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『マーケティング「つながる」思考術』連続講座⑩~マーケティングにおける9つの“原理原則”とは~

今回はマーケティング戦略づくりの要諦となる9つの原理原則を解説します。
原理原則を抑えることは戦略の精度や解像度を高めることに役立ちます。また、戦略づくりにおいて「大失敗」を避けることができ、及第点以上を狙いやすくなるでしょう。

9つの原理原則は相互に関連し合っているものであり、各項目をそれぞれ理解すれば良いものでもなく、つながりを意識しておく必要があります。

抽象化されたフレーム間のつながりを理解することができれば、数段上の高い視座で全体を俯瞰できるようになるはずです。ぜひご参考にしてください。


こんな人におすすめ

  • マーケティング戦略づくりに関わりたい方・関わっている方

  • マーケティング戦略の要諦を理解しておきたい方

フレームワークは何に役立つのか

企業戦略はどのように資源配分を行うかにかかっています。フレームワークは資源配分を決めるための手段であり、そのまま戦略になるものではないことに注意が必要です。

また、フレームワークを多く知ることのメリットは、解像度が低いままの課題に対して検査のバリエーションを増やす事ができる点です。できる検査が増えるほど原因の特定がしやすくなり、解決するための処方(戦略や戦術)を講じやすくなるはずです。

原理原則:分解して考えるもの

原理原則①「売上は二種類」

売上には、トライアル売上とリピート売上の二種類以外存在しません

上の図のうち、グレーの部分は企業ではアンコートラブルです。一方で、売上に与える影響も少なくありません。

注意が必要な点は、リピート売上にもっとも影響するのは製品パフォーマンスであることです。

そして、想起率や購入率に影響を与えるのがベネフィットです。
ベネフィットは以下の三つに分類できます。

商品・サービスのスペックによる機能的ベネフィットの差別化が難しくなっている中で、多くの企業において情緒的・自己実現ベネフィットの競争が激しくなっています。一方で、これらは抽象度が高いため競合同士で同じように感じる商品カテゴリーも少なくありません。

多くの企業が情緒的・自己実現ベネフィットを訴求しているいま、改めて機能的ベネフィットに強みのある大企業にアドバンテージがある時代に原点回帰する可能性があると言えます。

原理原則②最寄品と買回品・専門品は「買われ方」が違う

上図のマトリクスで意識すべき点は、商品カテゴリーそのものの関与度の違いです。

カテゴリーマトリクスの上下でマーケティングのやり方が全く異なるため、マーケティングを行う際には商品・ブランドの前にカテゴリ関与度を意識することで、施策を大外しするリスクは低くなるはずです。

原理原則③顧客には「今すぐ客」と「そのうち客」がいる

「今すぐ客」と「そのうち客」はカテゴリー関与度とセットで考えるのが得策です。カテゴリ関与度が低い商品は購入頻度が高いため「今すぐ客」が多くなります。一方で、カテゴリ関与度が高い商品は購入頻度が少なく「そのうち客」が多くなります。

また、会計年度や評価期間は単年度で行われる事が一般的なため、「今すぐ客」から売上を上げることに多くの会社が注力しています。「今すぐ客」の獲得にも取り組む必要はありますが、「そのうち客」の顧客育成もセットで考えなければなりません。

原理原則:マーケティング施策に関するもの

原理原則④施策の効果は相対的なものである

マーケティングには正しい診断と処方が必要です。

マーケティング施策では「これにしか効かない」というものが少なく、「この施策がもっとも効くのはこの課題だが、他の課題にも間接的に効く」ということが起こります。そのため、施策同士を相対比較し自社に最適な施策を選び取る必要があります。

原理原則:「想起」に関するもの

原理原則⑤一番売れている商品は真っ先に思い出される商品である

上の図は、商品選択において、知っている(知名集合)→どんな商品・サービスかわかる(処理段階)→購入の選択肢に含まれる(考慮集合)→真っ先に選ばれる(選好段階)と進んでいくことを表しています。また、想起集合に入れるブランドは、ほとんどの商品カテゴリーで二つか三つとかなり限られています。

