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その状態で起業するのはないわ〜

今回はがっつりマーケティングの話になる。

前回、前々回とちょっと個人的な話を
がっつりしてしまった気がする。

このアカウントはそもそも
マーケティングの話をしたいがために
始めたものだ。

そしてそれを楽しみにしている人もいる。

だから今回は原点回帰だ。

つい先日のことである。

俺は友人であり、弟分的な存在の
大久保くんからこんな話をされた。

「東さん、俺新しく会社建てます!」

ちなみに大久保くんとは
10年来くらいの付き合いになる。

初めて会った時は仕事の先輩。
それから仲良くなり、
一緒に飲むようになった。

その後、その会社を飛び、
巡り巡って俺の部下になり、
(俺の紹介で入った)
それでも飛んだという痛い奴だ。

でもなかなか憎めない奴で、
それ以降も度々飲みに行っている。

ちなみに俺が独立して
2年後に立ち上げた
ライバーの会社を一緒に運営してもらっていた。

もうその事業はバイアウトしたが、
その際にできたお金で
彼は新宿でお店を開き、
結構な金額を稼いでいた人物である。

そのお店のオープンの時も
色々とアドバイスはしたが、
決め手となったのはオリシャンだ。

バカみたいな安い金額で、
バカみたいに高く売れるため、
一本売れればボロ儲け。

多い日には
それが20本以上売れていたらしい。

それでビジネスセンスを
養えていたと思うのだが、、、

彼が向こう見ずで
思慮深い人間ではないことは
経歴からもわかるだろう。

そんな彼から

「東さん、俺新しく会社建てます!」

と言われた時は、

「そうなの?
なんか力になれることならなるよ」

と軽い気持ちで応えてしまったのが、
失敗である。

「僕、エンジニアやってた時期もあるし、
(確かに数ヶ月間エンジニアだったこともあった)
動画の編集もできるし、
(確かにお店の宣伝でショート動画の編集はやってる)
PCにも強いので、
(確かに会った時はPCを扱っている仕事だった)
それらを活かして、複合的な
サービス展開を考えてるんですよ。
ネット関係だったらなんでもできるっていう
会社って強くないです?」

そこで俺は、

「えーと、軸は何にするの?
要はキラーコンテンツは?」

と聞くと、彼は自信満々に

「ネット関係に関わる
すべてのソリューションを提供することです」

と答えたのだ。

いや〜
この時ばかりは
「聞くんじゃなかった〜」
と思った。

マーケティングの世界には

フロントエンド商品
バックエンド商品

という考え方がある。

例えるなら、
ドラックストアの100円の
卵を思い浮かべて欲しい。

たまにドラックストアが
100円で卵を売っているが
なぜか理由を考えたことはあるだろうか?

