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「SSSS.DYNAZENON」はロボアニメというよりヒューマンドラマ、ところによりフェティシズム。

2021年春アニメの「SSSS.DYNAZENON」の作画が好みという話です。以下、「SSSS.DYNAZENON」の8話までと「SSSS.GRIDMAN」のネタバレを含みますので、内容を知りたくない方は回れ右をしていただければと思います。

最新話のネタバレを含んでいない理由は、「アニメは木曜日の夜に見る」というマイルールにより最新回からざっくり1週間程度遅れているからと、私の筆が遅いからです。最新回を既に視聴している人が読むと今更感があるかもしれませんし、それはそれで面白いかもしれません。

とりあえずOPムービー見てください。時間がない人は42秒のところだけ観てください。観ましたか? 観ましたよね? 誰ですか! ガジェットに髪の毛を絡ませようって言った人は!! 好き……!

この拘りはアニメ本編にも垣間見ることができます。単独犯か複数犯かはわかりません。少なくとも髪を描くのが好きな人と、手を描くのが好きな人と、脚を描くのが好きな人がいるに違いありません。第何話かは忘れましたが、カラオケルームでヒロインとヒロインの親友が顔を近づけて仰向けに寝転がっているときの髪の絡み方が最高でした。あとは振り返って刀が歩道橋の金属の欄干に当たった時の音が好きな人もいるはずです。細けぇ……。作画に限らずいちいち演出に凝っており、そんなところも「SSSS.DYNAZENON」の見どころのひとつです。

凝った演出で描かれているのは主人公たちの日常。両親が離婚して母親と母親が仲よくする男性の間でいたたまれなくなっている麻中蓬。男子生徒を呼び出す約束をしては約束を破る奇行を繰り返してクラスで浮いている南夢芽。33歳の無職の山中暦。暦の部屋に住み着いている不登校の飛鳥川ちせ。偏見に満ちたヒーロー&ヒロイン像のような輝かしさのない、リアルにいても違和感のない普通の4人が、年齢不詳の自称怪獣使いのガウマに出会ったことをきかっけに、それぞれ自分と向き合いながら、一歩ずつ歩みを進めています。

「SSSS.GRIDMAN」に引き続き、「かいじゅう」がテーマのひとつです。毎話、巨大怪獣と巨大ロボットダイナゼノンが街で派手に戦闘し、変形あり合体あり必殺技ありのカッコいいダイナミックなアクションシーンに心躍ります。しかし、私としてはこの戦闘シーンは主人公たちの日常を際立たせるための非日常という名のスパイスに過ぎず、作品の本質はヒューマンドラマではないかと思っています。そういえば「SSSS.GRIDMAN」もそうでした。「SSSS.DYNAZENON」は悩める人間の多様性から、さらにその色が強いように思います。

悩める4人の中でも蓬と夢芽の距離感がいいですね。第1話、蓬は夢芽の奇行に振り回される男子生徒のひとりでしたが、蓬は徐々に夢芽に惹かれて今ではともに夢芽の姉の死の真相を探っています。夢芽が思いのほかノリのいい子で、第1話の奇行設定が必要だったのかは少しばかり疑問です。あとあと活きてくるのでしょうか。病気で寝込む蓬の部屋を夢芽が訪れるシーンや第8話のバスの中のシーンが好きです。バスの中で二人きり。序盤に蓬から夢芽を誘って気まずくなるシーンがあるんですよ。

蓬「どっか寄ってかない?」
夢「どっかって?」
蓬「どこだっていいんだけどさ」

物語がひと段落して終盤に今度は同じ文脈で夢芽から誘うんですよ。

夢「どっか寄ってかない?」
蓬「どっかって?」
夢「どこだっていいよ」

そして蓬が少しだけ表情を柔らかくしながら「うん」と答えて光が当たって内田真礼さんの「ストロボメモリー」ですよ。エンディングですよ。美しい。美し過ぎる。

会話のテンポもおそらくよく考えられていて、非日常でありながら日常のように淡々と進んでいきます。それゆえに、熱血ロボットアニメを求めている人に「SSSS.DYNAZENON」を勧められるかと言われると、そこはターゲットではないのかなと思います。子供と大人がそれぞれが抱える、或いは抱えた甘酸っぱい思春期の感情に触れたい人にお勧めしたい作品です。暦がかつて気になっていた人や敵の女幹部と触れ合う回もとてもよかった……。

ミステリーとして楽しむこともできる作品です。敵幹部的なポジションである怪獣優生思想の4人も個性豊かで、こちらは主人公らと対照にカッチリ軍服風の制服で身を固めた非日常的な存在です。非日常的な存在ながらプールやボーリングなど日常を楽しんでいる可愛らしい一面もあります。本当に敵なのでしょうか。「かいじゅう」を操っているとされていますが、「かいじゅう」を生み出しているわけではありません。また、怪獣優生思想のシズム曰く「本物の怪獣使いは寝ない」らしいです。自称怪獣使いのガウマは寝ていそうですし、怪獣優生思想の中でも寝ている人いるんですよね、ムジナとか。果たして本物の怪獣使いは誰なのか。「かいじゅう」とは何なのか。未だラスボスが誰で物語の落とし所がどこなのか想像がつきません。OP映像でニヤリと笑う主人公側であるはずのちせがちょっとばかり怪しいんだよなぁ。

もうしばらくすると最終話に向けて振り返り放送があったりなかったりするのではと思います。ご興味とご都合あえば是非。

ムジナさんがめちゃくちゃ好きです。

余談
ニコニコ動画のタイムシフトで観ようとしたところ、期限が1週間ではなく3日だったので定例である木曜の夜に観ることができず、本作はGyaoで観ています。CMが長い……! 数秒でスキップできるアレじゃない……! ジークバーをガチャガチャしてるとすぐCMにはいる……! 無料で観せていただいている身の上で文句を言うのは筋違いでしかないのですが、細かいところを何度も振り返ろうとするとちょっと大変です。

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