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2023/2/15 日銀総裁人事と金融政策への影響
★ 日銀総裁後任に、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する、人事案を、2/14国会に提出、衆参両院の本会議での採決を得て、内閣が任命する事となりました。
今後の金融政策への影響を簡単にまとめてみました。
① 政府は植田和男氏を総裁に指名
岸田文雄首相は日本銀行の黒田東彦総裁の後任に、元審議委員で経済学者の植田和男氏を指名した。2人の新たな副総裁を含めたバランスの取れた布陣からは、政策の継続性と市場の安定確保を図りつつ、過度な緩和策からの修正を慎重に進めたい政権の意向がにじむ。
次期総裁に植田氏を起用するとのニュースを受けた直後の金融市場は、予想外の人選による金融政策運営の不透明感の強まりが意識され、円高・債券安・株安で反応したが、間もなく冷静さを取り戻した。植田氏が10日夜、記者団に対して現在の日銀の金融政策は適切として「現状では金融緩和の継続が必要だ」と発言し、早期正常化への警戒感は後退した。
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② 日本の「ベン・バーナンキ」
★ 植田和男氏は、ベン・バーナンキ元FRB議長とほぼ同じ時期に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で学んでおり、金融経済を専門分野としています。
サマーズ元米財務長官は「日本のベン・バーナンキ」と考えて良いだろうと評したとの事です。出典元 Bloomberg
ベン・バーナンキはご存じの通り2022年にノーベル経済学賞を受賞した、有名な経済学者です。その人物に準えられたとしては、植田氏は優秀な人物であることには間違いないでしょう。
2022年のノーベル経済学賞に選ばれたベン・バーナンキ氏はアメリカ、ジョージア州出身の68歳。
2006年にはアメリカの中央銀行にあたるFRB=連邦準備制度理事会の議長に就任し、2014年までの2期8年にわたって、金融政策のかじ取りを担いました。
2008年のリーマンショックのあと、世界的な景気の悪化に歯止めをかけるため、政策金利を事実上のゼロ%に引き下げる「ゼロ金利政策」を実施するとともに、金融市場に大量の資金を供給する「量的緩和策」を打ち出しました。
FRBの議長に就任する前は、アメリカのプリンストン大学の教授などを務めました。経済学者としては、1930年代の世界恐慌の分析を行い、銀行の破綻を含む金融危機が実体経済にどのような影響を及ぼすかなどについて、研究を行いました。
スウェーデンの王立科学アカデミーは、バーナンキ氏の業績について、銀行の預金が引き出され金融機関が破綻すると、貯蓄が投資に振り向けられなくなり、経済危機が深刻化し長引くメカニズムを明らかにしたとして、評価しています。
③ アベノミクス継承となるか?
★ アベノミクスは故安倍元総理が、高橋洋一嘉悦大学教授を通じ、ベン・バーナンキの金融政策と理論を日本経済にフィットさせた経済政策と言われております。金融、量的、規制を緩和し経済を活性させます。
一番の焦点は「政府と日銀の共同声明でアベノミクス基本路線継承の発言があるかどうか」です。
もし、共同声明で「金融引締めニュアンス」を感じる発言となれば、利上げ観測から株価は売りが優勢となり下落、企業の時価総額が目減りすれば、将来継続的に収益を得られる為の先行投資を鈍らせる結果となり、利益剰余金を社員分配や設備投資に回さず「内部留保」してしまい、経済活動は鈍化に傾くでしょう。
国民に与える影響が非常に大きい為、多くの方が注目する事になります。
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④ 日本銀行の基本スタンス
日銀のHPに掲載されている金融政策の基本スタンスをおさらいします。
1.日銀の2023年度の物価見通し
★ 除く生鮮食品で+1.6%(前年比)、日銀は現在がピークと分析。
しかし、2023年の実質GDP成長率+1.7%は希望的観測に思えます。
2/14発表、2022年度の実質GDP成長率は1.1%でした。
※データ参照 内閣府HP
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2.物価安定の目標
★ 目標は Sustainable Inflation 持続可能なインフレーション
安定的な経済成長の為には、需要の増加が必要で、結果として程良い物価上昇が起こる。
「雇用が最大化された時の消費者物価指数の統計により、前年対比が、約2%前後である」という事で世界標準の物価目標とされています。
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3.金融緩和と量的緩和
★ 日銀が市場の国債を買い入れる事によって
金融緩和となり、企業の設備投資、経済活動を促し、雇用が増える。
量的緩和となり、市中のお金の量が増え、国内の需要と所得が増える。
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⑤ まとめ
● 現状で、次期総裁候補の植田氏は「金融緩和の継続は必要」との発言。
● 直近のGDP成長率から推測すると、安定的な経済成長とは程遠く、植田新総裁体制となっても「金融緩和の継続は必要」の基本スタンスは継承すると思われる。
● 日銀の黒田体制での2023年の消費者物価指数の予想は+1.6%は、金融緩和の継続を織り込んだ数値で、インフレは鈍化すると予測され、早急な金融引締めは行われないと考えられる。
● しかし、長期国債の大量買入れによる長短金利操作(YCC)は微調整には向かない金融政策として、修正が進む可能性はある。
● 日銀だけに焦点が当てられますが、今も昔も「政府の方針と景気対策次第」と言えます。金融緩和の副作用ばかりが目立つ事となると、岸田首相の判断によって、日銀に金融引締めの圧力をかける可能性もある。
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