろうか?」
「じゃぁ6月いっぱいで」
そんな約束をして仕事に戻った。

なんとなく予感はしていた。
働き方改革として私自身が時間配分を模索している最中だったし、仕事量が膨大な彼女の負担を減らしたくて若手のスタッフに彼女の仕事を振っていたところだったし、noteには書ききれないほど些細な事象が積み重なっている時期だったので面接しないとなぁと思いながら過ごしていた。
少し遅かったな
そう思って悔やんだ。
スタッフの体調やメンタルの揺れは人一倍敏感に察知する神経質な性格なので、どこか働き辛さを感じていることはわかっていたのに、話をするタイミングを逃してしまった。早く話したからといって思いは変わらなかったかもしれないけど。
労働時間や働き方を変えて続けていける道もあったかもしれない。もっと話せばよかったと後悔は残る。

お店を開く前のお家パン屋の時代にお客様で買いに来てくれていた彼女と縁があって仲良くなって、お店をオープンする時に一緒に働いて欲しいと声をかけた。すごく喜んでくれて、私の10年来の友人と3人でスタートすることになった。オープン前日まで店舗内装が出来上がらないという状況で、パンをちゃんと焼いたこともない2人にパンの分割や成形を強引にお願いして焼き続けた何日か。今もインスタグラムの動画にナッツフィリュイの生地を分割している2人の姿が残っているけど、一生懸命で初々しい。

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スタッフが入れ替わりながらも3人が軸でお店を続けて来れたな。
それは確か。私1人では1年持たなかった。彼女のおおらかで前向きな笑顔と「わこさん大丈夫!」に何度となく助けられてやってこれた。今も泣きそうだ。私が焼くパンのファンで働き始めてくれたので、日々一緒に食べる朝ごはんを嬉しそうに幸せそうに食べてくれた。その表情と「美味しい!」にどれだけ自信をつけてもらっただろうか。焼いても焼いても自信が持てない私に毎日「美味しいねー!」と言って自信をつけてくれた。今になって痛感する。
今のお店があるのは彼女のおかげだ。

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私と同じ頑固な性格なので、仕事をしながらカチンとすることも彼女に対する悩みもたくさんあった。パンを落としてしまっても「ごめーん」で終わってしまうし、塩の入れ忘れも何度もあったし、オープン当初お店の買い出しでお店の経費でジュース買ってきたこともあったな。私のこうして欲しいって指示を、こうしたほうがいい!いやでも、、と素直に聞き入れてくれなくてモヤモヤしたことも多かったけど、それを何倍も上回るほどの仕事の仕方と一生懸命さとなんでもぱぱぱっとこなしてしまうセンスがあって、優しさがあって、この人がいないと無理だなと脱帽してばかりだった。


営業日はレジで120人ほどの接客を笑顔でこなし、お客様が「ジュンさん」て呼ぶほどの愛されよう。彼女に会いたくてお店に来てくれているお客様もたくさんいたはず。
そしてお客様の顔を覚える才能。
「わこさん○○さんだよ」「わこさん○○の方だよ」とこっそり耳打ちをしてくれる。そして私が笑顔で「わぁいらっしゃい!」と言う繰り返し。
絶望的に人の顔が覚えられない私にはこれがありがたい。かかってきた電話の声で「時々これらる○○の方だと思うのよ」なんて、電話先の声でお客様を把握できる。才能だ。
仕込みの日はあんこを炊き、カスタードを炊き、サンドの具材を作り、フォロスティングを練り、笑顔でタルト生地を伸ばす。膨大な仕事量をひょいひょいとやってのける。自分の仕事をしながら周囲のサポートもできる。たくさん抱えても大変って言わない人。

よく泣く。笑いすぎて泣く。人との別れ期に泣く。昨日の自分のラストも朝ごはんの時にずっと泣いていた。

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最後のレジのお客様の時も泣いていたって聞いたな。感性が豊かで優しい人。彼女のサポートがあるから新しいスタッフが入っても安心して仕事ができる。新しく入るスタッフのガチガチの初日から1週間を何気ない会話で緊張をほぐしたり輪に入れたりしてくれて、助かった。
ここまで書きながら、うちの店、これから大丈夫か?
なんて思い始める私です。
大丈夫大丈夫。
今度は自分で自分に言わないとな。
大丈夫大丈夫。
彼女ほどお店にとって太陽のような存在にはもうきっと出会えないと思う。
感謝しかないな。
ほんと、感謝です。
ありがとうジュンさん。
あなたのこれからが幸せで笑顔である事を願ってます。

またお昼ごはん一緒に食べに行こう。



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