2020 所持品リスト no1 文具の話

はじめまして。じょうのうちでございます。 

 もうすぐ30歳を迎えようとする今年、大変大きな断捨離をしました。自分の身の回りにある雑多な物たちと付き合い方を変えて、もっといい方向に歩を進めることができないかと考えたのです。

 昨今ミニマリストと呼ばれる人々が増えてきました。私はそこまで物を減らせるわけではないですが、一方でマキシマリストにはなりたくない。ものの所有には痛みがつきまといます。管理、維持、償却。様々な苦しさがあるのです。そんなことを考えるようになって、どちらかと言えばミニマリスト寄りの人間になってしまった。そんなものとの向き合い方を考えたい。そう思って今年をスタートしました。その中で、私が自分に設けた基準や、定義をここに記そうと思います。物との付き合い方を忘れたときに、自分でも読み直そうと思います。

文具の部

私は教育関係の仕事をしています。入試業務や、子どもの描いてきたプリントにコメントを書く機会が多いので、(まあ文房具スキーであることもあるが)、この文具に関してはいいものを使いたいなあと思いました。そこで選んだのが万年筆です。現在三本を所有しています。万年筆を買おうかなと思っている人がいたら、私は太い軸をお勧めします。下のレビューの通りなのですが、万年筆は軽いので、太いほうが持ちやすく、しっくりきます。

1、モンブランマイスターシュトック146:いわずと知れた名品です。フリマで中古で購入しましたが、これ以上の使いやすい万年筆はありません。フリマでは2万円台で売られていることが多いです。字幅はFですが、EFがよかったなと思います。Fでも太い。値崩れしないのも魅力です。ただ、日本のモンブランサポートが非常に良くないというか、高い。なので、長く使うにはこんきがいるね。

 とはいえ、マイスターシュトゥックは最高の一本なのは間違いなく、かのビクトル・ユゴーもモンブランで作品を書いたそうです。カルロス・ルイス・サフォンの名作小説、風の影での登場が私の心には残っているのですが、やっぱりブランドってありますよね。ちなみに持ってみると、太いのに驚くほど軽い。20gあるかないかだそうです。これで板書案とか作った日にはもう楽しくってしょうがないんですよね。こういう話は教育関係者しかわからなそうだけどさー。ただ字幅が太いですね。私は中古品をメルカリで購入しましたが、それでも2万前後。モンブランはそこが嫌いです。手に吸い付くような太い軸といい、筆圧を忘れるような書きやすさといい限りなく実用的なペンなんです。だからこそ、値段はどうかと思う。普段使いしにくいよね。中古だから平気で胸ポケットにも指すけど、上位モデルの149なんて10万超えます。そんな筆記具使う奴いるんか、という気はします。まあ生徒の中に149ユーザーがいたのには驚いたね。お小遣いためて買いましたって言っていたが、私が中坊のころって何買ってたかな?遊戯王?なんかばかばかしいものにお金使っていたなあと思います。お金があればモンブランを買いなさい、なければためて買いなさいという言葉が示す通り、ローマに至る的なポジションのペンだと思います。最終的にほしくなっちゃうというか。なので検討している人は買ってしまっていいと思います。おそらくこれを超えるペンはないです。

2、ペリカンスーベレーンM800 緑縞軸:こちらもドイツ生まれの名作。2019年に東京の万年筆専門店、キングダムノートで購入しました。中古でいいから品質のいいかっこいい万年筆がほしい人におすすめの店。狭いけどショーウィンドの中に並べてある万年筆を眺めていると何とも言えない気持ちになる。もうなんか幸福だよね。万年筆って魔力があるんですよ。店の紹介はさておき、美しく、太さも素晴らしくしっくりくる。太さはM。赤ペン先生と丸付け、生徒へのコメント用に利用中。ちなみに丸付けの感触は思った以上に悪いです。万年筆って丸を書くことに関してはなれてないみたいなんですよね。でも丸付けの際の腱鞘炎というかそういうのがないのはいいですね。万年筆は筆圧がいらないので、ペンの自重でインクが落ちていきます。

 あとねー、緑の軸がいいんだよ。なんか目にいい感じするよね。エメラルドっぽいっていうか、森林浴っていうか。中にはペリカンのエーデルシュタイン・マンダリンというインクを入れているんですがこれがまた良いの。めっちゃオレンジ。みかんの色。うまそう。オレンジジュース飲みたい感じですよ。これが緑色の縞の間から光にかざしたときだけ見えるんです。びっくりするほど幻想的な見た目になりますです。さながら、日本アルプスの間からのぞく陽光のような優美さがあって、職員室で暇なときに眺めてます。変人だよな。でも教員って変なやつ多いんだよ。頭おかしいんだよな。教師の世間知らずってよく言うけど至言だと思うよ。ほんと。

