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笹かま(インスタントフィクション)

ネオンの光がチカチカチカチカ、
ゴミだめの町を照らし続けている。
目を輝かせた青年は、ベルトをキュッと締め付けて鼻から大きな息を吐く。
もう何度だって考えた。考え尽くしたと言ってもいい。
そして至った。
今日僕は、ここから始めることにしたのだ。
ここから一歩踏み出すと。
時計の針がチクタクチクタク。
時間が経つたび、脚でリズムを刻み、ただただ待ち続けた。
準備を済ませて扉を開く。
何処と無く聴いたことがあるような音楽が耳に流れてくる。
なんだかお腹が空いてしまったが、今はそれを忘れてしまおう。
今はそれどころではない。僕を感情が湿らせる。
湿らせた想いがルージュ色に染まり、影が大きく長く、細く、そしてかぶさる。
マグニチュード1.5。
都心部2平方メートルに揺れが観測されました。
津波の被害も観測しました。
急いで屋上に移動していただくか、避難してください。
海水がどんどん押し寄せてそしてのまれた。
ありがとう笹かま。

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