鵜沼豊
宇宙の大きさは無限か有限か
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宇宙の大きさは無限か有限か

鵜沼豊

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上の図は宇宙の始まりから膨張によって宇宙が広がっていく様子を表したよく目にする図ですが、勘違いを生じやすい図とも言えます。宇宙が一点から始まり、有限の大きさで黒い背景の中に広がっていくように描かれてます。宇宙が膨張していることは既に常識となっていますが、この図は「宇宙全体」の様子ではなく我々が「観測できる宇宙」が時間と共に広がっている様子を表しているものだそうです。「観測できる宇宙」と「宇宙全体」は違うのでしょうか。

よく宇宙の膨張は風船の膨張に例えられますが、風船が膨張すると風船の表面の2点間の距離は広がっていきます。一様に広がっているとすると、2点間の距離が遠いほど距離が広がる速度が速くなります。つまり離れる速度が距離に比例するので、超超巨大な宇宙規模の風船を考えるとある距離以上離れた2点は光の速度を超えて遠ざかることになります。相対性理論では物体の速度は光の速度を超えることはできませんが、空間は光の速度を超えて広がることができます(勿論風船は物体なので光の速度を超えることはできません。風船は空間を説明するための例えです。)。光の速度を超えた風船の領域からは光は我々に届きませんから我々に何の影響も与えないので無いに等しいとも言えます。でも無いわけではないのです。

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我々に観測できる風船の表面(光速度を超えない膨張速度の領域)は風船の全表面の一部です。では、風船全体の表面の広さはどうなのでしょうか。風船全体の表面の面積は明かに有限です。でもそれは風船が丸いからです。つまり風船の表面が外側に凸に曲がっているからです。もしも風船の表面が平坦だったら、風船の表面の面積は無限大です。

表面が平坦か曲がっているかは三角形を書いてみるとわかります。三角形は3本の直線からなります。風船の表面に引く直線を2点間に系をピンと貼ってできる線であるとすると、平坦な時は三角形の内角の和は当然180°になります。球形をしている場合は180°より大きくなります。実は180°より小さくなる表面の曲がり方があります。馬の鞍のような表面です。馬の背の方向には下に凸で、背を跨ぐ方向には上に凸になるような面です。三角形の内角の和が180°の時、面積は無限大です。180°より大きい時は面積は有限です。180°より小さい場合も無限大です。

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風船の表面は2次元ですが我々の宇宙の空間は3次元です。3次元空間の曲がりは図に表すのが難しいですが、三角形の内角の和での分類は同じです。180°より大きければ宇宙の体積は有限。180°なら無限大。180°より小さくても無限大です。

実際、我々の宇宙が平坦か曲がっているか三角形の内角の和の測定が行われています。最新の結果はほぼ180°です。従ってこの宇宙の大きさは無限大!

いやいやそう簡単に結論を出していいのかい、と言われそうです。(世の中には無限が嫌いな人が多いのです。)わずかに180°より大きいが測定精度に限界があり測れていないのでは。確かにそれは否定できません。観測できる宇宙の範囲では180°だが、宇宙ももっと広いから他では180°より大きく曲率は正で、宇宙全体では有限でなのでは無いか。それも確かにわかりません。測りようがありません。でも宇宙原理という考え方があります。宇宙原理とは我々は宇宙の中の特別な場所には居ないという考え方です。これは人類の歴史の中で何度も気づかされてきた考え方です。大地は平坦で我々は平板な大地の中心に居るという古代の考えから、大地は球であり球の表面に中心は無いという事実へ。地球の周りを星が回っているという考えから地動説へ。太陽系は銀河の平凡な一部。銀河集団の分布は観測可能な範囲でどこも同じ。

現在我々が観測可能な宇宙は距離にして138億光年までです。宇宙原理が正しいとすればその138億光年先の位置でも半径138億光年の範囲で宇宙は平らであることになります。その先の138億光年、その先と。従って全宇宙は平らであり無限大の大きさを持っていることになります。観測事実と宇宙原理から無限大の大きさの宇宙が結論付けされますが、それで問題がなければそのまま素直に受け入れて考えるべきではないかと思うわけです。
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無限大の宇宙が膨張拡大しても当然同じ無限大です。従って時間を遡って無限大を縮小しても無限大ですから、宇宙の大きさは常に無限大ということになります。宇宙は始まりから無限大の大きさを持っていたことになります。無限に伸びた物差しを考えた時、物差しを縮めていっても物差しの長さは無限大で物差しの目盛りの間隔だけが縮んでいく感じです。

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私が翻訳したホーキングとエリスの「時空の大域的構造」によれば、ブラックホールの中心に特異点があるように宇宙は時間を遡ると特異点に到達することが証明されます。無限大の密度であるが本当に点なのでしょうか?英語のsingularityは特異点と訳されれますが英語には点という意味は含まれていないのです。

実は宇宙誕生が点であり且つ無限の大きさを持つ矛盾はマルチバースのインフレーション理論によって解決されます。インフレーション理論は宇宙誕生初期に観測可能な宇宙が指数関数的に爆発的に膨張したこと主張します。これは現在の宇宙の均一性、銀河を生み出す僅かな揺らぎの存在、ビッグバンの高温高密度状態のエネルギー生成原因等を説明することができます。実はインフレーション理論が正しいとすると宇宙から子宇宙が次々と生み出されることが論理的に示されます。子宇宙の時空間は親宇宙の時空間とは異なります。下の図に示すように、子宇宙は親宇宙の一点から始まり親宇宙における光の速度で(図で45°の線)で時空間を広がります(光円錐という)。ところが子宇宙における時間ゼロの時点における空間は親宇宙における時間と空間の両方に広がった親宇宙における光円錐となります。つまり、子宇宙における時間ゼロの空間は無限に広がっていますが、親宇宙では点となります。

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更に子宇宙は無限に生成され、その子宇宙も孫宇宙を無限に生み出します。逆に、親宇宙にも親宇宙があり、祖先は無限に遡れると考えられます。つまり、全てのマルチバースを考えると宇宙は定常宇宙であり、空間だけでなく時間的にも過去と未来に無限に広がっていると考えることもできるのです。

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自然科学カフェ主催 http://naturesciencecafe.blog.fc2.com