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香りの記憶

先日、もうじき日本に帰る友人の家で開催された「放出会」に行ってきた。
文字通り、スーツケースには入りきらないのでもう持って帰らないものを一挙に「放出」する会のことで、いろいろなものを譲り受けた。

余ったハンドクリーム、刺繍セット、ボールペンの替え芯などの雑貨類から、さらには食べきれなかった日本食まで。「念のため」と思って持ってきたほど余るんだよねえと話す友人を横目に、「うーん、あと1年あるし念のため…」と、いろいろなものを袋に入れていった。

一番ありがたかったのは、洋服類である。わたしは昔からどうも海外の服がイマイチ合わなくて、なかなか服が買えない。袖が長すぎたり、サイズが大きすぎたりして、ちょうどいいサイズ感の服になかなか出会えないのだ。友人は私と同じくらいの背格好なので、冬物を中心にいくつか服をもらってきた。これで今年の冬も暖かく過ごせそうだ。

帰宅後、もらったものを試しに着てみようと袋から服を取り出したら、ふわっと友人の香りがした。こんな言い方をしたらちょっと変な人みたいだけど、これまでいつも隣にあった香りだった。その香りを吸い込んだ瞬間、これまで友人と過ごした日々のことがわーっと思い出された。

このように香りがきっかけになって、あの日、あの時、あの場所の記憶が一気に立ち上がってくることがある。去年こちらに来て間もない頃、スーパーでスパイスやお肉の匂いが混ざった独特の香りをかいで、「ああー、戻ってきたな…」と感じた。パン屋さんに行った時は、学生時代に初めて来た時のことを思い出した。右も左も分からず不安だったこと、未知の国に来たワクワクドキドキした気持ち、ひと夏の大冒険…。そんな記憶までよみがえってきた。なぜパン屋だったのかは分からないけど、無意識のうちに記憶にすり込まれていたのかもしれない。(あれ、全部食べ物のにおい?)

そういえば、日本にいたときよく見ていた「世界はほしいモノにあふれてる」でも、ネックレスの飾り部分に香り玉を入れておき、忘れたくない瞬間に出会ったときにその香りをかぎ、香りの記憶にするというネックレスが紹介されていたこともあった。

服を譲ってくれた友人とは、海とかアウトドアとかお買い物とかカフェとか、2人で色んなところへ遊びに行った。好きなものや趣味が一緒で、冬はストーブに当たってお茶を飲みながら、いつまでもお喋りして、本当にたくさんの時間を一緒に過ごした。当たり前のように隣にいるこの生活が、ずっと続くんだと思っていたけど、そんな彼女もあと2週間くらいで帰国してしまう。ふんわり香る服を畳みながら、せっかくもらったけど、このまま着ずにとっておきたいなと、ちょっとしんみりした。


今回note美術館から画像をお借りしましたが、日本ではそろそろキンモクセイの季節ですかね。まだ早い?
秋になると近所のおうちの庭のキンモクセイがたくさん咲いて、朝学校に行く時に自転車で前を通ると、ふんわりと甘いキンモクセイの香りがしたものでした。その時からずっとキンモクセイの香りがすごく好きで、大人になってからキンモクセイの香水を買ったりもしました。でもやっぱり、あの通学路のキンモクセイの香りこそ、わたしの中でのキンモクセイだなあ。


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