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せめて私は、それを大切にしたいんだ。

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自分が書いた詩や小説等を集めています。
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2022年1月の記事一覧

【短編小説】ゆるやかな夜の気配

*この作品は、決して明るいとは言えませんが、僕が眠れない夜に読みたいのは、きっとこういう物語です。もし何か感じるものがあったなら、後書きまで目を通していただけると幸いです。 *** 『ゆるやかな夜の気配』 冬は気分が落ち込むけれど、「」たくなっても耐えられた。本気で「」に近づくのは決まって暑い夏の夜だった。一人暮らしのマンションの15階、玄関を開けても誰も待っていてくれない、薄暗い部屋。 ベランダにつながる窓の、カーテンの隙間から街の光が漏れている。 その光に惹き寄

【自由詩】メタクリル酸メチル

かつて、同じ教室で過ごした頃 想像していたよりもずっと 貴方はよく考え、悩み 誰かを頼って ひとり生きているようでした。 他人にあげる優しさは、 自分が欲しい温もりの裏返し。 体温を共有しない私は 決して貴方の本音を聞くことはないでしょう。 貴方だって解っている。 だから私に話してくれたのでしょう? だけど 誰かの温もりを求めてしまうと言う貴方に 私と似た色を見た気がしたのです。 通話の終わり、 他に言いたいことがあれば何でも聞くよと いつも言