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「アーティスト高槻かなこ」は「国木田花丸役高槻かなこ」と今後どのように付き合っていくのか。

自分が実際にやりたい活動と自分に箔をつけてくれた活動の間に乖離があると大変だよなぁという話。私もお仕事で似たような感じなのですが、答えはありません。

2020年10月14日、高槻かなこさんのソロデビューシングル「Anti World」が発売されました。

高槻かなこさんの知名度を大きく上げた「ラブライブ!サンシャイン!!」の国木田花丸役としてのパフォーマンスとは異なりスタイリッシュでカッコいい感じです。

ソロデビューに合わせた宣伝活動の一環としてインタビュー記事もいくらかあり、そのひとつが少しばかり話題になっていたので私も読んでみました。

あらかじめ断っておきますが、私自身は記事に対して特に否定的ではないものの、否定的な意見が出てきてもおかしくはない内容であり、発信者と受信者の間に誤解さえなければいいなという立場です。

この記事を読んで高槻かなこさんは「ラブライブ!サンシャイン!!」に思い入れがあると思いますか?
□ とてもそう思う
□ そう思う
□ あまりそう思わない
□ そう思わない

というアンケートを無作為にしたならば、上2つより下2つのほうが、割合が高くなってしまうのだろうなと思います。

「彼女自身が実際のところどう思っているのか」「記事の想定読者層は誰なのか」は私の知るところではないですが、もしも「TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』国木田花丸役で声優デビュー」から始まるこの記事で「国木田花丸役高槻かなこ」のファンを「アーティスト高槻かなこ」のファンに取り込むことを見込んでいたのであれば、あまり上手な書き方だとは言えないなというのが私の印象です。

――応募してみようと思ったのは何故なんでしょうか?
高槻:え、だって『ラブライブ!』のオーディションがあるって言われたら絶対受けません?

は直球ストレートな正直さにいっそ清々しさすら感じるのですが、

――ここまで声優として様々な経験をされたと思いますが、歌手活動においてはどういったことがプラスになったと思いますか?

の問いに対して具体的なプラス要素が出てこなかった点については、そのまま表に出さず、もう少し深掘りする等、うまくコントロールしてもよかったのではと思わなくもありません。

全体の流れとしては「アニメ好きアニソン好きが転じて国木田花丸役を射止めた結果たくさんの舞台に立たせてもらってたくさんの人に知ってもらってたくさんの人にパフォーマンスを見てもらったけれどそれは高槻かなこのほんの一面でしかなくこれからは一味違う高槻かなこも見てほしい」という旨のコメントが引き出せれば波風立たずにまとまったように想像しますが、結果的には「トントン拍子で掴めて感謝こそしているけれど苦悩した国木田花丸役としての5年間とそこからの脱却」に映りかねない内容になっています。建前を嫌い、本音で語ればそうなのかもしれません。

何だか大物感も出ていて、ソロアーティストデビューに向けたインタビューとしてそれでいいのではと言われればその通りです。「ラブライブ!サンシャイン!!」が彼女のキャリアの通過点でしかないのもまた事実で、むしろ健全な在り方だと思います。しかし、それをドライに語る(ように見える)記事は、ソロアーティストとしていくらか軌道に乗り、Aqoursとしての活動が終息してからでもよかったのかもしれません。まだしばらく続きそうなAqoursとしての、国木田花丸としての彼女のパフォーマンスを観たときに「本当は自分らしく歌いたいんだよなぁ」とか「本当は踊りたくないんだよなぁ」とか「国木田花丸ではなく高槻さんだったよなぁ」とか余計なことを思われたりしないのか、そのあたりが少しばかり心配です。

もちろんこの記事の一部の内容だけで「高槻さんは「ラブライブ!サンシャイン!!」をもう過去のものとしている」と判断するのは早計ですが、「アーティスト高槻かなこ」のファン未満の人々が多くの関連記事を読み漁ってくれるとは限りません。インタビュー記事も一期一会。たまたまこの記事に出会い、ちょっとしたモヤモヤを抱えて、彼女から若干の距離を置くことになってしまった人がいたとしても、その点を責めることはできない気がします。

繰り返しになりますが、本人や事務所がプロデュースの方向性として「ソロアーティスト活動は「ラブライブ!サンシャイン!!」に頼らない形で売り出していく」と決めているのであれば何の問題もありません。切り替えてこれまでのイメージを払拭しないとこれからの活動を思い通りにできないという考え方もあるでしょう。Aqoursとしての活動に終わりが見えなければなおさらです。

いずれにせよ、周りが何を考えようと、本人のやりたい活動ができていて、本人のやりたい活動ができるだけのファンを獲得できていればそれでよいわけで。彼女の見つめるその先に、彼女が夢見る「アニソンといえば高槻かなこ」と言われる世界が待っていることを願っています。

デビューシングルの2種のジャケット対比はめちゃくちゃ私好み。

余談
インタビュー記事でも多用されていた「(笑)」のニュアンスって今どきはどんな感じなんでしょう。ただ和やかさを表現しているような。どこか嘲笑しているような。これも誤解の温床になりそうです。受け手によって解釈の余地が生まれそうな表現は極力避けるにこしたことはないので、私は多用しないようにしています(笑)。

……我ながらちょっと腹立つなこれ。

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