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【交通事故】お喋りな人が黙ると通常の倍、静かになる

先日、交通事故に遭った。
四輪車同士の事故で、愛車は「ほぼ全損」で、筆者自身はケガを負った。
相手方が現場から立ち去ったため、ひき逃げ事件として捜査中である。

事故直後の愛車

事故当日だけでなく、翌日まで処理に追われて落ち着かず。
人生は日常の連続であるが、どこか非日常的な事務処理に気持ちと頭が追いつかなかった。

自分だけ白黒モノクロ

診断書をもらうこともそうだが、全身の痛みを和らげたい一心で医療機関を受診した。
受傷理由が交通事故の場合、不慣れな医療機関を受診してしまうと互いに嫌な気持ちになることは承知しており、事前に確認をとった医院を訪れた。

普段から利用する県道沿いにある医院だったが、この事故で初めて認識した。

扉を抜けると、左手に大きな靴箱がある。沢山の靴が並び、歯抜けのようなスリッパがこちらを見下ろす。
徐々に首が回らなくなる中、受付で「先ほど連絡した…」と声をかけたところ、マイナ保険証の提示を求められて戸惑う。

戸惑う筆者に相手方は怪訝な顔をするが、隣にいた別のスタッフが何か小声で伝達し、「あぁ、なるほど」といった調子で健康保険証の提示を求められた。

待合室のソファに腰掛け、問診票に記載する間、常連であろう患者達が身軽に受付を通過し、爽やかに診察室へと出入りする。中には、スタッフと楽しそうに雑談する患者もおり、自分だけ色がついていないような気がした。

待合室に腰掛けて1時間ほどで問診室に呼ばれる。
着座した際より明らかに重い全身からだを自覚し、気持ちまで強ばった。

問診、レントゲン撮影、診察と経て、最後にリハビリを受ける。
こちらも外来に含まれるのかもしれないが、明らかに空気が異なる空間に、一気に緊張が和らいのだろう。
担当者からの説明を受けながら、筆者は静かに泣いていた。

彩色の子ども達

ようやく家路についたのは、完全に陽が落ちた頃だった。

玄関を開けると、普段は激しく出迎えてくれる愛犬がかなり控えめに筆者を見上げた。いくらか親馬鹿フィルターはかかっているだろうが、彼女は賢い。
頭を撫でようと腕を伸ばすと、肩のあたりからギシギシと痛んだ。

いっぽう、愛鳥セキセイインコはいつも通りだった。
筆者が部屋の扉を開ける前からピーピーと鳴き、姿を認めた瞬間にケージの出入り口にへばりつき、「私を出して!」と強く主張する。

まだどこか浮ついていた気持ちが、いつもと異なる愛犬と、いつも通りの愛鳥と対峙し、スッと落ち着いた。

「撫でなさい」の合図

静寂は急に

事故後、痛みのピークと思える状態が訪れたのは2日目の夜だった。
経験者は口を揃えて「痛みは後から表出する」と言うが、筆者の場合はこのタイミングなのだろう。

だが、最盛期ピークは相対的な概念であり、ある程度過ぎ去るまで断定できない特徴がある。

この手の負傷は初めての筆者は疑心暗鬼に陥っていた。
現段階での痛みをピークと考えていては、この後、更に痛む場面で辛かろう。

祈るような気持ちで処方された消炎鎮痛剤を内服し、湿布薬を患部に貼り、最も痛みが伴わない姿勢を探っては強弱さまざまな痛みに翻弄されながら朝を迎えた。
結局、この夜は一睡もできなかった。

朝になり、愛鳥の朝食を支度しながら顔をゆがめる。
いつもケージを設置している場所だと、掃除や食事の支度に際し、患部に負荷がかかるのだ。

「こっちに移動しようね」と声を掛け、ケージをいつもの場所から移動した。

日中は業務をこなし、夕飯の支度をしている最中に気がついた。

愛鳥が、鳴かない。

というより、この日はずっと鳴いていなかった。

慌ててケージを覗くと、彼女は隅っこで壁側を見つめるばかり。
いつもなら筆者が移動するのに合わせ、ケージ内を右往左往しているのに、である。

普段との温度差にタチの悪い風邪でもひきそうだが、初めての事態に動揺していた。

「ふぅ、おいで」と声をかけ、ケージの入口を開けてみた。来ない。

それどころか、こちらさえ見てくれない。

あまりしつこく呼ぶのも悪かろうと、ケージ内の清掃と食事と水を交換するのみにとどめたが、その間も動かず、一言も声を発しない。

体調不良が心配だが、微動だにしないこと、声を発しないことの他はいつも通りに見えるため、そっとしておくことにした。

パソコンで作業をする間、その静けさに驚いた。
彼女から来てからずっと、断続的に呼ばれ続けてきたことに気づいたのだ。

少し静かにして欲しいと感じたこともあったはずだが、こうして沈黙を貫かれると淋しいものである。

夜明け

翌朝、未明から作業していた筆者だが、夜明けとほぼ同時に「ぴぃ…」と聞こえる。
寝言だろうかとケージを見やると、しっかりと筆者を見つめる愛鳥。

ケージに近づき、入口を開けると、彼女は自らケージを出て筆者の胸元に飛んできた。

「ぴぃ、ぴぃ」と鳴き、真っ白な羽を羽ばたかせ、洋服をよじ登ってくる姿はいつも通りのそれだった。
彼女の中で夜が明けたのかも知れない。

終わりに

交通事故に遭った直後から当日中にかけ、筆者は不幸のどん底にいるような気持ちだった。

日頃から様々な事案に触れ、知識は得ていたはずなのに、いざ当事者となった途端に酷いものである。周囲からの情報・意見に惑い、不慣れな手続に疲弊していた。

このような精神状態だったことから、いつも通りの周囲に対し、いつも通り接しているつもりでもどこか異なっていたのかもしれない。
特に、一つ屋根の下に住む愛犬や愛鳥には伝わりやすかったろう。

犬はもちろん、セキセイインコは賢いという。
別の生き物に人間の指標をあてがうのはおかしいが、少なくとも日常で必要な意志疎通は可能なレベルと認識していた。

これが突然叶わなくなったことで、少なからずショックだった。
対象は何であれ、気持ちの一方通行は辛いものだよなぁと思う。お互いに。

鳴かなくなった愛鳥に焦り、改めて色々調べたところ、ストレスによる沈黙が該当するものと考えられる。
急な環境の変化(ケージの移動)は、彼らセキセイインコにとって大きなストレスであることをこの時に学んだ。同じように小鳥の世話をする方は、ケージの移動に気を付けてあげると良いだろう。

交通事故については、下記動画にまとめてあるので気になる方はご覧ください。

今後の進展等、メンバーシップにてお伝えするほか、筆者のブログやYouTube上で共有できたらと思う。

皆さんはくれぐれもご安全に。

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