【短編小説】ゆるやかな夜の気配
*この作品は、決して明るいとは言えませんが、僕が眠れない夜に読みたいのは、きっとこういう物語です。もし何か感じるものがあったなら、後書きまで目を通していただけると幸いです。
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『ゆるやかな夜の気配』
冬は気分が落ち込むけれど、「」たくなっても耐えられた。本気で「」に近づくのは決まって暑い夏の夜だった。一人暮らしのマンションの15階、玄関を開けても誰も待っていてくれない、薄暗い部屋。
ベランダにつながる窓の、カーテンの隙間から街の光が漏れている。
その光に惹き寄