100円で卵を売って、
採算なんて取れるわけがない。

単体で見たら赤字も良いところだろう。

ただ、来店してもらって、
ついでに何かを買ってもらえたら
それだけで黒字に持っていけるのだ。

特に大きいのが
プライベートブランドの商品だ。

それ単体で利幅が
50%出る商品もあるというのだから驚きだ。

つまり500円の物を売れば、
250円の利益。

卵の赤字を考えても
十分採算は取れるのである。

そして面白いことに、
卵のセールは
毎週決まった曜日に行われることが多い。

あれがなぜかというと、
毎週決まった曜日に
来店してもらうきっかけを作るためだ。

来店してもらう動機さえ
植え付けてしまえば、
あとは勝手に他の商品も売れるため、
決まった曜日にいくら売り上げが
あがるという売り上げ計画が立てられる。

そしてその日にプライベートブランドの商品という、
最も利益が出る
キラーコンテンツ(バックエンド商品)を
目立つ位置かつ購入しやすいように
用意しておくのだ。

ちょっと複雑な話をしてしまったかもしれないが、
ここで重要なのは、

卵がフロントエンド商品で、
プライベートブランド商品が
バックエンド商品だということだ。

フロントエンド商品は
釣りでいうところの撒き餌だ。

大衆に集まってもらうための
餌なのである。

そしてバックエンド商品(キラーコンテンツ)は
利益を回収するための本命商品。

撒き餌に反応してきた人の
ついで買いや衝動買いを促し、
ちゃんと利益を確保できるように
するための商品である。

これには俺も散々騙されてきた。

酷いのが不動産業界だ。

スーモで良い物件を見つけて、
実際に取り扱っている店舗に行くと、
大体何かしらの理由で
その物件の内見を拒否される。

例えばシロアリが出て酷いのでとか、
ついさっき契約が決まってしまってとか、
大家さんが口うるさいので
お勧めできませんとか
本当に色々な理由で断れるのだ。

俺も若い時は
それが撒き餌だったということを
知らなかったが、
不動産業界のマーケティングに携わったときに、
そういうカラクリか!
と気付かされた。

まぁ良い勉強になったのだが、
その話は置いといて。

大久保くんの酷いところは
すでにこういうことが
身に染みているはずにもかかわらず、
サービスの軸を決めていなかったからだ。

「えーと、今のお店って
なんで売り上げ上がってるの?」

と俺が聞くと、

「もちろんオリシャンですよ〜
東さんがアドバイスしてくれたのに
忘れたんですか?」

と答えてきた。

「えーと、じゃあオリシャン以外では?」

と聞くと、

「うーん、あとは満遍なくって感じですかね」

というものだから、
さらに突っ込んで聞いてみた?

「開店する前に、何か一つ売りを
作った方が良いってアドバイスして、
ハイボール飲み放題にしたじゃん?
(お店にあるウィスキーなら
なんでも飲み放題というサービスだ)
なんでだと思う?」

「あーあれそんなに利益出てないですけど、
好評ですよ!
でも、高いウィスキーばかり頼まれると
利益出ないから困るんですよね。」

「いや、それ!
要はそれで来てくれる人がいるわけでしょ?
それで利益上がらなくて良いから!
むしろそれは広告費で、
そこから利益を出すための
オリシャンがあるんじゃんか。
そして上手いこと、オリシャン頼んでもらえるように
動線組んでるんだから、ハイボールの飲み放題で
利益なんて出さなくて良いんだよ」

といったところで、
やっと気づいたらしい。

よくあのお店は潰れずにやってきたものだ。

どんな事業をする上でもそうだが、
この考え方は非常に重要だ。

何かしらの商品を目玉にして、
その後に控えるバックエンド商品で
利益を生み出さないといけないのである。

そのため企業はあらゆる手段で、
形を変えてでも、目玉商品を用意する。

例えば、

・初月無料
・初回クーポン
・利益度外視の商品

本当に色々ある。

俺は以前ウーバーイーツで
商品を注文したことがある。
(配送料を考えると馬鹿らしいので、
ウーバーイーツは否定的な立場だ)

2回目以降使っていないが、
初回の利用は利益なんてなかっただろう。
むしろ赤字だったはずだ。

その時は、
普段1000円以上するラーメンを注文し、
配送料含めて2000円には満たない金額に
なっていただろう。

しかし、初回のクーポンで
300円くらいになったのだ。

こんなの利益なんて
出てるはずがない。

それでも企業はやるのだ。

それはなぜかというと、
継続的に使ってもらえる見込みがあるからだ。

フロントエンドとバックエンドでいうと、
最初はそのクーポン利用が
フロントエンドで、

利便性を感じてもらい、
継続的に利用してもらうのが
バックエンドという感じだ。

でも俺はこの構造を知っているし、
ウーバーイーツなんて
割高なのを知っているため、
それ以降使っていない。

でも、それくらい企業は
本気で商品を売っているわけだ。

その上で大久保くんの話に戻ろう。

大久保くんはそこまで考えてなかった。

何のサービスで集客して、
何のサービスで売り上げを上げるのか。

それを明確に答えられない時点で、
ビジネスとして成り立たない。

これは当たり前の話だ。

この記事を読んでいる向上心のある
あなたであれば大丈夫だと思うが、

もしそこまで考えられてないなら、
その状態で起業するのはないわ〜
って感じである。

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