マーケットシェアが高いほど利用者が多く、利用者が多いほど想起される確率は高くなります。そのため、シェアNo1ブランドが有利であり、2位以下のブランドはどういう時に想起されるのが望ましいかセグメントを絞って戦う事が欠かせません。

原理原則⑥思い出してもらえるかはプレファレンス次第

先ほど解説した想起はあくまで結果であり、想起を高めるためには、プレファレンスを上げなければなりません。そして、プレファレンスも結果であり、価格・ブランドエクイティ・商品パフォーマンスによってプレファレンスは決まります。

基本的には、価格は安ければ安いほどプレファレンスがあがり(プレミアムブランドやラグジュアリーブランドを除く)、ブランドエクイティ・商品パフォーマンスが高ければプレファレンスは上がります。

三つの要素のうち、どれがプレファレンスにもっとも影響するかは商品カテゴリーによって異なります

原理原則⑦プレファレンスは同一パーセプションの競争で相対的に決まる

パーセプションは認知ではなく「認識」を表します。ニーズが顕在化した時に、そのニーズに答える商品・サービスだと認識されていない限り、想起集合に入ることはできません。また、ニーズが顕在化した時の競争は、必ずしも同じ業界内で戦っているわけではないことに注意が必要です。

上の図において、「一人で楽しめるアウトドアな趣味を見つけたい人」の想起集合にキャンプを入れるためには、キャンプのパーセプションを「一人でも楽しめるもの」に変える必要があります。

この例のように、自社の商品・サービスが想起集合に含まれるためには、想起のトリガー(CEP)と自社の商品・サービスが紐づいている必要があります。

原理原則⑧売上は想起集合に入る事ができるカテゴリーエントリーポイントの数で決まる

先ほど解説した想起のトリガーのことをカテゴリーエントリーポイント(CEP)と言います。CEPの数が多いほど、想起される機会が増え、売上が増えやすいと言えます。

例えば、ランチにおいて「サッと手軽に済ませたい」というCEPと「ガッツリ食べたい」というCEPがあった時に、それぞれのCEPで想起されるお店は異なります。

多様なCEPをカバーすることで、参加できる市場を増やし売上の総量を増やす事ができます。一方で、CEPにおけるパーセプションがあったうえで想起される事が欠かせないため、CEPが多いだけでは不十分です。あくまでCEP・パーセプション・想起は、企業がコントロールできない結果であり、顧客によって決定づけられていることに注意しましょう。

原理原則:顧客の体験や評価に関するもの

原理原則⑨顧客は4回評価する

商品・サービスの購入や利用に際して、顧客には4回の評価タイミングがあります。このフレームワークを活用する事で、どの評価タイミングが競合に比べて負けているのか・勝っているのかを判断することに役立ちます。

4回の評価タイミングは、商品カテゴリーによって重要視される評価タイミングや内容が異なることに注意が必要です。

まとめ

  • 原理原則を理解することで、戦略を立てる上で現状の課題を多角的に診断するために役立てる事ができる

  • 売上は、「トライアル売上」と「リピート売上」の2種類しか存在しない

  • 商品カテゴリーによって買われ方が全く違うため、自信が扱う商品・サービスがどのカテゴリーなのかによって戦略の前提条件が決まる

  • 顧客は「今すぐ客」と「そのうち客」に分けて考える。片方のみ重視すればいいわけではなく、「今すぐ客」の獲得と「そのうち客」の顧客育成が欠かせない

  • 課題に対して施策を絶対評価せず、自分なりの理解をもって施策同士を比較し、最適な施策を選ぶ事が望ましい

  • 一番売れている商品は真っ先に思い出される(想起される)商品である。

  • 顧客は4回評価するため、どの評価タイミングを顧客が重視するか、競合に勝っているか(負けているか)を確認することで、力をいれるべき評価タイミングがわかる

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