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2023/3/11 今週の米国経済指標まとめ

★ 今週のFRBパウエル議長の連邦議会発言、米国の重要経済指標を簡単にまとめてみました。日本では黒田総裁任期最後の金融政策決定会合がありました。


① パウエル議長 議会発言 3/7

★ 3/7に開かれた連邦議会でのパウエル議長の発言が「タカ派発言」として注目されました。

 次回3/22FOMCで、利上げ幅が0.5%と加速する可能性を示唆。発言を受けて、ドル高、米国株下落が加速しました。

★ 発言のまとめ

1.今後のデータ次第では「利上げのペースを加速する用意がある」
2.雇用や個人消費、インフレの動向について「1カ月前に見られていた軟化傾向が一部逆転した」
3.次回会合で再び0.5%に引き上げる可能性を示唆した。
4.深刻になった人手不足が賃上げ圧力となって高インフレを下支えする可能性を示唆。
5.10日に公表される2月の雇用統計、14日に出る2月の消費者物価指数(CPI)をみて今後の金融政策を判断する。

パウエル議長



② 2月雇用統計 3/10

非農業部門雇用者数 +311,000人(予想+210,000人)
失業率 3.6%(予想3.4%)
平均時給増減 +4.6%(予想+4.7%)

★ 失業率と平均時給が市場予想を下回り、市場参加者の積極利上げ観測後退し米国債権利回り低下、ドル売りドル安となり一時134円70銭程に。

★ 雇用者数は市場予想を上回ったが、雇用統計は遅行指標に分類される為、「既に折り返し地点を超えた」とする見方もあるが、FRBが利上げペースを加速させるかどうかを判断する上で強弱入り交じる内容となった。

出典元 nikkei225

③ 日銀金融政策決定会合 3/10

★ 日銀黒田総裁任期における最後の日銀金融政策決定会合が行われました。質疑応答の内容を簡単にまとめてみました。

● 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用について現状維持を全員一致で決めた。

● 2%の物価目標の持続的・安定的な実現に至らなかったのは残念だ。

● 日本経済の潜在的な力が十分発揮されたという意味で金融緩和は成功だった。

● 当面は現在の金融緩和を続けて企業が賃上げしやすい環境を整えていくことが重要だ。

● 15年続いたデフレのもとで企業や家計に醸成された、賃金・物価が上がらないという一種の慣行、ノルムは予想よりも強かった。



 今回の決定内容について。
 長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用について現状維持を全員一致で決めた。景気は資源高の影響などを受けつつも、感染症の抑制と経済活動の両立が進むもとで持ち直している。物価上昇率の先行きは政府の経済対策に加え、企業の価格転嫁の影響も薄れることからプラス幅を縮小していく。

 異次元緩和の10年を振り返った感想は。
 経済・物価を押し上げ、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった。女性や高齢者を中心に400万人を超える雇用の増加が見られたほか、若年層の雇用環境も大幅に改善した。ベアが復活し、雇用者報酬も増加した。
政策には常に効果と副作用がある。日銀は副作用に対処しつつ、効果的かつ持続的な金融緩和を講じてきた。長きにわたるデフレの経験から賃金や物価が上がらないことを前提とした考え方や慣行、いわばノルムが根強く残っていることが影響して2%の物価目標の持続的・安定的な実現に至らなかったのは残念だ。
ただ、労働需給の面では賃金が上がりやすい状況になりつつある。春季労使交渉では労使双方からこれまでと違う声が聞かれ始めており、前向きな動きを期待している。今後も金融緩和を継続することで、時間がかかるとしても、賃金上昇を伴う形で物価目標を実現することは可能だ。

 異次元緩和は成功だったのか。
 日本経済の潜在的な力が十分発揮されたという意味で金融緩和は成功だった。他方、長期的な潜在成長率を決めるのは生産年齢人口と技術進歩率だ。それは金融政策が直接的に影響するよりもっと構造的な問題だ。

 次期総裁に植田和男氏を起用する人事案が承認された。
 昔から個人的によく知っており、様々な場で議論してきた。日本を代表する経済学者で、審議委員の経験から中央銀行の実務にも精通している。組織をまとめ、物価と金融システムの安定に向けて手腕を発揮すると期待している。

 2%の物価目標達成に何が必要か。
 賃金・物価が上がらないというノルムは変化しつつある。賃金上昇を伴った2%の物価目標の達成が少し近づいてきた。ただ、様々な不確実性があり、当面は現在の金融緩和を続けて企業が賃上げしやすい環境を整えていくことが重要だ。

