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「封鎖された人狼村からの脱出」を遊んでオンラインリアル脱出ゲームに閉じ込められたかもしれない。

初めてオンラインリアル脱出ゲームを遊んでみた話。

趣味のひとつはリアル脱出ゲームです。

私はそう公言しており、会社でも機会があればだいたい自己紹介スライドに記載しています。ラブライブ! を追いかけて国内外を飛び回っていることに比べたら対外的に説明しやすい趣味なのです。

私が思っているほどは浸透していないのか、私の説明が上手くないのか、「リアル脱出ゲームって聞いたことはあるけど実際どんな感じですか?」と追加で説明を求められることがままあります。

リアル脱出ゲームとは、Webで流行った脱出ゲームをリアルにしたものです。

……説明下手くそか!

正確な脱出ゲームの起源がどこにあるかはわかりませんが、2004年に公開されたFlashゲーム「CRIMSON ROOM」がブームのひとつのきっかけになったことは間違いないでしょう。ゲーム内で視点を切り替えるとどうやら閉じ込められており、配置されている家具の下や裏や中を調べるとアイテムが手に入り、アイテムを駆使すると、閉じ込められた部屋から脱出できるというものです。以降、何作もの脱出ゲームが作られました。当時はアイテムを求めてクリックしまくっていました。作る側にまわりたくてFlashを齧ったりもしました。そういえば2020年12月31日でFlash Playerのサポートが終了してしまったので、他のアプリケーションに対応していない限り、多くの脱出ゲームはもう遊べなくなってしまったんだろうなと思います。

本題に戻しましょう。そんな脱出ゲームを現実世界に持ち込んだのがリアル謎解きゲームです。私たちは実際に部屋に閉じ込められ(或いは閉じ込められた設定で)、実際に部屋にあるものを調べてアイテムを手にし、実際にアイテムを駆使して、部屋からの脱出を試みます。

これまた正確なリアル謎解きゲームの起源がどこにあるかはわかりませんが、加藤隆生さん率いるSCRAPの作品がブームのひとつのきっかけになったのは間違いないでしょう。以降、規模の大小あれど様々な人たちが様々なリアル謎解きゲームを企画、運営しています。ここまで読んで、表記ブレかと思われた方もいるかもしれませんが「リアル脱出ゲーム」はSCRAPが商標登録しているため、許可なくSCRAP以外のゲームに使うことはできません。

リアル脱出ゲームとは、“SCRAPが”Webで流行った脱出ゲームをリアルにしたものです。

ちなみに私が遊ぶリアル謎解きゲームは今のところ9割5分以上がSCRAP制なので、冒頭の「趣味のひとつはリアル脱出ゲームです」という記載は間違っていません。

リアル脱出ゲームは、部屋の中に閉じ込められて4〜6人で「あーでもないこーでもない」と互いに素手でアイテムをいじりながら小さなテーブルを囲んで相談しながら進めることが多いです。つまり、感染症の流行との相性は最悪に近いものでした。結構ギリギリまで粘っていた印象ですが、宣言が発令されてからは会場での公演が軒並み中止となってしまいました。

加藤さんのtweetからもエンターテイメントの可能性について無力感とか悲壮感が漂っていたように思います。そんな中で、もがき苦しみながら新しいエンターテイメントの形を模索して辿り着いた先のひとつがオンラインリアル脱出ゲームです。

オンラインリアル脱出ゲームとは、“SCRAPが”Webで流行った脱出ゲームをリアルにして流行ったものをオンラインにしたものです。

私はこの「オンラインリアル脱出ゲーム」という言葉に面白みを感じています。ここまでの系譜を理解したうえでならば共感してもらえると思うのですが、Webで流行したものを一度現実世界に落とし込んだあとに、再度それをWebに落とし込んでいるわけです。

少し例えは悪いかもしれませんが、脱出ゲームを「生卵」とするならば、リアル脱出ゲームは「ゆで卵」のようなものでした。脱出ゲームという同じテーマを扱っていながらも、10年以上の歳月を積み重ねたこともあり、体験することで得られる価値は全く別物になっていました。会場公演が難しくなる中で「ゆで卵」を食べたいと思っている人にジョッキに入れた「生卵」を渡しても「違う、そうじゃない」となるわけです。求められていたのは「生卵」ではなく「生で食べられるゆで卵」でした。幸いにして「生卵」しかなかった時代から技術が大きく進歩し、オンラインコミュニケーションツールが充実していたからこそ叶った「温泉卵」のような作品。それがオンラインリアル脱出ゲームだと私は思っています。これはこれで「生卵」でも「ゆで卵」でもない新しい価値であり、新しいリアル脱出ゲームの形が発明されたのです。

前置きが長くなりました。オンラインリアル脱出ゲームの存在は知りつつも、本当にオンラインでリアル脱出ゲームの興奮を体験できるのかと疑っている部分もありました。ひとりで遊ぶのは好きじゃない。私が疑っているのに誰かを誘って巻き込むのは申し訳ない。なかなか購入への一歩を踏み出すことができずにいると、2021年1月半ばにオンラインリアル脱出ゲームをひとつだけ実質タダで遊べるキャンペーンが! これはまたとないチャンス。キャンペーンを利用して私が選んだのは「封鎖された人狼村からの脱出」です。

もう村人がリモート会議をしているという設定が世情を反映していて面白い。ネタバレ禁止なので何も語れませんが、無事に脱出できました。人数制限も時間制限もありませんし、ヒントが充実していながら安定のSCRAPクオリティなのでリアル脱出ゲームの初心者から玄人まで幅広か遊べる作品だと思います。

今は似たようなレギュレーションの「封鎖された魔王城からの脱出」に興味があって……と、ここではたと気がつきます。まんまとSCRAPにやられたなと。実質無料チケットを使ってオンラインリアル脱出ゲームの面白さをわからされてしまったのです。一度「温泉卵」の美味しさを知ってしまった私は、半ば無意識に再び「温泉卵」に手を伸ばそうとしているのです……! サマーウォーズとのコラボも発表されましたし、もう何作品かオンラインリアル脱出ゲームを遊ぶと思います。個人的な事情で言えば、仲間と遊ぶために会場に行って帰ってくるだけの交通費が不要なのもよいですね。行って帰ってくるだけで、もうひとつ作品が、遊べちゃうからね。

実際に遊んでみて感じたのは、リアル脱出ゲームよりハードル低いかもなということです。これまでリアル脱出ゲームに興味はあれどなかなか踏み出せなかった人こそ、オンラインリアル脱出ゲームに手を出してみてはいかがでしょうか。お声掛けいただければお付き合いもします。というか、させてください。楽しみたい。

余談
宣言が解除されたら再びかつてのリアル脱出ゲームが制限なくできるのかと言われると、少なくともいきなりは難しいのではないかと思っています。そこで提案なのですが「リアルオンラインリアル脱出ゲーム」とかどうでしょう。オンラインリアル脱出ゲームを現実世界に再度コンバートしてみるのです。具体的に何をどうすれば面白いのかまでは閃いていませんが、新たに「半熟卵」が生まれるような予感はします。

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