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目は口ほどにモノを言うかは定かでないが目と口ほどにはモノを言わない。

職場で先輩が憂いた表情で作業をしていたので、
「どうかしたんですか? 何だか悲しげな顔して」
と問うたところ、
「別に悲しくないです。私、垂れ目だからそう見えるんです」
と返ってきました。確かに先輩は垂れ目ですが今まで特に儚げな印象を抱いたことはありません。なぜなのか。口元に手をあてて考えようとしたところで答えに辿り着きました。

あぁ、マスクか。

マスクで口元が覆われ、これまで顔全体を見て総合的に判断していたところを目元だけで判断した結果、心情を読み損ねたということです。

私の勤める会社では緊急事態宣言が解除されたことを受け、必要に応じて県をまたぐ出社が認められるようになりました。約2ヶ月ぶりに会社で顔を合わせた人もいます。そして打ち合わせはオンラインからいわゆる3密を避けた形の対面に移行しつつあります。

オンラインでは画面共有などすると処理が重くなることから、顔を映すことが必須とされておらず、音声のみでやりとりをすることがほとんどでした。テキストのみよりマシとはいえ、なかなか音声のみから心情を読み取ることは難しいものです。「いいんじゃないですか」と言われても、ノリノリなのか、シブシブなのか判断がつかないこともシバシバ。できれば顔を見て話したいと常々思っておりました。

対面が増えればこの問題は解消されるかと思いきや、冒頭の通り、目元だけではどうやら判断が難しいというわけです。大事な会議ではなく何気ない会話で気がつけたことは幸運でした。中途半端に表情がわかっているような気分になれるだけに、音声のみより誤認の罠に嵌る確率が高いのではないでしょうか。逆に言えばこちらも目元のみで誤解されるケースがあることを想定しておく必要がありそうです。試しにマスクをつけたまま鏡の前でそこそこ大袈裟に笑ってみたら、目元はぜん笑っていませんでした、私。

そのうち「目で魅せる交渉術」とか「目で落とす恋愛テク」とかそういう類の本が店頭に並び出すような予感がします。

新しい生活様式。あなたは目で何を語りますか?

頂いたサポートは、美味しいものを経て、私の血となり肉となり次の作品となる。