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デカダンスの手の平の上できっとダンスしている私たち~世界は何処に在り何処に向かっているのか~

2020年夏アニメのひとつ「デカダンス」の先行きが全く読めなくて楽しいぞという話です。本項には「デカダンス」の4話までのネタバレと「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」の20話までのネタバレ(に含まれるシリーズ作品のネタバレも含む)を含みますので、内容を知りたくない方は回れ右をしていただければと思います。

最新話のネタバレを含んでいない理由は、「アニメはニコニコ動画で木曜日の夜に見る」というマイルールにより最新回からざっくり1週間程度遅れているからと、私の筆が遅いからです。最新回を既に視聴している人が読むと今更感があるかもしれませんし、それはそれで面白いかもしれません。

無重力戦闘アクションがめちゃくちゃド派手でよく動くのでそれだけでも見応えがあります。加えて世界設定が凝っていてなかなか考察しがいのある作品です。あと、おっさんと少女。

デカダンス。それは荒れ果てた荒野を突き進む地上要塞。地上にはガドルと呼ばれる異形が跋扈し、人類はガドルによって壊滅。人間の生き残りはギアと呼ばれる主に戦闘部隊とタンカーと呼ばれる主に支援部隊に分かれてデカダンスの中で共生しています。察するに世界の力関係はギア>タンカーでしょうか。主人公のひとりである隻腕の少女ナツメはギアに憧れるタンカーです。

キャッチコピーは
「生きる世界は自分で決める」
なるほど。皆にバカにされているタンカーの少女がギアとして地上で大活躍する話なのか。

そう思って観ていましたが、第1話の引きから第3話でどうやらそう単純な話ではないことがわかってきます。デカダンスは巨大要塞型の娯楽施設。展開されていたガドルとのバトルは実は現実世界を使ったゲームだったのです。

世界が荒廃したのはガルドの跋扈ではなく愚かな人類による致死レベルの大気汚染でした。人類は大気汚染に耐えるため世界的企業ソリッドクエイク社のサイボーグ技術に依存するようになります。全人類所有権を握ったソリッドクエイク社は何らかの理由でユーラシア大陸にドームを設置し、そこに巨大娯楽施設デカダンスを建造しました。

現実世界を使ったゲームと言われるとなかなかイメージしにくいのですが、おそらくサイボーグ達は比較的安全な場所に住んでいて、デカダンスに「ログイン」することでデカダンス内の人間形態の素体を遠隔で操り、地上でのガドル狩りを楽しんでいます。人間は第1話で視聴者が知った内容をそのまま教育されているため、世界の実情やサイボーグの存在を知らず、ゲームのNPC的な扱いを受けていることに気がついていません。察するに世界の力関係はギア>タンカーというよりはサイボーグ>人間なのだと思われます。

ではサイボーグは悠々自適な暮らしができているのかといえばそんなこともありません。結局のところ世界的企業ソリッドクエイク社に「管理」されているのです。「世界にバグは不要です」を合言葉に、ルールを逸脱したものは排除されます。人間もサイボーグも世界の認識レベルの階層は違えど、企業に管理されているのです。企業>サイボーグ>人間。ディストピア!

サイボーグ側にも主人公がいます。おっさんの素体を持つカブラギです。昔はギアとしてぶいぶい言わせていましたが、今はワケあってタンカーに紛れて暮らしています。「デカダンス」は、タンカーのふりをする世界を知り過ぎたギアのおっさんと、ギアに憧れる世界を何も知らないタンカーの少女の物語なのです。おっさんと少女の物語なのです。

おっさんカブラギと少女ナツメの対比はこれだけではありません。カブラギがタンカーに紛れ込んでいる理由は「企業が統治する世界にとって不都合な人間=バグ」を排除するという使命を負っているからです。そしてナツメの正体は過去の瀕死体験でデータ上存在しないことになっている「バグ」でした。この二人、排除するものとされるものの関係にあるわけです。大好物。

これは単なる私の妄想ですが、「バグ」であるナツメの存在はいつか企業側にバレてしまうことでしょう。統治された世界を維持するためには、今の世界を守るためには、バグを、ナツメを排除しなければなりません。本来はカブラギもバグを排除する側の立場。カブラギは選択しなければなりません。世界か。それともナツメか。 ……この構図、ガンダムビルドダイバーズじゃん。この前書いたやつじゃん!

もっとも、世界に疑問を感じ、第2話の時点で早々にナツメに救われてしまったちょろいカブラギはナツメを「排除対象」ではなく「世界を変える可能性」と認識しているので、あまり悩まずにナツメを選択することでしょう。すると今度はカブラギが企業から排除されてしまうことになるので……このあたり、どう企業と折り合いをつけていくのかが見所のひとつになりそうです。

本項を書くにあたり、世界構造についてはうまく説明できている自信がありません。私の中でもこんがらがっています。現実なのか。ゲームなのか。現時点で私が期待している展開は「人間が認識している世界」が偽りだったように、「サイボーグが認識している世界」も実は偽りである可能性についてです。前者が第1話から第2話にかけて早々に明らかとなってしまったので、もう一枚くらい皮を被っていてもいいんじゃないかと思っています。サイボーグも世界(を作っている企業)に絶望し、統治されていることに疑問を感じ、人間と共闘して企業に抗ってくれたりするとたいへん私好みです。

ここまでくると、
「生きる世界は自分で決める」
がナツメだけのテーマではなく、全人類全サイボーグのテーマたり得るのではないかという気がしてきます。どうなるデカダンス。きっとまだ私たちは作者の手の平の上で踊らされています。

余談
ガドルの血液でありデカダンスの燃料でありサイボーグの燃料でもある「オキソン」は世界観を考える上で重要な要素かなと思っています。今のところよくわからないのが、なぜ企業がゲームという嗜好性を煽る手段を用いてまでサイボーグにガドルを倒させる必要があるのかということです。私は「オキソン」はガドルを経由しないと精製できない物質なのではないかと想像します。企業はなんとしても「オキソン」を入手する必要があり、入手するためにはなんとしてもサイボーグにガドルを殲滅してもらう必要があると。「オキソン」を生み出すガドルが一体ナニモノなのか。自然発生しているものなのか人為的に造られているものなのか。これについても今後明らかになっていくのでしょう。楽しみ。

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