 2%の物価目標は妥当なのか。
 ほぼ全ての先進国が2%の物価目標を掲げて金融政策を運営しており、目標は適切だと思っている。副作用よりも経済に対するプラスの効果がはるかに大きかった。

 2%の物価目標達成を阻んだ想定外の出来事は。
 石油価格が2015年から16年初めにどんどん下がり、物価をかなり押し下げた。新型コロナウイルスの感染拡大も非常に大きな下押し圧力になった。

 消費増税の影響も大きかったのか。
 増税後の落ち込みや実質所得の下押しが物価に影響したのは事実だと思うが、長期的にみれば財政の信認が高まり、消費者の不安が減少する面もある。

 市場との対話に問題はなかったか。
 コミュニケーションで一番重要なのは、何を目標にどのような政策運営をしようとしているかを明確にはっきり伝えることに尽きる。私としては努力してきたつもりだが、必ずしも完全に市場とコミュニケートできたと言うつもりはない。

 国債市場のゆがみが解消していない。
 イールドカーブの形状は総じてスムーズになっているが、ゆがみが解消するまでには至っていない。市場の金利形成が定着するにはある程度の時間を要する。機動的な市場調節運営を続けることで、市場機能は順次回復・改善していく。

 副作用も次期体制に引き継がれる。
 金融政策で経済にプラスの影響を与えようとしているときに金融システムや金融市場が適切に機能しないと、政策効果を発揮できない。市場が機能するように心がけることが一番重要だ。金融機関の信用仲介機能は十分発揮されてきた。

 国債と上場投資信託(ETF)の大量購入を反省しているか。
 何の反省もないし、負の遺産だとも思っていない。

 出口戦略の議論は時期尚早なのか。
 現時点で23年、24年の段階で出口になるとかならないとかを議論するのは適切でない。新しい総裁、副総裁のもとでそういう状況になったときに適切な出口に向かうことになる。そのときの経済・金融情勢に合わせて適切にやると思う。

 総裁就任前にデフレの責任は日銀にあると語っていた。
 インフレやデフレが金融政策で全て決まると言ったわけでない。デフレの背後には金融危機の収束過程や異常な円高など様々な理由があった。ただ、物価安定に向けて最善の努力をする責任が中央銀行にあると思っているのは今でも変わらない。

 期待に働きかける政策に誤算はあったか。
 期待の役割が大きいのは、私が独自で言ったわけではなく、全ての金融論の先生が言っている。15年続いたデフレのもとで企業や家計に醸成された、賃金・物価が上がらないという一種の慣行、ノルムは予想よりも強かった。

 金融政策は万能でなかったということか。
 物価を決定するファクターは金融政策だけでない。ただ、物価を安定させる責務が中央銀行にあるのはどこの国でも同じだ。日銀も物価の安定を通じて健全な経済発展に資することを政策の基本目的としている。

 ノルムが変化したと判断するには。
 賃金上昇率は極めて重要なファクターだが、その背後にある経済のメカニズムや賃金・物価の状況、今後の見通しなど様々な状況を総合的に判断する。デフレ期に醸成されたノルムが完全に消滅したかはもう少しよく見ないといけない。

出典元 日本経済新聞 2023年3月10日 19:30

④ 利上げマップ 3/10

★ 3/22開催のFOMC(米国連邦公開市場委員会)での利上げにおいて、0.25%がほんの少し優勢ですが、実質0.5%とも半々といった情勢です。

★ 最終判断基準は、3/14(火) 消費者物価指数、3/15(水) 小売売上高の結果次第となりました。

CMEのFedWatch ツール


CMEのFedWatch ツール

⑤ まとめ


● 今後のデータ次第では「利上げのペースを加速する用意がある」
● 
次回会合で再び0.5%に引き上げる可能性を示唆。
● 今回の雇用統計で指標の「折り返し」の兆しが見え、米国債券利回りが大幅に下落。インフレ率もそうであるが、数値の急激な変動は先の見通しを曇らせ、経済を混乱させる。
● 市場参加者における、3/22開催のFOMC(米国連邦公開市場委員会)利上げ幅予想は0.25%、0.5%と五分五分となり、3/14(火) 消費者物価指数、3/15(水) 小売売上高の結果次第となる。


● 日銀黒田総裁任期における最後の日銀金融政策決定会合で、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の運用について現状維持を全員一致で決めたと発表。

 2%の物価目標の持続的・安定的な実現の為
 企業が賃上げしやすい環境を整えていく為


★ 来週の米国重要経済指標
3/14(火) 2月 消費者物価指数 米国
3/15(水) 2月 小売売上高 米国



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