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「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」を見て~君は何かを掴むために全力で駆け抜けたことがあるか~

「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」を一気見したのでその話。ネタバレを含みますのでBlu-rayでじっくり楽しみたい方は回れ右していただければと思います。サイレンススズカが好きな方は左回りでも構いません。

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「ウマ娘」とは競走馬を擬人化した美少女たち。おおよそ史実をなぞる形で構成されており、Season 2はトーカイテイオーとメジロマックイーンにメインスポットを当てた構成になっています。時代としては1991年から1993年。クラシック無敗三冠を目指すあたりから最後の有馬記念まで。怪我に悩まされながら中364日でのGI勝利を掴み取るまでの奇跡の軌跡をイイ感じに描いた作品になっています。努力! 友情! 勝利!

作品内の私が気に入っているレースシーンのセリフをいくつか紹介したいと思います。

第2話「譲れないから!」より

言わせない言わせない言わせない言わせない!
テイオーが出ていればなんて、
絶対に言わせない!!

1991年菊花賞相当のナイスネイチャのセリフです。この菊花賞は、クラシック無敗2冠を勝ち取ったトーカイテイオーが無敗3冠をかけて挑むはずでしたが怪我により出場できず。ヒーロー不在となりました。ファンのいくらかは「トーカイテイオーが出ていればもっと盛り上がっていただろうなぁ」と思っていたことでしょう。五輪で言えば金メダル候補選手の欠場のようなもので、連日ニュースがそればかりを取り上げている様は想像に難くありません。セリフだけ見ると「出られなかったトーカイテイオーの分も私が頑張る!」という綺麗な解釈もできますが、実際は「ちゃんと私の走りを見ろバカヤロー!」という剥き出しの野心です。注目されていなくても全力でやり切るカッコよさが滲み出ています。 

第8話「ささやかな祈り」より

ライスは……ヒールじゃない……。
……ヒーローだ。

1993年天皇賞(春)相当のライスシャワーのセリフです。トーカイテイオーが無敗3冠を逃した翌年、トーカイテイオーと同じく無敗3冠に挑む馬がいました。ミホノブルボンです。トーカイテイオーと異なり怪我することなく菊花賞への出場に辿り着けたため、次こそは無敗3冠の瞬間を目に焼き付けられるとファンのいくらかは期待していたことでしょう。1番人気のミホノブルボンが単勝オッズ1.5倍、2番人気のライスシャワーが単勝オッズ7.3倍だったことからも当時の雰囲気が伺えます。結果は芝3000メートルの日本レコードを叩き出してライスシャワーがミホノブルボンの無敗3冠を阻止。この劇的な勝利に大いなる祝福はなく、ブーイングの混じった不思議な空気が流れていたそうです。ツラい。1993年天皇賞(春)はメジロマックイーンの3連覇がかかったレースでした。もうお分かりでしょう。「またしてもライスシャワーが記録を阻止するのか」と悪役として盛り上げられるのです。それを嫌がりながらもなんやかんやあって出場する覚悟を決めたライスシャワーは史実の通り過酷なトレーニングで肉体と精神を鍛え上げ、レース終盤でメジロマックイーンに並んだ際に先のセリフを言い放ちます。黒い覇気を纏い瞳が青く燃え上がる鬼気迫った演出がカッコいい。普段は片目隠しキャラなのにこの時だけ両目がチラ見えするのがカッコいい。そもそも普段とのギャップがカッコいい! 結果はまたしてもレコードを叩き出してメジロマックイーンの3連覇を阻止。このあと「……また……たくさんの夢を壊してしまいました……」とミホノブルボンに泣きながら溢すシーンもたまりません。一般公募のオーデションでも何でもそうです。誰かが勝つということは誰かが負けるということ。誰もが勝つために勝負の舞台にあがっている以上、本来そこにはヒールもヒーローもないはずです。そういう意味ではナイスネイチャのセリフにも通じるものがあります。要するに「皆が望んでも望まなくても私は私で勝ちにいく!」ということです。ファンの想いと選手の想いの狭間に投げかけられたセリフのようにも思えます。アニメを見たあとにゲームを始めていたらライスシャワーを求めてガチャガチャしていたかもしれません。

第10話「必ず、きっと」より

これがー!
あきらめないってことだーー!!
トーカイテイオーーー!!!

1993年オールカマー相当のツインターボのセリフです。ツインターボは逃げ馬で、序盤から飛び出してそのまま逃げ切るか、失速して落ち込むかの両極な成績を残しています。この後先をまったく考えていないような走りっぷりからウマ娘としては頭の悪いキャラクターとして描かれています。この頃、アニメ時空のトーカイテイオーは3度目の骨折でレース復帰を諦め、引退を考えていました。いつかトーカイテイオーと戦いたい。挑戦状まで叩きつけていた頭の悪いツインターボがトーカイテイオーと戦うためにとった行動が「自分が諦めずに勝ちきる姿をトーカイテイオーに見せつける」でした。ツインターボが逃げ切ることとトーカイテイオーが復調することに直接的な因果関係はないわけですが、理論ではなく感情でぶつかってくるこの感じが、どちらかと言えば理論派の私にいたく刺さったわけですね。G1レースでもなく終盤しか流されていないのに、このレースの第4コーナー回ったところを何度繰り返して再生したかわかりません。本作でいちばん見た回数の多いシーンはここだと思います。理論武装っぽいことをして、私、いろいろなことを諦めていたかもしれない……! ツインターボ師匠と呼ばせてください……!

……あれ? トーカイテイオーとメジロマックイーンは?

彼女らは全編通して心にくるシーンが散りばめられているので、このレースシーンのこのセリフがたまらない! というのが逆に思い付きませんでした。TM対決も最後の有馬記念も大好きです。

ひと通り見終わった後に思ったことは「こんなダラダラと酒飲みながらアニメを見ていていいのか私……!」でした。挫けそうになりながらもそれぞれ自分の目標を見つけて全力で走り続ける彼女たちを見ていたら、何だか恥ずかしくなってしまったのです。最近は全力で取り組んでいることがないなとか、昔はもっとがむしゃらにいろいろ頑張っていたなとか。これから何かに本気になりたい人、今まさに本気で取り組んでいる人にオススメしたい作品です。

余談
レース中ではないシーンのセリフだと、メジロのおばあ様の「ウサギはカメを見ていた。しかしカメはゴールを見ていた」が好きですね。世の中を見ていると「この人、何と戦っているんだろう……」と思うことがよくあります。自分のゴールが何なのか。そのためにはどうしたらいいのか。正しく見据えながら生きていきたいものです。

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