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イープラスの顔認証システムサーバーエラーに巻き込まれた話。

2021年10月16日に「ラブライブ!サンシャイン!! CYaRon!2nd LoveLive! ~大革命☆Wake Up Kingdom~」に参加しました……という話はまたの機会にするとして、本項は入場トラブル体験談。要するに電子チケットも万能じゃないよなぁという話です。あらかじめ断っておくと、あくまで私が見聞きして感じた話なので、実際とは乖離している可能性がある点、ご了承ください。

現場で、裏で、トラブル対応に当たってくれた関係者の皆さんには感謝申し上げます。

感染症の世界的流行は、世の中を不自由にしやがりましたが、一方でリモートワークの推進など、平時の世の中ではなかなか浸透しなかったものがやむなく浸透し、ある面では世界が進化したと言われています。電子チケットもそのひとつ。元より問題となっていたチケット転売の有効な対策手段でありながら、なかなか導入が進んでいませんでした。しかしこのご時世でイベントを開催するためにはクラスター発生時の対応が必要です。入場者を確実に特定しなければならないことや、非接触入場を実現することから、チケット販売会社のイープラスも導入を決めたようでした。

これが超便利。ライブ数日前に顔写真を事前登録しておき、当日は注意事項に同意するボタンを押して、同意画面を見せた後に顔認証するのみ。免許など本人が確認できるものを鞄や財布からごそごそ取り出して提示する手間が省けます。スマホさえ忘れなければ紙チケットを家に忘れるリスクともおさらばです。逆に言うとスマホがどうにかなってしまうと困ったことが起きます。ライブ数日前にdocomoで通信障害が発生したニュースを聴きながら、これがライブ当日だったら阿鼻叫喚だっただろうなと思っていました。このときSoftbankの犬の犬である私はすっかり他人事でした。

まさか当日にサーバーが落ちる(仮)とは思ってもいなかったよ!

顔認証サイトへのログインができないために同意画面を提示することができません。

運営側もまさか当日にサーバーが落ちる(仮)とは思っていなかったようで、対応が後手後手でした。それを象徴するのが先のtweetです。17時開場18時開演のトラブルの案内の第一報が17時48分て。17時過ぎにはトラブルが発生しており、17時15分ごろは「まだだ、まだ焦るような時間じゃない」と余裕でいられましたが、17時30分を過ぎても自分を含めて結構な人が入場できていない様子を眺めながら「あ、これ開演時間押すな」と確信しました。

現場はそこそこ混乱しており、スタッフもどうしていいかよくわからないようでした。最初の課題はおそらく入場できない人たちが密になってしまうこと。一部エリアを解放し、ログイン後の画面が出せない人たちを待機させるスペースの確保に努めていました。広いスペースのある室内だったのは不幸中の幸い。待機スペースが広くなった代償としてスタッフが何を喋っているのかはよく聞き取れませんでした。聞き取れた中でいちばん面白かった案内は「スマホを再起動してください」です。いやいやいや、全員がおかしくなっているのだから個々の端末の問題ではないでしょ。もしかすると「キャッシュを削除してください」のくらいの意図だったのかもしれませんが、思わず笑ってしまいました。

或いはF5アタックのようなアクセス集中を少しでも緩和させたかったのかもしれません。何度挑戦しても白いページと左上に「AUTH thru」の文字。すでに終わった公演の顔認証ページに跳ぼうとすると再現できます。このとき初めて株式会社ロココが提供する顔認証入退場管理システム「AUTH thru」が使われていることを知りました。

Twitterを眺めているといくらか勘違いしている方もいたようですが、顔認証入退場管理システム自体は正常に動いていました。サービスの説明によればオフライン認証もできるみたいです。「スクリーンショットの提示で進める」という情報がひとり歩きして不正入場を心配されている人もいましたが、例えばチケットを持っていない人が他人のスクリーンショットで進んだとしても顔認証で弾かれていたはずです。顔認証すごいですね。詳細な挙動はよくわからないながら、やっていることからやれることを考えると、そこにある顔を事前登録された数千人分の顔写真と照合して一致するものがあるかどうかを判定しているのだろうと想像します。

