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妊娠中の食の好み

春雨サラダのミニトマトを食べていたら、ふと、妊娠中のあの時期のことを思い出した。



妊娠後期、赤ちゃんが大きくなって胃が上がり、何を食べても胃もたれを起こしていた頃、同時に妊娠糖尿病の疑いが。

長い間食欲不振で暴飲暴食などした覚えもなく、「糖尿病」と言われても特に心当たりはなかったが、血液検査がある日の朝食で、粉末だし入りの味噌汁を食べたことを思い出した。病院から帰宅後パッケージを確認してみると、やはり砂糖が含まれている。

今思えばそれが原因じゃなかったかもしれないが、当時は本当にそれくらいしか思い当たらなかった。

次の妊婦健診で3回続けて血液検査をして、その結果で妊娠糖尿病かが決まると先生に忠告され、食事制限で血糖値コントロールをし、ストレス発散に低糖質スイーツを食べながら1週間耐え抜いた。

結果、数値ギリギリのところでなんとか回避に成功。でも、実際のところギリギリが油断しやすいためいちばん厄介らしく、まだまだ注意が必要だと念押しされた。

そしてちょうどその頃、なぜだかトマトを無性に食べたくなり、そば茶が飲みたくて飲みたくてたまらなくなった。

スーパーで買ってきたばかりの中玉トマトを待ちきれずに流し台の前で立ったまま食べ、一緒にそば茶をごくごく飲んだ。そば茶にいたっては、そのうち飲むよりも最後の殻を食べるのが楽しみになっていった。「あぁ、早く明日にならないかなぁ。そば殻が食べたいなぁ」なんてことを布団の中、眠る前に思うほどに。

それからしばらくして出産し、1か月も経てばトマトもそば茶も全く食べる気・飲む気にはならず、あっという間に今まで通りの食生活に戻っていった。

あれから2年経ち、今食べているこのトマトはあの妊娠中の時ほど美味しいとは思えないし、そば茶は子供がまだ小さいのもありそばアレルギーが心配で、万が一を考えて家に置くこと自体をやめたので飲んでいない。

他にも肉が無性に食べたくなったり、よくある「妊娠中はフライドポテトを食べたくなる現象」は体験したが、まさかそれに加えてトマトとそば茶をあんなに食べたり飲んだりすると思わなかった。

妊娠前はただの彩りだったトマトと、人生で一度しか飲んだことがないそば茶のその2つだったから。


妊娠中は思ってもみなかったことが色々起こる。

特に、あれが食べたくなったり、これが食べたくなくなったりと食の好みがころころ変わり大変だった。

普段食べない物の中でも、「これは赤ちゃんが欲しているから食べたくなるんだ!」と思い、前向きに食べられる物もあれば、まさかフライドポテトは欲していないだろうから、食べると罪悪感でいっぱいになる物もちらほらと。

トマトとそば茶はよく分からないが、トマトは野菜だし、そば茶は日本に昔からある物だからそんなに体には悪くなさそう。そう思い安心して食べ続けた。

妊娠糖尿病との因果関係はさっぱり不明だが、むしゃむしゃ食べていてもあの日の血液検査以降尿に糖が出ることもなかったからかなり調子にのって食べていた。

もしかしたら血糖値を下げるのに一役買ってくれたのかなぁなんて思ってみたりもしたが、たまたま運が良かっただけだろう。



そうしてここまでトマトもそば茶も思い出して絶賛していても、悲しいかな、やっぱり全然食べたくならない。


あぁ、すっかりただの彩りに戻ってしまったトマトよ。


君のことは食べはするけれど、もうあの頃の美味しさに出会えないと思うと、君を箸でつまんで口まで運ぶのが、すごく重く感じるよ。



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