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日曜日
さて、展覧会も終わって作品も戻ったのだから、しばらく何をすることもなく、時折展覧会を見にいったりしながら時間が過ぎるままにしていた。
その間に、薄暗かった朝はすっかり光が広がり、もう仕事は終わりだと告げていた夕暮れは、ずっとずっと延びていった。五時には、夕餉の支度の匂いが漂う町では、まだまだ散歩に出かけ自転車も走り回っている様子。
私だけが取り残されたような気持ちになり、明るい朝の陽射しを拒むように頭から布団を被る。赤茶の猫が朝寝を誘うように潜り込んでくる。
グルグルブー、フグフグブーと気持ち良さげな音をしばらく聴いている。ひと月前までは、猫の方が気配を察して近寄ってこなかった朝。慌ただしく焦りの寝汗で冷えたシーツから飛び起きていた。
仕事というのは、これくらいのことはしなければならないのだろうと、言い聞かせて一年ほど経つと、今は本当に何をしたらいいものか、自由な時間は山ほどあれど、アトリエでの振る舞いが変に感じる。もともとあった生活のフレームがすっかり変わってしまったのか、あるいはまだ取り付けていないのか。
春が近づいてくると、あれもこれも新しいものに買い換えたくなる。たとえば新しい匂いのカバンにノートやペン。新学期が始まる前のような気持ちになるのか。断捨離ではなく、これからもう一度始めるために、何か手放さなければならない気がする。
ふわふわと猫の毛が床の上を舞っている。もう少ししたら、あの子も新しい衣に着替えるのだから。
©松井智惠 2023年2月26日筆
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