裏を返すと、顔認証前に同意画面を確認する時点では、簡易スクリーニングをしているにすぎず、厳密なチェックをしているわけではなさそうです。同意を忘れている人やチケットなしで入ろうとする悪意のある人がいちいち顔認証で引っかかっていては、入場の効率が著しく下がるため、それを防止するためではないかと思われます。

じゃあ今回のような緊急事態はとりあえず顔認証に進めればいいじゃんとなるわけですが、顔認証を通過した後に困るんですね。自分の座席がわからない! 実はこれが今回のボトルネック。ログインしないと座席を確認することができません。「座席がわかる画面を見せてください」「座席がわかるスクリーンショットでも構いません」「座席がわかる何かがあればいいです」「座席がわかればいいです」「同行者がわかればいいです」「わかんなくてもいいです」とだんだん顔認証に進むための条件が緩和されていったらしいと聞きました。最初からガバガバだと会場が座席わからない難民で溢れ返ることは容易に想像がつくので、確実にわかる人から優先的に捌いていったんだろうなと思います。

復旧するまで特にやれることもないので、どうしてあのときスクリーンショットを撮らなかったんだと悔やみながら待つことしかできませんでした。自分のことを棚に上げてみんな割とスクリーンショット撮らないんだなとも思いました。揃いも揃ってスクリーンショットを撮っていなかった仲間内はログインゲームに勤しんでいましたが、私は電池の無駄遣いだと思ったので「それならスクスタにログインしてLPを消費したほうがマシですよ」と言いながらガルパのLBを消費していました。18時前にちらほらログインできるケースが増え始め、私は17時55分にログインに成功。顔認証に進める条件が揃えばあとの流れはスムーズです。無事に入場し、席に着くことができました。

当初の開演時間時点である18時に開演時間の目途は立たず。このあと18時20分ごろにも会場内に目途が立っていないアナウンスが流れていました。いつ始まるんだこれ……!

18時30分過ぎにようやく復旧。開演時間は55分押しでした。公演自体は予定通り行われたので、必然的に終演時間も55分押し。この日のうちに帰らなければならなかった人のいくらかは終電の都合で泣く泣く途中で会場を去ることになったはずです。心中お察しいたします。

この件で私が問題に感じたのは、トラブルが起こってしまったことではなく、トラブルが起こった時の対応があまり決まっていなさそうだったことです。決まっていたとしても現場が即対応可能な状態とは思えませんでした。今回は同意と座席表示のためのログインの問題だったのでこの程度で済みましたが、顔認証側が死んでいたら、数日前のdocomoのようにキャリアが死んでいたら、一体どうなっていたのでしょうか。これを機にいろいろなケースのトラブル発生時の対応が検討されるといいですね。一方で私たちも何かが起きた時のことをある程度想定して自衛手段を考えてみるのもいいですね。スクリーンショットひとつで変わる世界がありました。

今週末も同類のイベントがありますが、システム周りの改善がいきなりできるとも思えないので、一旦は「スクリーンショットを撮っておくこと」が推奨されるに留まるのでしょう。バックアップは大事だよ!(追記:顔認証とは独立したチケット当落を確認する画面から飛べる詳細ページでも座席を確認できるようになりました)

終演後、イープラスから全責任を負う旨の案内がされ、ラブライブ運営が無言でリツイートしていて笑いました。「私は悪くない」という意思のあらわれでしょうか。障害の責任はそうでしょうけれど、トラブル対応については運営もいくらか責任を担ったほうがよくて、責任感がないとリスクアセスメントが不十分になるんじゃないかなぁと思ったりしました。

それにしてもイープラスのロゴマーク、お詫びするには向いてない表情なんだよなぁ。反省の色がないというかむしろ煽っているみたいで。

余談
今回の件で自分の端末やアカウントと当日の顔認証が紐づいていないことが推察されたので、第三者に自分の顔写真を登録してもらい、同意ボタンを押してもらい、スクショを送ってもらうことで、第三者の当選アカウントでなりすまし入場することが、システム上はできてしまうんだろうなと感じました。実際のところはわかりませんし、ひとつのアカウントに2種以上の顔があることになりそうですし、不正があきらかになると顔面ごとブラックリスト入りすることになりますけどね。不正ダメ、絶対。

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