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【読書感想文】Find Me

【読書感想文】
読んだ本: アンドレ・アシマン『Find Me』(オークラ出版マグノリアブックス)


続編というのもあって短編集の形をとっている。本文の目線は移り変わっていく。短編どうしは数年ごとの年代順になっていて、ふんわりと前話の伏線を回収しながらあのひと夏の後の世界が描かれる。

お話毎に目線("I"で語られる人物)が違うのだけどそのどこか共通点があるとするなら、それは輝くような予感を伴った出会い(や存在)と、そこに年齢(や他の要素)は関係がないということだった。


このお話は、本文が英語圏(もちろん必ずしも英語圏でなくてもいいんだけれど)で書かれているのが前提だと思う。日本を前提にこれと同じような物語を描いたら、クズどうしが何を言っているんだ、くらいの評価になりそうなのが悲しいというか面白いというか。


みんなに後悔や心残りがないわけではない。それでも、ふと目があって、声をかけて、頼りない約束をして、期待するのが怖くて、けれど確かなものにしようとまた一歩踏み出す、そうした3つ(3人)の物語が、私には綺麗なものに見えて優しかった。


私が見た数少ないあなたの夢を読み直したりしました。さよならを恐れて、気まぐれや気の迷いからはっと目が覚める瞬間が怖くて、時間止めたいと願って、それでも手を伸ばした彼らに心のなかで小さな祈りを添えたくなる、世界の煌めきのような物語だと感じました。




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