3、セーラー万年筆 プロフェッショナルギアスリムΣ 銀:細字で買ったが、軸が細すぎて買い替えたい候補ナンバーワン。しかし、きれいなんですよペン先が。セーラーはほかの万年筆と比較するとちょっとパクリっぽいところがあって、クリップはペリカンに、ペン先はモンブランに似ています。かっこいいんですよ。すごく。ただ、なんともいえない使いにくさがある。好きなんだけど好きになり切れない。そんな感じ。きのこの山の軸に近いね。あれもすきなんだけどたけのこの里ほどではない。でも小さいので胸ポケットに入れたりするにはおすすめ。手も出しやすい。おすすめなんだけどね、万年筆は太いほうがいいのよ。女性でもも太軸がいいんじゃないかな。私は男なんですけども、手は小さいほうなんですよね。でも物足りないの。そういう感じのペンです。だから、もっと直径が大きかったら良かった。安物外の銭失いかもしれないなー。しかし書き味はすさまじいです。国産の万年筆の整備能力の高さには驚かされます。アマゾンで買ったのですが、海外産のペンはアマゾンで買わない方がいいです。外れるときは外れるので。しかし国産は高評価ばかり。日本のペンはすごいんだなーと改めて思った次第。

 そんな三本が私の筆記具です。これしかないのって言われると、とっさのピンチに登場するパーカーのジョッターがいます。リフィルだけジェットストリームのパーカー芯サイズ0.5mmを入れているのですが、あると便利。ジェットストリームを嫌いなわけじゃないんだけど下記味はいまいちよ。ジェットストリームスキーなひとすいませんね。酷評じゃないんだよ。でも油性はやっぱ微妙なんだよ引っかかりがある。万年筆の水性インクはもう滑っていくんだよ。羽生結弦的滑走が味わえる。そういうことなんだな。だから油性ペンって愛せないんだよ。でも重要なサインをするときに一本いるよね。銀行のサインとかさ、裏に写さなくちゃ行かんからな。

 昔はたくさんペンを持っていました。こだわりもありませんでした。ペンといえば支給されるゼブラのサラサクリップでしたなあ。まあこれはこれで最高のペンです。国産ってすごいですよね。こんな書きやすいペンが100円前後で変えてしまう。恐ろしいことだと思います。

 でも、万年筆を選んで、また触れてよかったなーと思うんです。アイデアを出すのも、板書も、生徒の推薦書書いたりも、みんなこのペンたちでやります。嫌なんだよね、こういう作業って。でもペンがいいと嬉しいんです。このペンを使える機会ができたって思えるから。かっこいい最高のペンを使っている自分の姿を俯瞰しながら仕事をすると、自然と視線も上向いて、姿勢が良くなってくる。

  さて、万年筆だけで考えに考えて所有しているわけですが、最後のテーマは所有とは何か、ということです。所有とは、喜びである、という考えは誰にでもありますよね。これは、マキシマリスト的な思考だと思います。高校時代の私がそうでした。いつか使うかもしれない。何かに使えるかもしれない。あれもほしい。これもほしい。誰の心にもあることだし、この心の動きはある意味正しい。

 しかし、一日の中の平均使用量を考えてみると、部屋の中には場合によっては1年の中で1回も使わないものがあったのではないでしょうか。いつかいく旅行、いつか行く登山・・・。そこに使えるかもしれない素晴らしい物たちは、果たして自分の幸福をどれだけ高めてくれるのでしょうか。物を持つということは、同時にほかの物を使えなくなること、だと思います。

 何でもかんでも捨てればいい、やめればいいは間違いです。物を減らすことに躍起になるのも違うと思います。重要なのは、何を今愛したいのかではないでしょうか。その愛を最大化するために、人が持てる、もとい愛でられるものは、思った以上に少ないと思うのです。アレクサンダー大王のようなすべてを手中にする覇軍の星に生まれた方なら違うかもしれないが、私のような者には、ペン三本を大事に使って、一週間に一度はボールペンを使う。くらいが、筆記の世界では限界じゃないかと思うんですよね。でも、この4本で私の筆記生活が回るようになり、とても幸福な気持ちでいます。一日の終わりに日記をペンで書くと、美しいインクの滑らかな筆記が、心を元気にしてくれます。

 存分に愛でたい。人は欲張りですが、その欲が拡散する状況は、不満を生むのではないか、そんなことを思います。



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