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「 無敵級*ビリーバー」は「中須かすみ」と「かすみん」の境界の物語ではないか。

※本項にはスクスタに関するネタバレが含まれますのでご注意ください。

2020年7月29日、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会のアニメーションPV付きシングル「無敵級*ビリーバー」が発売されます。先日めでたく100万回再生を突破した視聴動画はこちらです。

別項でも触れましたが、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会は、TVアニメ制作が決まっており、本アニメーションPVはそのテイスト近いものとなっています。虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会が……3DCG以外で……動いている……! もとより表情がくるくる変わるアニメーションが好きなので、個人的にはクレーンゲームのシーンが特にお気に入りです。

本作の新たな試みのひとつは、ファン投票によって歌うアイドルが決められた点です。これまでのラブライブ!シリーズでも楽曲にまつわるファン投票はありましたが、センターを決めたり、組み合わせを決めたりする程度で、「選ばれたひとりしか歌えない」というケースは初めて。

選ばれたのは中須かすみでした。

センター総選挙についてはセンターが誰であれ、全員曲であることに変わりありません。センターを中心とした振り付けとPVが作られるため、パッケージとして結果的には「センターのための楽曲」になりますが、楽曲自体に「誰かのための楽曲」という印象はありませんでした。異なるメンバーがセンターに立った世界線であったとしても、おそらく同じ楽曲で成立していたのではないでしょうか。

ところがこの中須かすみの「無敵級*ビリーバー」はそう思いませんでした。中須かすみ以外の誰が歌っても成立しない、中須かすみだからこそ成立する楽曲であると私は感じたのです。そのあたりの共感を得るには、まず中須かすみの人物像を知っていただく必要があります。

中須かすみは虹ヶ咲学園のスクールアイドル同好会に属する1年生。公式によるキャラクター説明は以下のとおりです。

かわいいもの好きで、スクールアイドルに対する憧れは人一倍強い。
いたずらっ子な性格で、よくいたずらをするが、メンバーたちには全然効いていない様子。

これだけでは十分に伝わらないので、同ページから本人の意気込みコメントも引用します。

こーんにっちわー! みんなのアイドルかすみんだよー!
日本一のスクールアイドルを目指して、毎日、歌やダンスのレッスンをがんばってます!
もちろん、もっともーっと可愛くなるための秘密の努力もしてますよー。
あとはー、ライバルたちに送り付ける怪文書とかぁ、
ライバルの靴にこっそり入れるコッペパンとかの準備も滞りなく――
って、わわ、これは内緒でしたっ!
こ、こほん! と、とにかく、かすみんのこと、みんな応援してね!

十分に伝わる見事な自己紹介です。客観的に評価すれば、触れちゃいけないタイプのヤバめの設定のイロモノキャラクターです。そんな彼女の初のソロ楽曲「ダイアモンド」がこちら。

ぶりっこ全開。コールが楽しくてライブ映えして結構クセになる楽曲は、ソロ2曲目の「☆ ワンダーランド☆」と合わせてスクールアイドル「かすみん」の魅力がたっぷり詰まった作品に仕上がっています。曲中に堂々と「かすみん」と言うワードをぶち込めるのは彼女の強みです。曲だけ聞いていると、アホの子で能天気な彼女には悩みなんて全くないように思えます。

ところが「無敵級*ビリーバー」を勝ち取ったファン投票の直前にリリースされたスクスタをプレイしてみると、ホーム画面を放置しているだけで彼女の別の側面が見え隠れします。

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中須お前……! 触れちゃいけないタイプのヤバめの設定で教室で浮いちゃって居場所がないタイプなんじゃないの……!? 思いつくいたずらの数々は小中学の時に自分がやられていた反動なんじゃないの……!? 二次創作で過去シリアス設定を過積載されちゃうんじゃないの……!? 

……取り乱しました。

拗らせていたから浮いてしまったのか、浮いてしまったから拗らせたのかは定かではありません。理想の「みんなのアイドルのかすみん」と現実の「みんなのアイドルのかすみん」と現実の「中須かすみ高校1年生」の間にはそれぞれ大きなギャップがありそうで、まさに直近のキズナエピソードでなぜか自分だけファンクラブの人数が増えないことについて悩み始めています。

スクールアイドルが大好きで、自分なりに懸命に「かすみん」をセルフプロデュースしているけれど、周りがなぜかついてきてくれない。超絶誰より一番かわいくできているはずなのに。それが現状の中須かすみであるというのが私の理解です。

これらの前提知識を踏まえた上で、もう一度、「 無敵級*ビリーバー」の視聴動画を見てみてください。「かすみん」と「中須かすみ」が鏡を隔てて対話している楽曲のように聞こえてきませんか。苦悩する「中須かすみ」を「かすみん」が鼓舞する、あるいは苦悩しながらも「中須かすみ」が「かすみん」を肯定する楽曲のように聞こえてきませんか。他の誰でもない「中須かすみ」にしか歌えない楽曲のように思えてきませんか。

これまでの底抜けに明るいだけの2曲とは異なるテイストに衝撃を受けた作品でした。あくまで1番を聞いたまでの話なので曲全体を通して「かすみん」と「中須かすみ」が描かれているとは限りません。それでもこれまでの2曲がかなりキャラに寄り添ってくれた楽曲であったことから、期待感は高まるばかり。2番以降にどんな展開が待ち受けているのか。対話の先にどんな答えを導き出すのか。フルバージョンが楽しみです。

余談
「 無敵級*ビリーバー」の作曲はDECO*27さんが担当されています。10年ほど前にボーカロイドを齧っていた身としては、モザイクロール、弱虫モンブラン、二息歩行あたりで馴染みのあるミュージシャン。しばらくボーカロイドから遠ざかっていたのですが、まさかラブライブ!で再会することになるとは思ってもいませんでした。タイトルの「*」はDECO*27さんの「*」にあやかっているのかしら。

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