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へるんさんに会いに


 会期も終わりに近づいた雨の日、松江の小泉八雲記念館を訪ねた。自分が出品している展覧会「怪談」を、見るために。
https://www.hearn-museum-matsue.jp/exhibition.html

 小泉八雲記念館は、人が住む家くらいの大きさだった。企画展示も常設展示の一角にあり、最初は思ったよりも小規模な展示だと感じた。ここは美術館ではなく、ごく私的な空間だと思えば、小さいものを愛しんだ八雲の常設展示とよく調和した、落ち着きがある。和やかな雰囲気の中で、じっくりと質感を確かめながら一点一点を観た。

  現代美術のフレームを外してみると、絵の見え方が変わってくる。なんだろう、どの作品も文章が背後にある。挿絵というわけでもなく単独の作品としてそこにあるのは、40名の額装された紙に映るのは、小泉八雲へるんさんの透明な文章。

 殆ど知らなかった、数奇な人生を解説文と所持品や、初版本やノートなどから、時系列で小泉八雲の人生と、過ごした土地の数々を辿る。私は日本に来るまでのことはほとんど知らなかった。日本に来てからも、いくつかの場所に居をかまえ、職業も変えている。

 解説文が読みやすいせいか、珍しく全て読み進めて最後まで観終えることができた。二階には。へるんさんの書いた本や関係書の本棚があり、好きに読むことができる。

 記念館の隣にある小さな書斎の庵がある。膝をついて座ってみれば、コオロギやカエルが隠れていそうな素朴で愛らしい庭を眺めることができる。
記念館と庵に滞在している間、違う場所へと旅をするような心持ちになった。

 ニューオリンズの万国産業綿花博覧会1877年(明治10年)で、日本と出会ったへるんさん。その115年後に日本人の私はその地で、滞在制作をしていましたよ。

©️松井智惠               2023年9月22日


✳︎次は、焼津の小泉八雲記念館です。

参考まで
参考まで:「葬られたる秘密」青空文庫 戸川明三訳https://www.aozora.gr.jp/cards/000258/files/42926_15331.html


次の展示は、焼津の小泉八雲記念館です。
http://www.city.yaizu.lg.jp/yaizu-yakumo/

★私が担当した「葬られた秘密」についての講座が焼津であります。

http://www.city.yaizu.lg.jp/.../eibungakukouza2023.html

<以下焼津小泉八雲記念館のサイトより引用>
10月15日(日曜日)英文学講座 英語で読む小泉八雲Vol.4「A Dead Secret-葬られた秘密」

小泉八雲の晩年の傑作『怪談』に収録された「A Dead Secret(葬られた秘密)」を、英語の原文を交えて読み解く英文学講座です。

希望者には、講座で使用するプリントを事前にお渡しします。

10月14日(土曜日)から当館で開催される巡回展「アイルランド・日本 交流美術展 怪談—ラフカディオ・ハーンとの邂逅」の関連講座です。

本講座で扱う八雲の短編文学「葬られた秘密」は、八雲の幽霊観を知る上でとても重要な作品となっております。若くして亡くなった「良妻賢母」が、なぜ幽霊として現れたのか?八雲の幽霊への愛が感じられる名作を英文で味わいます。


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